フランスで家主が入居者のドアと窓を撤去。その驚くべき理由とは?
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 フランス北部で、家賃の支払いが滞った入居者に対し、真冬に家主がドアと窓を撤去するという極端な手段に出た。

 フランスでは冬季の強制退去が法律で禁じられているため、家主は法の抜け道を探した形だ。

入居者の女性は極寒の中で窓やドアのない家に取り残されてしまった。

 しかし、この行為はフランスでは違法行為にあたり、フランス国内で大きな議論を呼んでいる。

家賃滞納で窓とドアを撤去、極寒の家に残された入居者

 事件が起きたのは、2024年12月20日のこと。フランス北部のパ・ド・カレー県にある賃貸住宅だ。家主が家賃の未払いを理由に、入居者の家の窓とドアを無断で撤去したのだ。

 フランスでは冬季(11月1日から3月31日まで)の強制退去が法律で禁止されている。そのため家主は入居者に退去を命じることはできない。

 そこで、生活環境を極端に悪化させることで、入居者を自主的に立ち退かせようとしたのだ。

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当日、家主が手配した作業員が住宅を訪れ、入居者に「窓とドアを交換する」と説明すると取り外し作業を開始した。

しかし、作業員は撤去した窓やドアを車に積み込み、そのまま持ち去り、代わりの窓やドアがつくことはなかった。

 入居者の女性は一歳の子どもと住んでおり、寒さと安全面の不安から家の中に閉じこもるしかなくなった。

 女性はTF1[https://www.tf1info.fr/immobilier/video-temoignage-on-est-quand-meme-en-decembre-un-proprietaire-retire-portes-et-fenetres-a-une-famille-en-plein-hiver-2341623.html](フランスのニュースメディア)に対し、「家主に連絡したけど返事がこない」と訴えた。

 女性は仕方なく、ダンボールで窓やドアの隙間を塞いだが、寒さや外部からの侵入の恐怖に怯える日々を過ごしている。

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家主の言い分

 事件後、フランスの報道機関「France Info[https://www.francetvinfo.fr/societe/logement-en-conflit-avec-son-proprietaire-une-locataire-se-retrouve-sans-portes-ni-fenetres_6978182.html]」が家主に取材を試みたところ、家主は窓とドアの撤去を認めた上で、「家賃が5か月分未払いだった。さらに、契約時に入居者が保険を負担することで合意していたのに、未加入だった」と主張した。

 しかし、フランスの法律では、どのような理由があっても入居者の居住環境を意図的に悪化させることは違法とされている。

 フランス家主協会もこの件に関して、「家主の気持ちは理解できるが、今回の方法は明らかに法律違反だ」とコメント。入居者の女性は家主に対して「信頼を裏切られた」として告訴し、社会福祉団体を通じて新たな住居を探している。

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フランスの住宅問題と法規制

 フランスでは「冬季退去禁止法(Trêve Hivernale)」により、寒さの厳しい期間中の強制退去が禁じられている。

 この法律の背景には、寒さによる健康被害を防ぐ目的がある。しかし、家賃を支払わない入居者への対応が困難になり、家主側が経済的損失を被るケースも少なくない。このため、今回のように違法行為に及ぶ家主も出てきている。

 今回の事件は、フランスの住宅問題を浮き彫りにしたものだ。

 入居者の基本的人権は尊重されるべきだが、冬季の間は家賃を払わなくても良いと考える人が増えたら、家主にそのしわ寄せがいってしまう。

 双方の権利が守られるよう、適切な法的解決策を検討するべきだろう。

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