腰痛治療法の9割は効果がないとする最新研究。実際に効く治療法は?
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 腰痛は世界中で最も多い健康問題の一つであり、現在6億人以上が苦しんでいるとされる。「腰痛に効く」と言われる治療法は世の中にあふれていが、新たな研究によると、これらの治療法の90%は効果がほとんどないことが明らかになった。

 高額な施術や薬を試しても、実際には「プラセボ」と変わらないものが大半なのだという。

 一方で、ごくわずかだが効果が裏付けられた治療法もある。もちろん個人差もあるが、どの治療法なら本当に効くのか?腰痛に悩む人が知っておくべき最新の研究結果を見ていこう。

9割の腰痛治療法はほとんど効果がない

 オーストラリア、ニューサウスウェールズ大学をはじめとする研究チームが今回調べたのは、外科手術によるものを除く、56種の腰痛治療に関連する301件の試験結果だ。

 そのうち慢性腰痛に有効だったのは5つ、急性腰痛に関してはたった1つだけだったという。つまりは、世にある腰痛治療の9割が、効果の裏付けがないということだ。

 ただしそれらが必ずしも効かないという意味ではない。被験者数が少なかったり、結果がまちまちだったりといった理由で、本当に効くという科学的な証拠が得られないのだ。

 医者などからただのシロップをよく効く風邪薬と言われて処方されると、本当に効いてしまうことがある。

 これはプラセボ効果と呼ばれるもので、脳に関係しているのだが、9割の治療法についてはプラセボを上回るような効果が認められなかった。

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科学的に裏付けされた腰痛治療

 では腰痛で悩む人はどうすればいいのか? 幸いなことに数少ないながらも、効果が科学的に裏付けられている治療法もある。

 腰痛はあくまで「症状」を表す名称であり,「疾患名」を指すものではないが、発症からの期間によって急性腰痛と慢性腰痛に分けられる。

 慢性腰痛はじわじわ続く痛みや違和感が特徴で長期にわたって続く。

 急性腰痛は、重い物を持ち上げたり、腰をひねったりしたときに突然腰痛が生じるぎっくり腰のようなもので、通常は1週間ほどたてば痛みは和らぐ。

 腰椎椎間板ヘルニアは、急性型と慢性型がある。急性型の場合は、ぎっくり腰同様、重たい荷物を急に持ち上げたときや、くしゃみをしたときに起こり、突然激しい痛みが生じる。

 急性型の場合は徐々に痛みは和らぐが、繰り返しの動作や腰への継続的なストレスにより、慢性型に移行することがある。

慢性腰痛(12週以上続くもの)

1. 運動

 慢性の腰痛に一番効果が期待できるのは、ズバリ運動だ。筋力レ・ストレッチ・ヨガ・有酸素運動には、いずれも中程度の治療効果が確認されたという。

 ただし腰に負担をかけすぎては逆効果になってしまうので気をつけること。

 慢性の腰痛の場合、腰が痛いからといって、まったく運動しないと更に悪化する可能性があるそうだ。体を動かすこと自体が治療になるからだ。様子を見ながら少しずつ体を動かし、だんだんと負荷を高めるといい。

2. 脊椎マニピュレーション

 脊椎マニピュレーション[https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c02/14.html]は、施術者が手や器具を使って脊椎の関節に一定のスラスト(特定の角度による振幅で圧を加える)を加える手技のことだ。

 カイロプラクティック治療には脊椎マニピュレーションが含まれることが多いそうで、慢性腰痛に対する軽い緩和効果があるという。

3. キネシオロジーテープ

 筋肉や関節の動きをサポートするテープのこと。こちらも慢性腰痛に対する軽い緩和効果がある。

4. TRPV1作用薬

 これはTRPV1という受容体に働きかける薬のことで、代表的なものに唐辛子の辛味成分カプサイシンがある。これを配合したクリームを腰に塗ると痛覚受容体が鈍感になり、中程度の鎮痛効果が期待できる。

5. 抗うつ薬

 うつ病の薬が慢性腰痛に効くというのは不思議な気がするが、これは痛みが心や体と密接に関連していると考えられる。腰痛治療にはメンタル面のケアも大切かもしれないということだ。

急性腰痛(12週未満のもの)

1. 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)

 急性腰痛に唯一効果があると確認されたのは、イブプロフェンやナプロキセンといった非ステロイド性抗炎症薬だ。

 ただし、この薬には消化器障害・腎障害・心血管リスクなどの副作用もあるので、長期的な使用は控えねばならない。

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結局、腰痛にはどう対処すればいいのか?

 残念なことに、科学的に効果が期待できそうな治療法でも、せいぜい中程度しか効かず、あまり期待しすぎると落胆することになるかもしれない。

 今のところ、腰痛を魔法のように消してくれる治療法はないのだ。

 それでも腰痛への対策がまったくないわけではない。

 慢性の腰痛の場合、痛いからと寝てばかりではかえって逆効果になる。無理せず少しずつゆっくりと体を動かすと良いそうだ。

 そして高価なだけで「無意味な治療に惑わされない」こと。

過度な期待をせずに「痛みと現実的に向き合う」ことだという。

 今のところ、これが腰痛と付き合う最良の方法であるようだ。

 この研究は『BMJ Evidence‑Based Medicine[https://ebm.bmj.com/content/early/2025/03/02/bmjebm-2024-112974]』(2025年3月18日付)に掲載されている。

References: Ebm.bmj.com[https://ebm.bmj.com/content/early/2025/03/02/bmjebm-2024-112974] / Most Back Pain Treatments Don't Work—Here's What Actually Helps[https://www.zmescience.com/science/news-science/most-back-pain-treatments-dont-work/]

本記事は、海外の情報をもとに、日本の読者向けにわかりやすく再構成し、独自の視点で編集したものです。

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