赤タマネギの皮由来のバイオフィルムで、太陽電池の耐久性が大幅アップ!
太陽光パネルの紫外線による劣化を防ぐタマネギ由来のコーティング /Photo: Väinö Anttalainen

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 最近では私たちの暮らしに欠かせない「太陽電池」だが、実は紫外線による劣化という弱点があった。

 その課題に対し、フィンランドとオランダの研究チームが驚きの解決策を発見した。

鍵となるのは、なんと身近にある「赤タマネギの皮」だったのだ。

 赤タマネギの皮から抽出された色素をセルロース由来のバイオフィルムに塗ると、紫外線に弱い太陽電池を効果的に守れることが判明した。

 なんと既存の石油由来の保護フィルムより優れた性能を発揮することが確認されたという。

太陽電池も紫外線には弱い

 色々なところで見かけるソーラーパネルは、「太陽電池」という太陽光を電気に変換する装置をパネルに並べたものだ。

 じつはこの太陽電池、太陽の光が必要でありながら、紫外線に弱いというという弱点を持っている。

 これまでは、ポリフッ化ビニル(PVF)やポリエチレンテレフタレート(PET)などの石油由来の保護フィルムが使用されていたが、のフィルムには環境問題という新たな課題があった。

 フィルムを作る石油の採掘や製造プロセスは環境負荷が高く、寿命を終えた後の処分も環境に優しくないのだ。

 そこで環境に優しい素材への置き換えが世界中で検討されており、注目を集めていたのが植物由来の「ナノセルロース[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%83%8E%E3%82%BB%E3%83%AB%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B9]」だ。

 ナノセルロースとは、農業や林業の廃棄物などから得られる植物の細胞壁の主成分セルロースをナノレベルにまで細かくしたものだ。

 しかし、ナノセルロースだけでは十分な紫外線の防止効果が得られないことがわかっていた。

 そこで、フィンランドのトゥルク大学、アールト大学、オランダのワーゲニンゲン大学の研究チームは、ナノセルロースと組み合わせることで紫外線を効果的に防げる天然由来の素材を探し始めた。

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3つの候補を使った実験

 今回候補に挙がったのは、鉄イオン、植物由来の生体高分子「リグニン[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%82%B0%E3%83%8B%E3%83%B3]」のナノ粒子、そして赤タマネギの皮から抽出された色素「アントシアニン[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%88%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%B3]」の3つである。

 いずれも紫外線を防ぐ効果があることは先行研究で確認されていた。

 研究チームは、この3種類の素材をそれぞれ混ぜたナノセルロースフィルムを実験用の色素増感太陽電池に貼りつけ、紫外線ランプの下で1000時間にわたり照射実験を行った。

1000時間は中央ヨーロッパで1年分の日照量に相当する。

 色素増感太陽電池[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%89%B2%E7%B4%A0%E5%A2%97%E6%84%9F%E5%A4%AA%E9%99%BD%E9%9B%BB%E6%B1%A0]とは、植物の「光合成」の仕組みを真似して作られたもので、普通の太陽電池のようにシリコンを使わず、特殊な色素(染料)が光を吸収することで電気を生み出す仕組みになっている。

 シリコンを使った太陽電池よりも安く作ることができ、曇りや室内など光の弱い場所でも比較的よく発電するという特長がある。

 すると、最も優れた結果を示したのは、意外にも赤タマネギの皮から抽出したアントシアニン色素入りフィルムだった。

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赤タマネギの皮の色素に最もすぐれた効果を発見

 太陽電池の保護フィルムを開発するうえでポイントになるのは、電池を劣化させる紫外線はできるカットしたい一方、発電に必要な可視光や一部の赤外線(特に700~1200nm)は透過させねばならない点だ。

 赤タマネギ色素で処理したフィルムは、そのどちらも優れていたのだ。

 この玉ねぎ色素フィルムは波長400ナノメートル(nm)以下の紫外線を99.9%遮断する一方、太陽電池が電力を作り出すために必要な可視光線は80%以上透過し続けた。

 これは一般的に使用されている石油由来の紫外線防止フィルム(PETフィルム)の性能を上回る結果だった。

 一方でリグニンの場合、紫外線を吸収しても、茶色いことから発電に必要な光までカットしてしまった。

 また鉄イオン処理フィルムは、最初は優れた性能を発揮するが、劣化すると性能が低下してしまうことがわかった。

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環境センサーへの応用と今後の可能性 

 この赤タマネギ染料フィルムは、ペロブスカイト太陽電池や有機太陽電池などにも利用可能で、その応用範囲はきわめて広いとのこと。

 研究チームはその性能を利用して、食品の包装などに使用するセンサーの分解性電源を開発したいと考えているそうだ。

 この研究は『ACS Applied Optical Materials[https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsaom.4c00484]』(225年3月25日付)に掲載された。

References: Nanocellulose treated with red onion dye provides effective UV protection for solar cells | University of Turku[https://www.utu.fi/en/news/press-release/nanocellulose-treated-with-red-onion-dye-provides-effective-uv-protection-for]

本記事は、海外の情報をもとに、日本の読者向けにわかりやすく再構成し、独自の視点で編集したものです。

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