
極寒のカナダの農場で、足に凍傷を負い仲間からいじめられていた一羽のニワトリが、ロバに助けを求めたことで運命が大きく変わった。
心やさしいロバは、ニワトリを自分の小屋にかくまい、ニワトリを背に乗せ、仲間たちにいじめられないようにしたのだ。
ニワトリはどこに行くにもロバの背の上だ。ロバはニワトリが落ちないよう、ゆっくりと体を揺らさずに歩くことを覚えた。
それは人間が教えたわけでも、訓練したわけでもない、動物たちが自ら築いた奇跡のような絆だった。
いじめられていたニワトリが救いを求めたのはロバだった
オンタリオ州にあるサニー・エイカーズ(Sunny Acres)という小さな農場での出来事だ。
エルサという名のメスのニワトリは数年前の冬、足にひどい凍傷を負った。そのため、仲間の中では弱者と見なされ、他のニワトリたちから攻撃されるようになった。そんな中、エルサは行方不明となった。
農場主であり飼い主のジョアンさんは、あちこちを探し回ったがなかなか見つからない。そしてついに、ロバのペドロの背中の上にいるところを発見する。
ロバはニワトリを守ろうとする行動を起こす
ロバのペドロ(オス)は6歳のときに保護施設からこの農場に引き取られた。過去に何があったのかはわからないが、決して良いものではなかっただろう。
だが、彼は人間や他の動物たちに対し、やさしい気持ちを持ち続けていた。
ペドロは、ニワトリのエルサを背中に乗せ、自分のフワフワとした毛皮で寒さから守りつつ、他のニワトリたちからも距離を取らせるように移動していたのだ。
さらにペドロは背中にいるエルサが落ちないように、そっとゆっくり歩くことを覚えた。
そんなペドロを慕うエルサも、いつもペドロのいる小屋にきて寄り添っていた。
元気になった今でも両者の友情は変わらない
最初の冬をペドロの背中の上で過ごしたエルサは、その後も毎年冬になるとペドロに寄り添い、背中の上で過ごしている。
足はすっかりよくなり、群れの中での序列も上がったため、もういじめられることはない。夏の間は群れの中で普通に生活をする。
それでも、雪が積もり始めると、彼女は再びロバの背中に戻っていく。雪の上を歩くのがトラウマになっているのもあるかもしれないが、それ以上に、彼女にとってペドロの背中が一番安心できる「居場所」なのだろう。
もちろんペドロはいつでも大歓迎。喜んでエルサを迎え入れてくれる。
他のニワトリがロバの背に乗ろうとすると断固として阻止
最近では、他のニワトリたちもエルサを見て「自分もに乗りたい」と思うようになり、ペドロの背中に上ろうとすることがある。
しかしエルサはそれを絶対に許さない。自分の場所、自分の絆を守るため、くちばしで追い払うのだ。
ジョアンさんはその姿を見てとても感慨深いという。
それもすべて、ペドロと友情を築くことができたことが自信となったのだろう。
人間社会でもいじめや孤立は大きな問題となっているが、それは動物社会でも同様だ。そして動物たちの中には、種が違っても、弱いものに寄り添い、守ろうとする存在がいる。そして一度築かれた絆は切れることはない。
このことは我々にとっても大きな励みとなる。ひとりぼっちだと感じたら、声を上げてみよう、行動を起こしてみよう。それはすごく勇気のいることだけど、味方になってくれる人は必ずどこかにいるはずだ。
もしかしたらそれは人間じゃなく、動物かもしれない。それもいいじゃないか。