火星の古代湖で卵のような謎の球体がびっしり集まった岩が発見される
火星で発見された奇妙な岩。無数の小さな球体で構成されている /NASA/JPL-Caltech/LANL/CNES/IRAP

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 かつて液体の水があった古代湖の跡地とされる火星の「ジェゼロ・クレーター」で、無数の小さな卵のような球体が集まった奇妙な岩石が発見された。

 これはNASAの火星探査機「パーシビアランス」が、ジェゼロ・クレーターの縁の斜面で発見したものだ。

 泡のようにも見える球体(球状粒子)が集まったその岩には、「セント・ポールズ・ベイ」と名付けられた。

 この無数の球体はいつ、どのように形成されたのか? その理由に天文学者たちは頭を悩ませているが、その謎が解明できれば、ジェゼロ・クレーターの歴史を知ることにもつながるという。

生命の痕跡も期待されるクレーターで球体の集まりからなる岩石を発見

 パーシビアランスがひとり黙々と探査を続ける「ジェゼロ・クレーター」は、かつて湖だった可能性が高いとされる興味深い場所だ。

 そこには長きにわたって液体の水があったと考えられており、それゆえに地球外生命の痕跡も見つかるのではと期待されている。

 その縁の斜面にある「ウィッチ・ヘーゼル・ヒル」は、軌道上から明るい地域と暗い地域が確認された何やら謎めいた領域である。

 問題の奇妙な岩石は、その斜面の下方にある「ブルームポイント」と呼ばれる地点で発見された。

「セント・ポールズ・ベイ」と命名されたこの岩は、ミリサイズの小さな球状粒子(スフェルール)で構成されている。

 球状の粒の形状は完全に一様ではなく、楕円形のものや、小さな穴が空いており、中には砕けたと思われる角ばったものもあったという。

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火星では過去にも球状粒子が発見されていた

NASAによると、こうした球状粒子が火星で発見されたことは、過去にもあるという。

 たとえば、2019年惜しまれつつも永遠の眠りについた探査機「オポチュニティ」は、2004年に「マーズ・ブルーベリー(火星のブルーベリー)」と呼ばれる球状体を発見している。

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 その後「キュリオシティ」もゲール・クレーターで球状粒子を目撃している。

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 さらに、パーシビアランス自体もほんの数か月前、川の痕跡とされる「ネレトヴァ渓谷」でポップコーンのような質感をした岩石に遭遇した。

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どのようにして形成されたのか?

 NASAによれば、こうしたユニークな球体のほとんどは、「コンクリーション[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3]」と呼ばれるものであるという。

 コンクリーションは、岩石の隙間を水が流れたとき、そこに溶けていた物質が沈殿・再結晶してできる球状の塊だ。

 ただし球状の岩石は、これ以外のプロセスで形成されることもある。

 例えば、火山から噴出した溶岩の滴が急激に冷えて固まってできることもあるし、隕石の衝突で蒸発した岩石が凝縮してできることもある。

 同じような球体でも、形成プロセスによって意味合いがまるで違ってくるため、その起源を正確に突き止めることが大切なのだという。

 ちなみにセント・ポールズ・ベイの球状粒子は、発見された場所で形成されたわけではないと考えられている。

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 その質感などから判断すると、軌道上から確認された暗い領域に関係している可能性が高いようだ。

 その起源を特定することは、ジェゼロ・クレーターの縁やその周辺の地質学的な歴史を紐解く上で重要なことであるそうだ。

References: Science.nasa.gov[https://science.nasa.gov/blog/shocking-spherules/]

本記事は、海外の記事を参考に、日本の読者向けに重要な情報を翻訳・再構成しています。

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