ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で地球外生命を探すなら「ハイセアン惑星」が有力だ
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 地球外生命の痕跡を探す上で、注目されているのが「ハイセアン惑星」という新しいタイプの惑星だ。

 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で生命の痕跡を探すなら、海と水素の大気に包まれるとされる、ハイセアン惑星が最も有効なターゲットであると研究者らは主張している。

 カリフォルニア大学リバーサイド校の宇宙生物学者によれば、探すべきは「酸素」や「メタン」といった典型的な生命の存在を示す証拠と考えられる物質ではなく、もっと珍しい気体であるという。

 というのも、ハイセアン惑星に存在する微生物は、酸素などよりずっと検出しやすい気体を放出していると考えられるからだ。

はるか彼方の惑星に存在する生命を探す方法

 宇宙的な視点で見ると、私たち人類の手が届く範囲は今のところごくごく限られている。せいぜい望遠鏡を使って、遠方からやってくる光を観察することくらいしかできない。

 では太陽系の外に存在するかもしれない生命をどうやって探せばいいのだろう? それを伝えてくれるのが「バイオシグネチャー」と呼ばれるもの、すなわち生命の痕跡だ。

 たとえば「酸素」や「メタン」などは、生物に由来することが多い。植物は光合成で酸素を作るし、微生物もメタンを作る。

 だから太陽系外惑星の光の中に、それらの存在を示す特徴があれば、絶対ではないがそこに生物学的な活動があるだろうと期待できる。

 だが問題は、現実にそれができるかという点だ。

 つい最近も太陽系外惑星の姿を直接撮影することに成功したジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡だが、そのような最先端の望遠鏡であっても、遠く離れた惑星のバイオシグネチャーを検出するにはまだ力不足かもしれないのだ。

 とりわけ私たちが暮らす地球のような惑星ではダメだ。あまりにも小さく、かつ暗すぎるのだ。

 カリフォルニア大学リバーサイド校の宇宙生物学者エディ・シュヴィーターマン氏は、「地球型惑星では、大気のノイズや望遠鏡の性能の限界のためにバイオシグネチャーの検出が困難です」と、ニュースリリース[https://news.ucr.edu/articles/2025/03/13/signs-alien-life-may-be-hiding-these-gases]で説明する。

 とりわけ、地球型惑星の酸素は、現在の技術ではきわめて検出が難しいという。

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水素の大気を持つハイセアン惑星が有力ターゲット

 そこで研究チームが提唱するのが、「ハイセアン惑星」の「ハロゲン化メチル」という気体を探すというアプローチだ。

 ハイセアン惑星とは、水素が豊富な大気と海を特徴とする仮説上の惑星のことだ。

 地球型惑星に比べると質量は10倍、半径は2.6倍とかなり大きく、ハビタブルゾーンも広いとされるこのタイプの惑星は、生命も存在できる可能性があると考えられている。

 確かに大気は主に水素で構成されているため、人間が生きられる環境ではない。だが、微生物ならばうまく適応できるものがいるかもしれない。

 そして、そうした中には「ハロゲン化メチル」を生成するものがいるかもしれない。

 ハロゲン化メチルとは、炭素1つと水素1つからなるメチル基が、塩素や臭素などのハロゲン原子と結合した化合物で、地球では主にバクテリア・海洋性藻類・菌類・一部の植物によって作られる。

 地球の場合、大気に含まれるハロゲン化メチルは少ない。ところがハイセアン惑星は大気の組成が地球とはまったく異なっており、かつ恒星の種類も違う(赤色矮星で一般的な惑星とされる)ため、ハロゲン化メチルが蓄積しやすいと考えられるのだ。

 また研究チームによれば、ハロゲン化メチルは、酸素やメタンなどのバイオシグネチャーに比べて、検出しやすいかもしれないという。赤外線の特定の波長を強く吸収するため、その存在を示すサインがはっきり出るだろうからだ。

 研究チームのミカエラ・ルン氏は、「ハロゲン化メチルの大きく有利な点は、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡なら、最短13時間で検出できること」と述べる

 これは酸素やメタンなどに比べてずっと短く、そのためにコストも抑えられるという。

 こうしたことから、地球外生命の捜索ターゲットとして、現時点ではハイセアン惑星のハロゲン化メチルがもっとも有効だろうと研究チームは主張する。

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生命の常識がくつがえる日は来るのか?

 仮にそこに微生物がいたとすれば、それは嫌気性で、地球とはまるで違う想像を超えた環境に適応していると考えられるという。

 そしてそれが検出されるのはたった1つの惑星とは限らない。

 もしもバイオシグネチャーが複数のハイセアン惑星で検出されたとしたら、そうした微生物が宇宙には広く存在している可能性すらあるということになる。

 「それは生命の広がりと起源に関する私たちの理解を根本からくつがえしてしまうでしょう」と、ルン氏は語っている。

 この研究は『Astrophysical Journal Letters[https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/adb558]』(2025年3月11日付)に掲載された。

References: Iopscience.iop.org[https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/adb558] / News.ucr.edu[https://news.ucr.edu/articles/2025/03/13/signs-alien-life-may-be-hiding-these-gases]

本記事は、海外の記事を参考に、日本の読者向けに重要な情報を翻訳・再構成しています。

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