うれしいニュース!ネパールでコツメカワウソが185年ぶりに再発見
image credit: <a href="https://iucnosgbull.org/Volume42/Shrestha_et_al_2025.html" data-type="link" data-id="https://iucnosgbull.org/Volume42/Shrestha_et_al_2025.html" target="_blank">IUCN/SSC Otter Specialist Group Bulletin / @Rajeev Chaudary</a>

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 長年にわたって目撃情報がなく、すでに絶滅したと思われていたネパールのコツメカワウソが、地元の住民によって捕獲され、その生存が確認された。

 ネパールでコツメカワウソが最後に目撃されたのは1839年で、今から何と186年も前のこと。

 絶滅したかと思われていた希少種の発見に、現地の研究者たちは喜びの声を上げている。

185年ぶりに確認されたネパールのコツメカワウソ

 このコツメカワウソは2024年11月、ネパール最西部のスドゥルパスチム州ダデルドゥラを流れるラングン川とプンタラ川の合流地点で見つかった。

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 ダデルドゥラの森林管理局のラジブ・チャウダリー氏は、その時の状況を次のように語っている。

情報を受け取った後、私たちはカワウソを保護し、数日間世話をした後、自然の生息地に戻しました。また、写真を撮って専門家に送り、種の特定を依頼しました

 チャウダリー氏はこのカワウソの写真を、国際自然保護連合(IUCN)ネパール支部のカワウソ専門家グループ[https://iucnosgbull.org/]と共有。同グループのメンバーが、このカワウソがコツメカワウソであることを確認した。

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 コツメカワウソと特定した同グループのメンバーは、報告書[https://iucnosgbull.org/Volume42/Shrestha_et_al_2025.html]の中で以下のように述べている。

185年ぶりにコツメカワウソが目撃されたことは、ネパールの自然保護活動にとって注目すべき発見であり、同国でこの種が絶滅したのではないかという懸念に終止符を打ちました。

この目撃情報は、ネパールにおけるこの種の現状の詳細な調査と、保護活動を緊急に実施する必要性を浮き彫りにしています

 ネパールにはビロードカワウソ(Lutrogale perspicillata)、ユーラシアカワウソ(Lutra lutra)、そしてコツメカワウソ(Aonyx cinerea)の3種のカワウソが生息しているとされていた。

 だがコツメカワウソに関しては、あまりにも長い間生息が確認されなかったため、ネパールのカワウソのリストから削除すべきだとの声も上がっていたという。

ネパールにおけるカワウソ保護の課題

 ネパール東部と国境を接するインドのダージリン地域では、2022年にコツメカワウソの目撃情報が寄せられていた。

 そこでIUCNのカワウソ専門家グループは、コツメカワウソが生息しているとしたら、ネパール東部ではないかと推測していたらしい。

 今回、真反対の西部で生息が確認されたことで、ネパールのほかの地域で今もコツメカワウソが生息しているのではないかと期待されている。

ネパール西部でのコツメカワウソの発見をきっかけに、同じような報告が相次ぐことを期待しています

 同グループのモハン・ビクラム・シュレスタ氏は、期待を込めてこう語る。だが同時に今回の発見は、ネパール国内におけるカワウソの保護をさらに難しくするかもしれないという。

コツメカワウソがネパールに生息しているという具体的な証拠が得られた今、それを我々の方針やプログラムに組み込む必要があるのです。最初のステップは、この種を水生動物保護法のリストに加えることです

 ビロードカワウソとユーラシアカワウソは、既にこの法律で守られている。コツメカワウソを保護するためには、まず法律が適用されるようにしなければならない。

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 さらにネパールの河川は、ダム建設や人口増加による開発により深刻な劣化が進んでおり、野生の生き物たちが安心して暮らせる環境ではなくなってきている。

生息地の破壊が最大の課題です。カワウソを捕獲したり殺したりするような人間の行為も、カワウソの個体数を減らす一因になっています

 ヒマラヤを流れ落ちる雪解け水は、今や未処理の下水や産業廃棄物、農薬で汚染されているだけでなく、毒物や爆薬を使った漁も行われており、持続不可能な状態に陥っている。

 下は首都カトマンズを流れる「聖河」バグマティ川。ガンジス川の支流だが、その汚染は近年深刻なものとなっている。

 日本のODAなど各国の支援で、河川の汚染防止や水質改善などの取り組みが行われているが、とても追いつかない状況だ。

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 報告書は最後にこう締めくくられている。

カワウソは、人為的に大きく改変された景観に対しても回復力があり、生息地の選択にも柔軟で、少ない個体数から回復することも可能です。

しかし、ネパールではコツメカワウソが稀にしか見られないことを考えると、この地域でこの種のための適切な保全策が緊急に必要です。

全国規模でのカワウソの調査、この種の生態・系統の科学的研究、優先地域での保全策が求められています。

ネパールは大型動物の保全において模範的な努力を示しており、その結果、サイやトラなどの種の個体数を大幅に増加させてきました。

この極めて希少な水生の中肉食動物(食事の30~70%が肉食で構成される動物)のために、ネパールでは今、時宜を得た保護活動が緊急に必要とされているのです

References: Presumed Extinct: World’s Smallest Otter Found in Busy Nepal River After 186 Years without a Sighting[https://www.goodnewsnetwork.org/presumed-extinct-worlds-smallest-otter-found-in-busy-nepal-river-after-186-years-without-a-sighting/] / Confirmation of the Presence of Asian Small-Clawed Otter Aonyx cinereus in Nepal after 185 Years.[https://iucnosgbull.org/Volume42/Shrestha_et_al_2025.html]

本記事は、海外の記事を参考にし、日本の読者向けに独自の考察を加えて再構成しています。

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