
2024年12月のある日、アメリカ・テネシー州のある田舎町で、ある男性の運命を大きく変える出来事があった。
彼の名はニック。
彼は日ごろから「俺は猫派じゃない」と豪語していた。だがその言葉は、「白くてふわふわの毛玉」によって打ち砕かれることになったのだ。
すべては「白い毛玉」との出会いから始まった
この日、ニックさんは自宅の敷地を散歩していた。大自然に囲まれた彼の家では、さまざまな動物たちがのんびり暮らしている。
そんな中、彼の視界の隅に、何か白いものがちょこんと座っているのが見えた。あれは何だ?と近づいてみると、そこにいたのは生後間もない真っ白な子猫だったのだ。
子猫は怯え、周囲の音に身をすくめていた。ニックさんは思わず動画を撮影し、TikTokにアップロードすると、視聴者にこう語りかけた。
このままじゃこいつ、キツネに食われちまうかも。でも、どうしたらいいんだ? 俺、猫の育て方なんて知らないぞ?
幸いなことに、インターネットの世界は猫好きと猫知識豊富な人であふれかえっている。
次の瞬間、彼のもとには容赦ないアドバイスの雨が降り注ぐことになったのだ。
猫派じゃなかった男性が、猫の沼にはまる
ニックさんは確かに「猫好き」ではなかった。でも「困っている動物を見捨てられない男」でもあった。そこで当分の間、自ら子猫の父親となる覚悟を決めた。
もちろん最初は一時的に保護するだけのつもりだった。しかし、その想定は1週間で崩れ去った。
猫に関する知識が皆無だった彼は、最初子猫に牛乳を飲ませてしまい、コメント欄で叱られた。そしてすぐに、猫用のミルクと哺乳瓶を買いに走ることに。
ミルクをあげるために夜中に何度も起き、日中は子猫を服のポケットに入れて鶏小屋の手入れをし、ネットで「猫との遊び方」を学ぶ日々。
かいがいしく子猫の世話をするうちに、とうとう彼はTikTokでこう宣言することになった。
この子猫は、たぶんこのままうちの子になる思うよ
彼は子猫に「マッスルズ(筋肉)」という名前を付けた。最初はオスだと思ったからだ。だが実は女の子であることが後に判明し、正式名称は「ミス・マッスルズ・ダンプリング」に改められた。
この敗北宣言(?)に、彼のフォロワーたちは歓喜の声を上げた。
- おめでとう、ニック。君は「選ばれた」んだよ
- フレームポイントのシャム猫かな
- 「猫が好きじゃない」っていうのは、知らないうちに猫に激しく恋してしまう新米がいつも最初に言う言葉だよ
- CDS(Cat Distribution System:猫流通システム)は決して失望させないよ
- 魔法の「ゴロゴロ」は天国から贈られた音なの。子猫をこれからも守ってあげてね
- これがCDSの仕組みであり、ルールであり、決して逃れられないものなんだ
- うちの2匹目も、こうして我が家にやってきた。これこそが猫界の法なんだよね
- 猫が好きではないと言う人は、まだ自分の猫を見つけていないだけ
- 宇宙が君を猫好きだと判断したんだ。受け入れなさい
- CDSに選ばれし者に祝福を!
「NNN」の世界版?「CDS」が仕事した結果
コメント欄にたびたび出てくる「猫流通システム」こと「CDS」とは、猫を人間たちに配分するための世界的組織である。
どこかで聞いたことがあるような? そう、日本でいうところの、「NNN(ねこねこネットワーク)」の世界版なのである。
どちらも世界中の猫たちが暗躍する謎の秘密組織であり、猫の下僕となるにふさわしい人間をスカウトし、猫を彼らのもとに配分するのが目的だ。
猫に無関心だったり、「猫はちょっと…」とか言っている人間のもとに、最高に愛らしい猫を「派遣」して彼らを改宗させるのも、重要なミッションの一つである。
彼らは宇宙レベルで、猫が「最適な人間」のもとに届くように操作しているらしい。人間が猫を選ぶのではなく、猫が人間を選び、必要なときに必要な場所で、ターゲットの前に現れるのである。
猫嫌いが改心して猫好きになるまでの典型的なフローチャートはこんな感じ。
1.猫嫌いを自称していた
2.「偶然」助けを必要としている猫と出会ってしまう
3.物理的・心理的に追い出せない状況に陥る
4.心がとろけて手放せなくなる
5.溺愛モードに突入し沼にはまる
6.生活が一変する
今回のニックさんのケースも、典型的な猫堕ち案件そのものである。CDSが見事に仕事した結果としか思えない、というわけだ。
なぜヒゲメンは猫にモテるのか?
さて、ここでもうひとつ触れておきたいのが、「ヒゲメン」と猫との関係だ。どうやらヒゲメンがNNNやCDSといった組織に狙われる率はかなり高いように見える。
日本でも「ヒゲメン+猫」という組み合わせを好物としている人は多いらしい。ワイルドな見た目の男性が、ちっちゃな猫を溺愛しているというギャップがたまらないのかもしれない。
マッスルズも最初からニックさんのヒゲで遊んでいた。
自分と同じ毛むくじゃらの顔に親近感を持つのでは?とか、母猫に触れているような安心感を抱くのでは?といった可能性が思い浮かぶが、もちろん、科学的根拠があってのものではない。
しかしSNSを見渡せば、ヒゲメンと猫の尊い瞬間が山のようにアップされて人気となっている。この現状は組織の側からしても、プロパガンダとして非常に有効なのだろう。
つまり経験則として考えた場合、「ヒゲメン=猫に好かれやすい」は立証されているとも言えるのではないだろうか。
マッスルズがニックさんのもとへやってきてから3か月が過ぎ、彼女はすっかり大きくなって、まるで最初からこの家にいたような顔をして暮らしている。
実はニックさんの奥さんは軽い猫アレルギーを持っているそうなのだが、それでもマッスルズを飼うことに決めたのは、子供たちがすっかり気に入ってしまったからという理由も大きかったらしい。
ニックさんはマッスルズのTikTokアカウント[https://www.tiktok.com/@musclesandnick]を新たに開設し、「猫のいる生活」を満喫している様子を投稿し続けている。
まだまだ新米猫パパの彼は、視聴者からの的確なアドバイスに感謝するとともに、今後もよろしくお願いしたいとのことだ。