
2025年2月、アメリカのペンシルベニア州にあるフィラデルフィア動物園[https://www.philadelphiazoo.org/]で、推定年齢97歳のガラパゴスゾウガメが、その生涯で初めて「ママ」になった。これは初産としては同種の中で最年長だという。
母ガメは「マミー」という名のニシサンタクルスゾウガメで、16個産んだ卵のうち、無事に孵ったのは4個だそうだ。
子ガメたちはすくすくと元気に育っており、絶滅の危機に瀕しているガラパゴスゾウガメにとって、うれしいニュースとなった。
妻は97歳の初産婦、夫の年齢も96歳!
今回めでたく母親になったマミーは、ガラパゴスゾウガメの亜種で、ガラパゴス諸島内にあるサンタクルス島の固有種だという。
記録によると、マミーは1932年から90年以上にわたって同動物園で飼育されており、推定年齢はおそらく97歳と見られている。
さらに子ガメたちの父親は、やはり推定96歳という高齢のアブラッツォという名のオスで、かなりの高齢夫婦だったようだ。
アブラッツォはガラパゴスゾウガメの繁殖プログラムにより、2020年にサウスカロライナ州のリバーバンクス動物園から移されて、マミーとのペアリングが行われていた。
フィラデルフィア動物園は、プレスリリースで次のように説明している。
マミーは動物園水族館協会(AZA)による「種の保存計画(SSP)」において、遺伝的に最も貴重なガラパゴスゾウガメの一頭と考えられています。さらに同種の中では、知られている中で世界最高齢の初産婦です。
彼らの年齢と、マミーが野生動物として遺伝的に貴重な事実を考えると、これは非常に大きな成功であり、偉業であると言えるでしょう
16個の卵のうち4個が孵化
これまでにもマミーは何度か産卵した経験はあったが、孵化に至ることはなかった。今回無事に孵化したのは、マミーが2024年11月に産卵した16個の卵のうちの4個である。
2025年2月27日に最初の卵が孵化した後、次々と3つの卵が孵り、最終的に4匹の子ガメが無事に誕生した。
フィラデルフィア動物園の理事長兼CEOジョエル・モーガーマン博士は、このおめでたいニュースに関し、次のように語っている。
マミーは1932年にフィラデルフィア動物園にやってきました。
つまり、過去92年間にこの動物園を訪れた人なら誰でも、マミーを見たことがあるはずです。
フィラデルフィア動物園のビジョンは、今回孵化した赤ちゃんたちが、100年後に健全な地球上で繁栄するガラパゴスゾウガメの群れの一部となることです
赤ちゃんたちは全員メスで健康状態は良好
ガラパゴスゾウガメの性別は、孵化温度によって決まるという。今回生まれた赤ちゃんたちは、その境界となる27.4度以上の環境で孵化したため、4匹ともメスと見られている。
子ガメたちは食欲も旺盛で、すくすくと元気に育っているそうだ。
野生でも100歳以上の長寿を誇るリクガメ
ガラパゴスゾウガメの寿命は長く、野性でも平均100年以上生きることは確実だ。飼育下での記録がある中での最高齢は、ハリエットという名前の175歳のメスとされている。
鶴は千年、亀は万年と言われるが、さすがにそこまで長生きするカメはいない。現存している中でのリクガメの最高齢は、ジョナサンという名のセーシェルセマルゾウガメで、推定年齢が192歳というから驚きだ。
それに比べたらマミーもアブラッツォも、まだまだ現役の繁殖適齢期といえるかもしれない。
ガラパゴスゾウガメは、野生では年に1~4回に分けて、合計3~26個ほどの卵を産むという。もしかすると2頭の間には、今後もあらたなベビーの誕生が見られる可能性もある。
なお、卵が孵化するまでの時間は4~8か月と幅があるため、残った卵が今後孵化する可能性もゼロではない。そのため動物園側では、しばらくの間は残りの卵の観察を続けることにしているという。
今回生まれた子ガメたちは、少なくとも今後5年間は、生まれた場所であるフィラデルフィア動物園で飼育される予定だという。なお、同動物園では4月23日から、この赤ちゃんたちを一般に公開する予定だそうだ。
現在、4匹の赤ちゃんたちの「里親」募集[https://give.phillyzoo.org/give/525911/#!/donation/checkout]も行われており、日本円で7,300円もしくは11,000円の寄付で、赤ちゃんの里親として飼育支援ができる。里親には動物園発行の証明書やぬいぐるみなどが贈られるそうだ。
また、同園で週3回行われている「ビハインドザシーン・ツアー(動物園の裏側を体験できるツアー)」に参加すると、両親であるマミーとアブラッツォに触れたり餌を与えたりといった体験ができる。
入園料とは別途料金が必要だが、ガラパゴスゾウガメに直接触れるという貴重な体験ができるので、機会があったら訪れてみるのもいいかもしれない。