優れた嗅覚で結核菌を嗅ぎ分け数十万人の命を救ったヒーローネズミ「アフリカオニネズミ」
人間のために活躍するアフリカオニネズミ image credit:APOPO, handout

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 近年アフリカオニネズミというネズミが人間のために様々な分野で貢献してくれてることをご存じだろうか?

 このヒーローネズミたちは、今も世界に猛威を振るう結核菌をきっちり嗅ぎ分け、東アフリカでは数十万人の命を救った。

 実は彼らは、猟犬に負けないくらいの鋭い嗅覚に、訓練ですぐに覚える従順さと賢さを兼ねそろえ、集中力もばつぐん。

 その活躍は医療分野に留まらず、地雷検知や野生動物の密輸防止にまで一役買ってくれている。

優れた嗅覚で結核の診断するネズミたち

 アフリカ東部のタンザニアでは「ネズミのドクター」が人間の医師とともに毎日活躍している。

 アフリカに生息するアフリカオニネズミ[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%95%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%82%AA%E3%83%8B%E3%83%8D%E3%82%BA%E3%83%9F](African Giant Pouched Rat)は、世界規模の感染症であり今なお死因トップの結核(TB)を、人間よりも高い成功率で診断できるからだ。

 たとえば、人間が行う顕微鏡検査の成功率が20%から40%であるのに対し、彼らにかかれば40%以上にもなる。

 唾液サンプルを分析する速さもあっという間で、科学者らが4日間かける量を、わずか20分で終えてしまう。

 以下はタンザニアを拠点とするAPOPOの研究所で、陽性サンプルを発見する結核検知アフリカオニネズミのザハラ氏のお仕事ぶりだ。

 彼女は不活性化された唾液サンプル100個をわずか20分で判定する優れた嗅覚を持つ。

 ケースの床にあるたくさんのサンプルから、結核菌を検出したら、そのサンプルを知らせるためにその場で下に3秒鼻をつけて立ち止まるのが合図で、検出のたびにおいしい食事をいただけるそう。

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7年間で3000回もの結核菌を発見したネズミも

 この仕事で伝説と化しているのが、2024年11月に引退したキャロリーナ氏だ。彼女は7年間で3000回もの結核菌を検知、というすさまじい功績を残している。

 目覚ましい活躍をした彼女と同僚のネズミは、みんなに愛されながら勤務し、引退時に人間のスタッフたちにより、盛大な送別会とネズミ用の特別なキャロットケーキでお祝いされるほどだった。

 実のところ、鋭い嗅覚で知られる犬種のブラッドハウンド[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%89]にも劣らない嗅覚を持つアフリカオニネズミたちにより、これまでに驚くほど多くの結核症例が予防されたと推定されている。

 その数なんと40万件にものぼり、おかげで現実に命拾いした人が大勢いる。

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アフリカオニネズミたちは様々な場所で人間のために活躍

 これらのアフリカオニネズミたちは、非営利団体APOPOによって訓練され、結核菌の検知、地雷検知、さらには密輸品や違法な野生動物の探索にも貢献している。

 訓練費用は約7000~8000ドル(約100万~120万円)と、電子機器よりもコストが安価であるのも利点だ。

 なおトレーニングの第1段階は人間との交流やさまざまな環境に慣れること。それは生後4~5週齢ごろ目を開けたときから始まるそう。

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 その後ネズミたちは、特定の香りを識別し、他の匂いを無視する訓練を受けるが、その匂いを記憶する能力も犬と同程度に優れており、訓練への従順さや賢さは一部の犬種以上ともいわれている。

 そのため現地の科学者らも「彼らは驚異的な集中力を持ち、仕事に真剣に取り組む」と高く評価しており、任される仕事も多岐にわたることに。

オニネズミたち能力を見た人たちは一瞬で彼らを好きになりますよ。彼らが伝染病を防ぐ力を持つことを知ると、彼らへの感謝の気持ちも計り知れないものになります
(APOPO結核部門の責任者テフェラ・アギゼウ医師)

地雷と不発弾を嗅ぎ分ける仕事も

 そんなAPOPOの訓練を受けたマガワは、カンボジアの地雷除去において伝説的な活躍を遂げたアフリカオニネズミだ。

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 彼は現役時代、71個もの地雷と38個の不発弾を発見し、22万5000㎡を超える広い範囲の恐怖を取り除いてくれた。

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 その功績により、2020年には英国の動物福祉団体PDSAから金メダルを授与され、ネズミ界初の受賞者となった。

 その後引退し、2022年1月に惜しまれつつこの世を去ったマガワだが、一線を退いて生涯を終えるまでの彼の毎日は、バナナやピーナッツという好物を楽しむ穏やかな日々で彩られていたそうだ。

 そして現在カンボジアでは後継のロニンがギネス記録を達成。

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 彼は2021年以降、カンボジア北部で地雷109個、不発弾15個を発見し「ネズミによる地雷の探知数を最多記録」を達成。2025年2月20日にギネス世界記録に認定された。

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 前任の「マガワ」同様、彼の功績は地域の人々に感謝されており、地雷除去の未来への希望となっている。

野生動物の密輸取り締まりも

 さらにAPOPOのアフリカオニネズミは野生動物の密輸取り締まりにも活躍の場を広げつつある。

 2024年秋にタンザニア最大都市ダルエスサラームの港で行われたテストでは、訓練のかいあって密輸された動物の特定にみごと成功。

 訓練がしやすいアフリカオニネズミは、X線やCTに比べて大幅にコスパが良く、犬と違ってトレーナー(ハンドラー)が変わっても影響がない柔軟性が魅力だという。

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ネズミへの偏見を変えるヒーロー

 その訓練成果の論文の共同著者、デューク大学のケイト・ウェブ教授は、「ネズミには不潔な動物という否定的なイメージがあるが、実際は規律正しく、とても清潔で知的な生き物で、仕事に取り組む際は集中力の高さがうかがえる」と述べ、従来のネズミに対する人間の意識を変える存在であることを示唆。

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 APOPOの行動神経科学者シンディ・ファスト氏もアフリカオニネズミの可能性をこう語る。

私たちのアフリカオニネズミは人間の仲間であり、本当のヒーローです。彼らは多くの命を救うだけでなく、私たちのネズミに対する偏見を変え、感謝と尊敬の念を広めています

 地域を超えて人々の命を守る重要な役割を果たしてくれてるアフリカオニネズミは、今やネズミの可能性を広げ、新たな視点をもたらす存在としても世界的に脚光を浴びてるようだね。

References: Goodnewsnetwork[https://www.goodnewsnetwork.org/in-east-africa-rats-have-prevented-400000-new-cases-of-deadliest-infection-using-their-super-sense-of-smell/] / Apopo.org[https://apopo.org/]

本記事は、海外で公開された情報の中から重要なポイントを抽出し、日本の読者向けに編集したものです。

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