雷に打たれると強くなる木が存在する!熱帯雨林で発見された巨大樹の驚きの進化
雷属性の木、トンカマメの一種「Dipteryx oleifera」 redit: Evan Gora / Cary Institute of Ecosystem Studies

雷に打たれると強くなる木が存在する!熱帯雨林で発見された巨大...の画像はこちら >>

 北米と南米をつなぐパナマの熱帯雨林で、雷属性の樹木が発見された。

 その樹木は、マメ科に分類されるトンカマメの仲間で、「Dipteryx oleifera(ディプテリクス・オレイフェラ)」という。

 雷属性というのは誇張じゃない。雷に打たれると普通の木は枯れてしまう。ところがそのトンカマメは落雷しても死なないどころか、その電撃で周囲のライバルや絡みつくツタを撃退し、さらなる成長の足がかりとするのだ。

雷が直撃しても枯れない不思議な樹木との出会い

 2015年、アメリカ、ケアリー生態系研究所のエヴァン・ゴラ氏らは、パナマの熱帯雨林でショッキングな光景に出くわした。

 それは雷が直撃したのに、ほとんど傷を受けないトンカマメの仲間、Dipteryx oleifera(ディプテリクス・オレイフェラ)である。(以降D.オレイフェラと表記)

 雷の威力が凄まじいものだったことは、その樹木に絡んでいたツタが吹き飛ばされ、周囲に生えていた木々が死んでしまったことから、一目瞭然だった。

 にもかかわらず、落雷があったD.オレイフェラ自体には、ほとんど被害がなかったのだ。

 この出来事をきっかけに、ゴア氏らはD.オレイフェラの雷耐性の研究に着手。

 じつのところ学者の間では、樹木の中には進化によって稲妻に耐えられる力を身につけた種があるのではという話が以前からあったという。

 最新の研究では、それがただの噂話でないことが初めて裏付けられている。

[画像を見る]

Dipteryx oleifera(ディプテリクス・オレイフェラ)とは?

 ディプテリクス・オレイフェラは、中央アメリカから南アメリカ北部にかけての熱帯雨林に自生する巨大な広葉樹で、成長すると高さ55mに達することがある。

 広く丸い樹冠と非常に硬い木質が特徴で、幹は木材として、アーモンド風味の種子は食用となり、地元の市場で「トンカの豆」として販売されている。また野生動物の重要な食料源となっている。

 長寿命で1000年以上生きる個体も多い。

花は小さくて淡いピンク色で、枝先に房状に咲き、昆虫によって受粉される。

[画像を見る]

雷耐性を持ち、ライバルや寄生性のツタを駆逐する樹木

 ゴア氏らの最新の研究は、パナマ中部のバロ・コロラド自然記念保護区において、落雷があった樹木93本(うちD.オレイフェラは9本)を2~6年にわたり観察し、生存率をはじめとする状況を追跡したものだ。

 そこから判明したのは、やはり雷は樹木にとって致命的なダメージを与えるということだ。落雷があった樹木のほとんどは、大きく傷つき、6割以上が2年以内に死んでしまっていた。

 ところが、9本のD.オレイフェラは軽い傷を受けただけで、枯れてしまったものは1本たりともなかったのだ。

 それどころか、それによって周囲のライバルまで一掃されたようだった。

 D.オレイフェラに落雷があると、ツタや枝を伝って隣接する樹木にも電流が流れる。

 そのせいで周囲にある樹木の平均9.2本が死んでしまうのだ。さらにD.オレイフェラに絡みつく寄生性のツタまでが78%も駆除される。

 こうしてライバルがいなくなったことで、D.オレイフェラはより多くの光と栄養を手に入れられるようになる。

[画像を見る]

あえて雷を引き寄せるように進化した可能性

 恐るべきことに、D.オレイフェラはあえて雷が落ちやすいような構造に進化した可能性がある。

 非常に背が高く、樹冠も異常なほどに広い。そうした特徴は避雷針のように機能し、一般的な樹木に比べて、最大68%も雷が落ちやすいと推定されている。

 こうした特徴は長期的にも効いてくる。ゴラ氏らが過去40年間の樹木の生存傾向を調べたところ、D.オレイフェラのそばに生えている樹木は、そうでない樹木より48%も枯れやすいことが示されているのだ。

 その一方で、D.オレイフェラはすぐそばにある樹木よりも4mほど高い傾向があることが確認されている。

 こうしたことは、この樹木があえて落雷を引き寄せ、それによってライバルを蹴散らすことで、光と空間をめぐる競争で優位に立っていることを示しているという。

[動画を見る]

 ちなみにD.オレイフェラに雷が落ちる頻度は平均56年に1度であるという。

 この木の寿命は1000年を超えるものもあるので、一生のうちに何度も雷に打たれるということになる。

 文字通り雷と共に生きるこの木は、その雷耐性のおかげで、子孫を残す力を14倍にも高めていると試算されている。

 ゴア氏らは今後、D.オレイフェラがどうやって強烈な雷の一撃から身を守っているのか解明を試みる予定であるとのこと。

 またD.オレイフェラのほかにも、雷を利用して生きる樹木がないのかも探すつもりであるそうだ。

 今後気候変動が進めば雷が増加すると予測されているが、ディプテリクス・オレイフェラのような樹木には有利な時代になるのかもしれない。

 それが森の姿をどう変えていくのか? これもまた気になるところだ。

 この研究は『New Phytologist[https://nph.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/nph.70062]』(2025年3月26日付)に掲載された。

References: Nph.onlinelibrary.wiley.com[https://nph.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/nph.70062] / Scitechdaily[https://scitechdaily.com/getting-struck-by-lightning-actually-helps-this-tree-thrive/] / Caryinstitute[https://www.caryinstitute.org/news-insights/press-release/getting-hit-lightning-good-some-tropical-trees]

本記事は、海外の記事を参考に、日本の読者向けに重要な情報を翻訳・再構成しています。

編集部おすすめ