
足腰が弱くても、腰が悪くて山道を歩けなくても、頂上からの絶景をぜひ眺めてみたい。そう思う人はきっと少なくないと思う。
中国では最近、自分の足で登らなくても山頂に行けてしまうエレベーターやエスカレーターを、山の断崖絶壁に設置するケースが増えているそうだ。
こういったスタイルの「登山」を、現地では「無痛登山」というらしい。
そこに山があるから”登る”ではなく、そこに山があるから”乗る”の時代が到来しちゃってるのか。
新たな「無痛登山」用のエスカレーターが建設中
今回、エスカレーターが建設されているのは、中国江西省にある「霊山風景名勝区」という、断崖絶壁の名所である。
2022年に始動したこのプロジェクトは、2025年5月の営業開始へ向けて、現在現場では工事がラストスパートを迎えている。
標高約1,500mの頂上まで、数十基のエスカレーターがつながっており、おそらくはこれまでに中国の山に接地されたエスカレーターの中でも、最大規模かつ最も複雑な構造だと言われているそうだ。
これまで、この霊山に登るためには、数千段もの階段を上る必要があったという。だがこのエスカレーターが完成すれば、これまで2時間以上かかっていた登山が、数分にまで短縮されるという。
中国ではエスカレーターやエレベーターでの「登山」が大人気
中国では今までにも多くの山岳景勝地で、エスカレーターやエレベーターが設置されて来た。
例えば下は浙江省の、天嶼山に設置されたエスカレーター。この山の標高は350mほどだが、エスカレーターができる前は、曲がりくねった登山道を延々3kmも歩かなくてはならなかった。
それが今ではわずか10分ほどで、頂上まで到達してしまうことに。暑い時期には両側からミストが噴出して、訪れた観光客に涼を与えてくれるんだそうだ。
そしてこちらは湖南省の張家界国家森林公園にある「百龍天梯」という名の断崖絶壁エレベーターだ。
エレベーターの壁は全面ガラス張りとなっていて、頂上に着くまでの間、周囲の絶景を心行くまで楽しむことができる。
ネット上では賛成派と反対派の間に議論が沸き起こる
だがこうした「無痛登山」には、当然ながら賛否両論の意見が寄せられており、「楽でいい」派と「こんなのは登山じゃない」派の間の溝は大きいようだ。
- 身体的な制限により、頂上まで登れない人々にとって、これは素晴らしいアイデアだと思う
- これなら高齢者や障害のある人でも、息を呑むような景色を楽しめるよね
- 障害のある人たちや子供たち、お年寄りがこれを使って楽しんでいる様子が目に浮かぶよ。本来の道が真ん中に残っていて、自然を破壊しないよう最小限に抑えているなら、何が問題なのかな
- このエスカレーターは、山頂の景色を楽しみたいけれど登れない人たちのための選択肢なんだ。この山は大きくて、ハイキングコースだってたくさんあるよ
- 自然の美しさを損なっているとは思わないの? みんなが楽しめるようにってことなら、道路を建設した方がいい
- 道路なら自然の美が損なわれないとでも? 汚染物質を排出する乗り物を使うだけでも、自然は破壊されるよ
- それだと、橋を架けたら川の美しさを損なうことになるから、昔のように船で渡るべきってことになるよね
- でも登山の魅力が少し薄れてしまう気もするな
- 誰でも登れるんなら、私も行ってみたい。車窓から景色を眺めるみたいに、エスカレーターからの景色を堪能したい
- でも、故障したらどうするの? みんな歩くか、救助を待つかするしかないでしょ
- そもそも登山する体力のない人は、山に登るべきじゃない。これは自然に対する冒とくだ
- 僕は山登りが好きだから、この山も自分の足で登ったよ。危険なコースだったけど、景色は息を呑むほど美しかった。このエスカレーターが遠くに見えたよ。今は使おうとは思わないけど、自分が年を取って登山ができなくなったら、すべての山にエスカレーターがあれば最高だと思うかもしれないね
- ハイキングの目的は運動することだと思ってた。他のアクティビティでも、身体を動かせない人のために配慮しないといけないの?
- 歩きたい人は真ん中の階段を上がればいいんだよ
- 台風が来たらどうするんだろう
- この地域に台風は来ないし、地元の気象条件は考慮されているはずだから心配はいらないよ
- こういうのは中国ならどこでも見られるし、目新しいモノじゃない。耐用年数は20年以上で、防風・防雨・耐腐食性もばっちりだ
- 2時間のハイキングが疲れるって言うなら、趣味はオンラインゲームだけにしておいた方がいい
- そのうちにエベレストにもエスカレーターが設置されるようになるんじゃないか
日本ならケーブルカーやロープウェイがせいぜいで、大自然の中にエスカレーターやエレベーターを設置してしまおうという発想にはならない気がする。
選択肢が増えるのは良いことなのかもしれないが、これだけ大がかりな野外エスカレーターとなると、メインテナンスも大変そうだ。
一応、雨風にも耐えられる仕様ではあるらしい。あるらしいが、それでも屋内の物より破損したり劣化したりといったリスクは多いのでは?と心配になる。
老若男女、誰でもが気軽に頂上まで行けてしまう無痛登山は、確かに便利ではあるけれど、達成感には欠けるかもしれないな。さて、みんなはどう思う?
References: Mountain Resort Installs Dozens of Escalators for “Painless Hiking Experience”[https://www.odditycentral.com/travel/mountain-resort-installs-dozens-of-escalators-for-painless-hiking-experience.html]
本記事は、海外で公開された情報の中から重要なポイントを抽出し、日本の読者向けに編集したものです。