海でひらひらと舞うリボンのような不思議な生物に遭遇、その正体は?
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 オーストラリアのマリーナで、海面をゆらゆらと泳ぐ、平べったくて細長い、不思議な生き物が撮影された。その時撮影者は、自分が撮影した映像が歴史に残ることになるとは夢にも思わなかった。

 映像はそのまま忘れられ、2年半の月日が流れた。撮影者がふと思い出して、その生き物の映像を海洋生物学者調べたところ、なんとその海域ではこれまでに3回しか目撃されていない貴重な生物であることが判明した。

海面を泳ぐ白いリボンのような生き物

 2022年7月22日のこと。オーストラリアのクイーンズランド州最北端のポートダグラス・マリーナで、アカシア・オットさんは何となく海を見つめていた。

 するとそこに不思議な生き物が現れて、ひらひらと海面近くを漂い始めた。彼女は「見たことのない珍しい生き物がいる」と思い、スマホのカメラを向けた。

それは白っぽい、ひらひらとしたリボンのように細長い生き物で、アカシアさんは珍しいとは思ったものの、それがどれほど貴重な映像なのか、この時はまだ理解していなかった。

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私は最初、不気味な見た目の虫か何かかと思ったんです。この光景がどれほどユニークなものだったのか、当時はわかりませんでした

その正体は「モヨウタケウツボ」と判明

 だが最近になって、この映像のことを思い出したアカシアさんは、海洋生物学者のテレサ・グラハムさんに動画を見せる機会を得た。

 さらに複数の専門家の意見を聞いた結果、この生き物は「モヨウタケウツボ」と呼ばれる珍しいウツボで、オーストラリアでの目撃例は極めて少ない、珍しい種であることが判明した。

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専門家に見せたことで、このウツボはこの海域でまったくの未知の存在ではないものの、実際に目撃されることは非常にまれであることがわかりました。

主にインドネシアやフィジーなどで見られる種ですが、その細長い身体や隠れるのが得意な特性から、滅多に目撃されないのです

 最終的にこの映像は、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)、グレートバリアリーフ海洋公園局園局、オーストラリア博物館の3つの機関によって、別々に「モヨウタケウツボ」であることが確認されたという。

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第一印象であの寄生虫を連想する人も

 アカシアさんがこの動画をSNSに投稿すると、映像はネットのさまざまな媒体で拡散されることとなった。

 するとこの動画がきっかけとなって、他の場所での目撃情報もちらほらと報告されることとなったという。

 また動画を見た視聴者からは、さまざまなコメントが寄せられている。

  • なんか……巨大なサナダムシみたい
    • そうですね。でも3人の異なる専門家に確認したところ、間違いなくモヨウタケウツボでした。このウツボは海中を滑らかに流れるような動きで泳ぎますが、サナダムシは平べったくて体節があります。この2つは全く異なるように見えます(アカシアさんコメ)
  • 確かにサナダムシにも見えるけど、頭の形で違うとわかるよ
  • トイレットペーパーみたい
  • 珍しい着物を見せてくれてありがとう。泳ぎ方が本当に優雅ですね。何て素晴らしい光景でしょう
  • 子供の頃、お風呂にタオルを浮かべて、海の生き物に見立てて遊んでいたのを思い出した
  • 泳いでいる時に絡まったりしないんだろうか
  • パプアニューギニアの沿岸ではよく見かけるよ
  • 遠くから見るとサナダムシみたいでちょっと気持ち悪いけど、間近で見るとウツボだってわかるし、実際はとても美しいね
    • 100%同意します!(アカシアさんコメ)
  • ホワイトリボン(英語の名前)の通り、オリンピックの新体操の水中バージョンみたい
  • 生きている靴紐かと思った
  • 正体を知るまでは怖いと思ったけど、本当にユニークで美しい生き物だね

 モヨウタケウツボとは、ウナギ目ウツボ科モヨウタケウツボ属のウツボの仲間で、沖縄以南の温かいインド・太平洋海域に生息する生き物だ。ごく浅い珊瑚礁を棲み処とし、全長は1m近くに達することもあるという。

 非常に憶病な性格で、ダイビング中に遭遇すると、あっという間に岩の隙間などに隠れてしまうため、なかなかはっきりした目撃情報が出てこないのだそうだ。

 下はダイバーと追いかけっこをするモヨウタケウツボ。最後には岩の隙間に潜って隠れてしまった。

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 英語では「ホワイトリボン・イール(白いリボンのウナギ)」と呼ばれており、文字通り白くて細長いリボンのような身体をしている。頭の部分に少しだけ黒い斑点があるのが特徴だそうだ。

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不思議生物を見つけたら迷わずシェアしよう

 実はアカシアさんの仕事は「マスターリーフガイド」であり、「珊瑚礁の大使」として、グレートバリアリーフの魅力を世界中に発信する役割を担っている。

 現在グレートバリアリーフには、合計で146人の訓練されたマスターリーフガイドがいて、訪れる人々にこの海域を案内し、最新の情報を伝えているのだそうだ。

 そんな「珊瑚礁のプロ」であるアカシアさんでも、このモヨウタケウツボのことは知らなかったわけで、どれだけレアな存在なのかわかるだろう。

 今回の出来事を受けて、アカシアさんは次のように語っている。

次に野生で何か特別なものを見かけたら、(たとえ何年経ってからでも)ぜひネットに投稿して、共有するようにしてください。あなたの目撃情報は、重要な発見や希少種の保護に繋がるかもしれないのです。

今回は海洋学者のテレサのおかげで、このウツボの魅力的なストーリーが、珊瑚礁に棲む命の大きな物語の一部となりました

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