
高血圧の予防といえば「減塩」だ。実際に1日あたり1gの減塩で血圧が1mmHg下がると言われている。
カナダのウォータールー大学による研究で、バナナなどカリウムを多く含む食品を摂ることで、血圧を効果的に下げられる可能性があると明らかになったのだ。
この研究では、男女によって効果に差が出ることや、塩分を減らすだけでは得られない調整効果が示された。食事にバナナを取り入れることで、より自然で持続可能な血圧対策ができるかもしれない。
バナナが高血圧に効く?注目の研究結果
カナダ・オンタリオ州にあるウォータールー大学の研究チームは、高血圧の改善にカリウムが多く含まれる「バナナ」が有効であることを明らかにした。
研究を主導したメリッサ・スタット博士は「人類の体はもともと果物や野菜を多く摂る食生活に進化してきたため、カリウムが豊富で塩分が少ない食事のほうが体に合っている」と語っている。
この研究では、特にカリウムとナトリウム(塩分)のバランスに注目した。
従来からカリウムの摂取は血圧を下げるとされてきたが、ウォータールー大学の研究者たちは、その効果をより正確に予測するための数学モデルを開発した。
これにより、カリウムが血圧にどのような影響を与えるのかを、性別や生理的特性もふまえて詳細に分析することができた。
なぜバナナで血圧が下がるのか?
カリウムは、私たちの体に必要不可欠な「電解質(でんかいしつ)」のひとつで、水分量の調整、筋肉の動き、心臓の拍動などをコントロールする重要な役割を持っている。
特に、体内のナトリウムと反対の働きをするため、カリウムをしっかり摂ることで、ナトリウムによって上昇しやすい血圧を自然に下げることができる。
カリウムを多く含む食品[https://www.kikkoman.co.jp/homecook/tsushin/tips0069/]はいろいろある。例えば100gあたり、サトイモの水煮で560mg、ホウレンソウで490mg、アボカドで590mg、納豆で660mg含まれている。
だが、100gとなると納豆で2パック分、ホウレンソウだと半束分食べなければならない。
その点バナナは手軽に食べられるし、1本で100~150gでカリウムは360mg~540mgだ。さらに、塩分が少ないため、高血圧の予防や改善には最適だといえる。
研究では、「カリウムを増やすことで、単に塩分を減らすだけよりも大きな効果をもたらす可能性がある」と結論づけられている。
つまり、減塩に加え、カリウムを意識的に摂取することが、より効果的な血圧対策になるというわけだ。
ただし性別によって効果に差がある
研究チームはさらに、男女の違いによって、カリウムの効果に差があることも突き止めた。
男性の方がカリウムによる血圧改善効果が大きい傾向にあり、特に中高年の男性にはカリウム摂取のメリットが大きいことがわかった。
一方で、閉経前の女性はもともと高血圧になりにくいため、塩分を控えることも大きなポイントになるという
日ごろから食生活に気をつけている人なら、塩分を控えることで体に良いことが多いと知っているだろう。血圧の管理もそのひとつだ。
高血圧は、今や世界の成人の30%以上に影響を及ぼしている深刻な健康問題である。放っておけば、冠動脈疾患や脳卒中を引き起こすリスクが高まり、さらに慢性腎臓病や心不全、不整脈、認知症などの他の病気にもつながるおそれがある。
バナナが苦手な人はカリウムを多く含んだ食品で代用可能だ。
この研究は、生理学系の専門誌『Renal Physiology[https://journals.physiology.org/doi/full/10.1152/ajprenal.00222.2024]』(2025年3月3日付)に掲載された。
References: Uwaterloo[https://uwaterloo.ca/news/media/high-blood-pressure-eat-more-bananas]
本記事は、海外の記事を参考にし、日本の読者向けに独自の考察を加えて再構成しています。