
世の中にはいろいろな嗜好(フェチ)をもつ人が存在する。他人に害の及ばない嗜好なら良いのでは?と思うかもしれないが、自分自身を害することもある。
中国南西部にある重慶市で、自分の履いていた靴下のニオイを嗅ぐのが日課だった男性が、重度の肺感染症に侵されてしまったのだ。
咳が止まらなくて入院した男性、その原因とは
2025年4月1日、重慶の陸軍医科大学西南病院は、靴下のニオイのせいで肺の感染症を患っていた男性の治療に成功したと発表した。
この男性は李さん(仮名)という会社員で、しばらく前から咳が止まらなくなって困っていたという。
李さんは自分で市販の咳止めシロップを飲んでいたが、症状が改善しなかったため、西南病院を受診した。
呼吸器内科で李さんの主治医となった梁培強医師はこう説明する。
李さんを受け入れた後、CTやMRIなどの検査を重ねた結果、右下肺にプラーク(肺を包む胸膜にできる病変)の影と空洞が見つかりました。
気管支鏡検査の結果、李さんはアスペルギルス感染による真菌性肺疾患を患っていたことが判明したのです
梁医師が李さんに何か思い当たる節はないかと尋ねたところ、彼は靴下を脱いだ後、そのニオイを嗅ぐ癖があると告白したそうだ。
原因はどこにでもいる真菌(カビ)だったが…
アスペルギルス属の真菌(カビ)によって引き起こされるアスペルギルス感染症は、この真菌の胞子を吸入することで、体内で増殖し発症する病気である。
この菌は空気中の浮遊粉塵はもちろん、エアコンやヒーターの吹き出し口、堆肥や土壌の中、植物の表面など、自然界のあらゆる場所に広く存在しているという。
つまりほとんどの人が、毎日この真菌の胞子を吸い込んでいることになる。だが、通常なら免疫機能の働きで、感染症を引き起こすまでには至らない。
だが何らかの原因で免疫力が低下している場合、今回の李さんのように、発症に至ってしまう場合もある。
症状としては咳や発熱、呼吸困難といった喘息に似たものに始まって、重症化すると喀血や胸痛をともない、最悪の場合は呼吸不全を起こして命にかかわるケースもあるそうだ。
靴下はカビ菌の絶好の繁殖地
履き古した靴下には汗や塩分、尿素、黄色ブドウ球菌などが含まれており、アスペルギルスをはじめとした菌類にとっては絶好の繁殖場所となってしまう。
同病院呼吸器内科副科長の羅湖医師は、なぜ靴下のニオイを嗅ぐことが感染症に繋がるのかについて、次のように説明している。
靴を長時間履いていると、密閉された湿気と塩分を含んだ環境が、カビの繁殖に最適な環境を作り出してしまいます。
菌のついた靴下のニオイを嗅いだり吸収したりすると、菌が口や鼻から下気道に入り込む可能性があります
今回、李さんは、真菌の温床となった靴下のニオイを嗅ぎ続けたことで、菌が口や鼻から体内に入って増殖し、感染症の発症に至ったとみられている。
中国では2018年にも、自分の靴下のニオイを嗅ぎ過ぎて病気になってしまった福建省の男性の事例があった。
男性だけではない。2023年には、水虫を患っていた女性[https://shvoice.com/news/82508.html]が自分の靴下の匂いを嗅いで、肺炎を起こした事件も報告されている。
幸いなことに、李さんの治療は成功し、現在は完全に回復しているそうだ。とはいえ、基本的な生活習慣を改めていかなければ、再び同じ病気にかかってしまう可能性はゼロではない。
服や靴下、枕カバーやシーツなどはきちんとこまめに交換して、身の回りを清潔に保つことが、周囲の人たちだけでなく、自分の健康にとっても非常に重要なことなのだ。
また、プールや公衆浴場、マッサージ店なども、免疫力が落ちている時には危険地帯だ。体調が悪いと感じたら、こういった場所には近寄らないのが吉である。
References: Cqnews[https://www.cqnews.net/1/detail/1356648555427147776/web/content_1356648555427147776.html] / Vice.com[https://www.vice.com/en/article/man-hospitalized-after-sniffing-dirty-socks-made-fungus-grow-in-his-lungs/]
本記事は、海外で公開された情報の中から重要なポイントを抽出し、日本の読者向けに編集したものです。