
2025年4月初め、アメリカのメリーランド州の動物保護団体、「モンゴメリー郡動物愛護協会(MCAS)[https://www.montgomerycountymd.gov/animalservices/]」のスタッフは、公園をさ迷っていた犬の保護に向かった。
だが、その犬を見たスタッフたちは、ショックを隠せなかった。
温かい家庭に6年前に引き取られて行ったはずの犬がなぜ、10歳になった今、ボロボロの状態でひとり公園をさまよっていたのか?
迷い犬は実は捨て犬、しかも譲渡した保護犬だった
最初に公園に到着した時、MCASのスタッフは、今回のミッションはハッピーエンドになるに違いないと期待していた。
寄せられた情報では、犬の首には首輪があり、タグもつけられているとの話だった。ならばおそらく迷い犬で、飼い主も心配して探しているだろう。
マイクロチップをチェックして飼い主に連絡を取って引き渡せば、きっとそれでミッションコンプリートになるはずだ。
だが実際に犬を見た時、スタッフたちは戸惑いを隠せなかった。なぜならその犬は、6年前にMCASが保護し、新しい飼い主に引き渡した犬だったからだ。
飼い主に連絡するも引き取りたくないとの答え
犬の名前は「リグズビー」で、発見時につけていた首輪のタグにも、確かに「リグズビー」と書いてある。
愛情深い飼い主のもとで、幸せに暮らしているとばかり思っていたのに、これは一体どういうことなのだ?
MCASでボランティアをしているマデリーンさんはこう語る。
飼い主に電話したところ、リグズビーに戻ってきてほしくないとのことでした。彼は本当に素敵な子で、2019年に保護されたシェルターに、なぜ戻ってくることになったのか、戸惑っているに違いありません。
この6年の間に、リグズビーは10歳を迎えていた。
どんな事情があったのか?
このニュースが流れると、世界中の愛犬家たちがリグズビーのために寄付するとともに、たくさんのメッセージが寄せられた。
- 「電話したら要らないって言われた」ですって? ナイフで心臓をえぐられたみたいな気持ちよ。どうしてそんなことが言えるの?
- どなたかがこの子を救ってくださることを祈って寄付します
- 一時預かりが必要なら、数週間彼の面倒を見られます!
- 怒りがこみあげてくる。
状況が理解できないけど寄付します。彼を助けてくれたMCASに感謝します- こんな話を聞くと、本当に人間が嫌いになるわ
- 6年もいっしょにいて、タグまで作ったのに捨てるなんて…
- その元飼い主は譲渡禁止リストに入れてくれ。もう犬を飼う資格はないよ
- 一番助けを必要としている時に捨てるなんて、なんて残酷なの
- 彼がもっと愛情深くて、大切に世話をしてくれる飼い主と出会えるよう祈っています
- 僕は簡単に人を憎んだりしない人間だと思っていたけど、時々本気で誰かを憎んでしまいそうになる
- なぜこの犬の飼い主は訴えられないんだ? カナダなら最低でも5年の懲役が科せられると思う
- 高齢や病気の動物を捨ててもいいと思っている飼い主の名前は公表すべき!
リグズビーの首輪のタグには、「#SWEETHRT」や「#ICHASECATS」といった、愛情のこもったメッセージも書かれていた。
一度はきっと飼い主に愛されて、幸せな日々を送っていたのだろうに、いったいなぜこんなことに…。
老犬の面倒は見たくないということなのだろうか?だがその正確な事情は明かされることはなかった。
古巣に戻り、新たな引き取り先を探すことに
とにかく、こうしてリグズビーは、6年ぶりにMCASに帰ることになった。そして別のシニア犬と友だちになり、笑顔を取り戻し、同じケージで仲良く過ごしている。
しかし、何もかもが6年前と同じというわけにはいかなかった。背中やお尻の筋肉は衰えを見せ、脇腹には小さな脂肪腫が発見された。
老齢に差しかかったリグズビーには、ホスピスケアを提供できる里親が必要だとの獣医師のアドバイスもあり、MCASでは彼が穏やかに余生を過ごせる家庭との養子縁組を模索することに。
だが、子犬ならともかく、ホスピスを必要とするような老犬を引き取ってくれる里親を探すのは難しい。MCASとしても、理想的な引き取り手が見つかるまでには、かなりの時間がかかるだろうと覚悟していたのだ。
そして奇跡が起きる!
だが、ここで奇跡が起こる。
テキサス州で犬や猫と里親とのマッチングを主に行っている、「The Forgotten Pet Advocates (FPA)[https://www.forgottenpetadvocates.com/] 」という団体に、リンダという女性から1本のリクエストが入った。
彼女はベントレーという名前の老犬を飼っており、その友人になれる10歳以上の黒のラブラドールを探しているというのだ。
リンダさんは長年FPAでボランティアをしており、まさにリグズビーのような境遇の犬を探していた。
フィード上にリグズビーの写真が流れて来たとき、まさに運命を感じました
FPAのスタッフは、ネットに公開されていたリグズビーの情報を見て、リンダさんとMCASの橋渡しをすることに。
リンダさんはリグズビーの写真を見ると、一目で彼に恋に落ちた。そしてすぐに、ベントレーを連れて、リグズビーに会いにMCASを訪れた。
そこから先は早かった。いくつかの書類に署名した後、リンダさんはベントレーと一緒にリグズビーを車に乗せて、3人家族としてマイホームまでの幸せなドライブを楽しむことに。
現在、リグズビーはリンダさんのもとで、相棒のベントレーと共に幸せな毎日を過ごしているそうだ。
FPSのFacebookには、次のように書かれている。
リンダさんはFPSの長年の友人であり、ボランティアでもあります。
リグズビーは甘やかされ、何よりもたくさん愛されて過ごすことでしょう。彼の願いは全て叶うでしょう。これ以上ステキな場所はありません。
彼はすっかりリンダさんの家の馴染んでおり、ベントレーも彼がいるとすごく喜んでいます!
2人は並んで眠り、リグズビーはただ兄弟とリンダさんのそばにいたがっています。彼にとって、これ以上の幸せはありません
シェルターから引き取った犬を捨てた元の飼い主には、どんな言葉をかけても響かないかもしれない。
リグズビーが幸運だったのは、元いたシェルターのスタッフに保護してもらえたこと。そして、最高のタイミングで素晴らしい飼い主と出会えたこと。
ようやく運命の星が、リグスビーに味方してくれたのです。彼はこれから先、もう二度と、不安に怯えることはないでしょう