
野生の猫はあまり鳴かないが、飼い猫は人間に対し鳴き声を発することがよくある。これは何かを訴えている証拠だが、ごはんが欲しいのか、遊んでほしいのか?どこか痛いところがあるのか?それがわからないのがもどかしい。
これまで、猫や犬などのペットの鳴き声を「翻訳」しようという試みは、多くの企業が挑んできた。そんな中、中国のテック企業「バイドゥ(Baidu)」が開発を進めているのが、動物の鳴き声をAIで人間の言葉に翻訳するという本格的なシステムだ。
同社は2025年、中国国家知識産権局にこのシステムの技術に関する特許を申請。鳴き声の背後にある感情や意味をAIで解析し、人間の言葉として理解可能にすることを目指しているという。
飼い猫が人間に向かって鳴く理由
野生の猫は成猫同士であまり鳴かない。体の動きや匂いで静かに意思を伝え合うのが普通だ。
だが、飼い猫となると事情は違う。人間に向かって「ニャー」と鳴く。その声には、空腹、甘え、警戒などさまざまな感情が込められていると考えられている。
実際、研究によれば飼い猫の鳴き声には人間の赤ちゃんの泣き声に似た周波数が含まれており、人間の注意を引くように進化した可能性すらあるという。
飼い猫は「気まぐれ」ではなく、人間に訴える手段として「鳴き声」を意図的に使っている可能性は以前から指摘されていた。
動物の鳴き声を人間の言葉に「翻訳」するAIを本格開発
中国のテック企業バイドゥ(Baidu)は飼い猫を含むペットの鳴き声の意味を高い精度で解読しようとしている。
同社は2025年、中国国家知識産権局に対し、動物の鳴き声を人間の言語に翻訳するAIシステムの特許を申請した。
このシステムは、単なる音声認識ではない。
そしてそれらのデータをAIで統合処理し、「感情状態」を特定するモデルとして設計されている。
バイドゥによれば、この技術によって「動物と人間とのあいだに、より深い感情的なコミュニケーションと理解が生まれる」とのこと。
つまり、動物が何を感じ、何を求めているのかを、より正確に人間が理解できる未来を目指しているのだ。
現在は研究段階、実用化はまだ先
とはいえ、このAI翻訳システムはまだ研究段階だ。バイドゥの広報担当者も「現在は開発中であり、具体的な製品化には至っていない」と語っている。
バイドゥの特許申請はオンライン上で注目を集めており、中国のSNS「Weibo(微博)」には「技術的には面白いが、実際にうまく使えるかはまだわからない」といった慎重なコメントも見られる。
なおバイドゥは、OpenAIのChatGPTが2022年に登場して以降、中国の主要企業の中でもいち早くAI分野への本格的な投資を行ってきた企業のひとつである。
同社は2025年4月に、最新のAIモデル「Ernie 4.5 Turbo」を発表し、いくつかの業界ベンチマークテストにおいて最高水準の性能を示したと報告している。
しかし、そのAIチャットボット「Ernie」は、競争の激しいAI市場において目立った存在感を確立するには至っていないのが現状だ。
世界中で進む、動物の言語解読
この分野の研究は、世界中で進められている。
たとえば、アメリカ・カリフォルニアの非営利団体「Earth Species Project」は、鳥のさえずり、イルカの口笛、ゾウの低周波音などをAIで解析している。
また別の団体「ネイチャーLM(NatureLM)」は、動物同士のコミュニケーションパターンを解析するAI言語モデルの開発に向けて、1,700万ドル(約26億円)の資金を獲得[https://www.axios.com/2024/12/28/using-ai-to-talk-to-animals]している。
また、2025年に発表されたオーストラリア、クイーンズランド大学の研究では、ザトウクジラの歌に人間の言語と良く似たパターンが隠されていることを発見した。
このように異種間のコミュニケーションに関する研究は急速に広がりを見せているが、動物の「言葉」をAIが理解するには、残された多くの課題を乗り越えていかなければならない。
だがその壁が突破できれば、近い将来、本当に動物たちの鳴き声から、彼ら何を語りかけているのか、本当の意味が分かるようになる日がくるのかもしれない。
References: Chinese Tech Giant Wants to Translate Your Cat's Meows Using AI[https://futurism.com/the-byte/baidu-translate-animals-ai] / Dr. Dolittle-like animal speech interpreter’s patent filed by Baidu in China[https://interestingengineering.com/culture/china-baidu-patent-animal-human-sound-interpreter]
本記事は、海外で報じられた情報を基に、日本の読者に理解しやすい形で編集・解説しています。