宇宙は予想以上に早く消滅する。10の78乗年で終焉を迎える可能性
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 宇宙の寿命は、想像以上に短いことが判明したそうだ。最新の研究によると、宇宙に残された時間は10の78乗年)。

従来の想定されていた10の1100乗年よりはるかに短いのだ。

 オランダ、ラドバウド大学の研究チームによれば、1にゼロが78個つく年数が経過すると、「ホーキング放射」のために白色矮星は完全に蒸発し、構造ある宇宙は死を迎える。

 だがもっと衝撃的なことがある。それは我々人類の寿命が宇宙の寿命よりも長いことだ。

宇宙の終焉をホーキング放射で算出

 ブラックホールはその巨大な重力でありとあらゆるものを飲み込む。ならば、周囲にあるものを貪りながら永遠に成長し続けるのだろうか?

 アインシュタインの相対性理論によるならば、そうだ。だが車椅子の天才、故スティーブン・ホーキング博士は、そうではないと考えた。

 ホーキング博士によるなら、光すら脱出できないはずのブラックホールからは、ほんのわずかだけ熱的な放射があるのだという。

 同博士によると、ブラックホールの「事象の地平面」では量子ゆらぎにより粒子の対が発生する。その片方はブラックホールに吸い込まれるが、もう片方は外に飛び出すことがあり、放射線のように見える。これが「ホーキング放射」だ。

 その結果として、ブラックホールは少しずつ質量を失い、最終的には完全に蒸発して消えると考えられるのだ。実際にそれを証明したという研究もある。

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想像より短い宇宙の寿命と想像以上に長い人間の寿命

 今回、ラドバウド大学の研究チームは、ホーキング放射が重力場を持つほかの天体にも応用できることを示し、それによって蒸発するまでの時間を計算している。

 たとえば主に中性子で構成された「中性子星」ならば、完全に蒸発して消えるまでに1067年かかる。

 意外にも、これは恒星ブラックホールが蒸発するまでの時間と同じだ。

 ホーキング放射自体はブラックホールの方が強くても、この天体には表面がなく、放射した一部を再吸収するので、蒸発が抑えられる。

 その結果、より強力な重力場を持つブラックホールであっても、完全に消えるまでには中性子星と同じくらいの時間がかかるのだという。

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 また恒星の燃えカスである白色矮星が蒸発するまでの時間は10の78乗年だ。

 宇宙全体で見て、最後に残るのは白色矮星のような死んだ星であるため、これが蒸発して消えれば、構造ある宇宙はなくなる。

 したがって、白色矮星が蒸発するまでの時間は、構造ある宇宙の寿命とみなすことができる。

 これまで宇宙の寿命は10の1100乗年と想定されてきたが、じつはそれよりずっと短かったようだ。

 ちなみに人間や月もまたホーキング放射で蒸発する。それに要する時間は1090年。どうやら我々は宇宙よりも長生きであるらしい。

 この研究は『Journal of Cosmology and Astroparticle Physics[https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1475-7516/2025/05/023]』(2025年5月12日付)に掲載された。

References: An upper limit to the lifetime of stellar remnants from gravitational pair production[https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1475-7516/2025/05/023] / Universe expected to decay in 10⁷⁸ years, much sooner than previously thought[https://phys.org/news/2025-05-universe-decay-years-sooner-previously.html]

本記事は、海外の記事を参考に、日本の読者向けに重要な情報を翻訳・再構成しています。

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