マンホールの蓋が踊ってる!壊滅的ハリケーン到来の予兆では?との噂が飛び交う
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 2025年5月、SNS上でマンホールの蓋が浮き上がり、踊るようにガタンガタンと動いている映像が拡散された。

 これはもちろん超常現象などではなく、れっきとした物理的な原因がある。

 だが、動画が撮影されたアメリカのルイジアナ州ニューオーリンズは、20年前のハリケーン・カトリーナによる壊滅的な被害から、いまだに立ち直れていない。

 映像を見た住民の中には、再びあの悪夢をもたらす大型の嵐がやってくるのでは?と、不安を覚える人も多いという。

マンホールの蓋が「踊る」 謎の現象

 投稿された動画を見ると、確かに複数のマンホールのふたがポコポコと浮かんでは沈みを繰り返し、踊っているように見える。

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 @dom_lucreは動画の説明でこう記している。

ルイジアナ州ニューオーリンズの住民は、マンホールが浮き始めたことを受けて、ハリケーン・カトリーナに似た巨大な嵐が今年、ニューオーリンズに接近する可能性があると主張しています。

住民らは「これは先祖からのサインだ」と主張しており、ハリケーン・カトリーナが堤防を破壊する数週間前にも同じ現象が観測されたそうです。

「カトリーナ以前にもこんなひどいことがありました。もしあなたが堤防の近くにいるなら、あるいは今後1~2か月以内に市内に滞在する予定なら、避難計画を立てておくようにしてください。」
「わかる人にはわかるでしょう」
「ニューオーリンズから脱出する時が来た」

 この映像がいつ撮影されたものかは説明されていないが、5月の初めにニューオーリンズ市内で集中豪雨があり、道路が冠水する被害があったという。

 もしかするとこのマンホールの蓋が動く現象は、この集中豪雨のせいで発生したものかもしれない。

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ハリケーン・カトリーナの再来を恐れる住人たち

 日本でも、大雨が降った際などにこのような現象が見られることがある。だがニューオーリンズの一部の住民たちは、ハリケーン・カトリーナのような嵐がまた襲って来るのでは?という不安に駆られてしまったようだ。

 ハリケーン・カトリーナは、2005年8月末にアメリカ南東部を襲った大型のハリケーンである。この猛烈な嵐により、ニューオーリンズでは市内8割が水没、死者千人を超えた。

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 その後市当局は、100年に一度の洪水にも耐えられるよう、145億ドル(約2兆円)を投じて市の洪水対策を強化した。

 だが市民の不安は、完全には払しょくされていない。カトリーナのもたらした被害によるトラウマもあるが、気候変動によるリスクの「質」が変化してきている点も、市民が安心できない理由の一つだ。

 2024年にはハリケーン・ヘレンやミルトンといった大型のハリケーンが相次いでアメリカを襲い、甚大な被害が発生した。

 これまでの想定を超える「スーパーハリケーン」が頻発していることから、いくらお金をかけても「本当に大丈夫なのか?」という疑念がぬぐい切れないのである。

 もともとニューオーリンズは湿地帯に位置しており、水害対策や排水管理の難易度が高い。降水量が25mmを越えると洪水が発生するとも言われている。

 また、海抜マイナス2mという低い場所にあり、全体的に「スープ皿」とも呼ばれる特徴的な地形をしている。さらに一部地域では、年間に6~8mmの割合で地盤沈下が続いているという。

 こういった特異な地理的条件から、ニューオーリンズの洪水に対する脆弱性は依然として懸念材料であり、住民の間に「歴史が繰り返されるのでは?」という恐怖がまん延しているのだ。

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 住民の不安は、堤防やポンプといった設備だけでなく、避難手段・交通網・貧困層支援・医療体制といった生活全体に対する不信とも結びついている。

 その上、ニューオーリンズでは人口の減少や財政難もあって、インフラへの投資が後回しにされる傾向が強い。

 カトリーナの襲来時は、車を持たない人々が取り残され、ハリケーン後の避難所では治安や衛生状態の悪化が深刻化した。

 いくら防災設備が整ってきても、「自分たちは守られないのではないか」という不信感が、住民の心に根強く巣食っているのだ。

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専門家は配管内の圧力の変化によるものと説明

 住民の間にこういった不安や憶測が飛び交う中、専門家たちは即座に「災害が来る」という不穏な噂を否定した。

 地元ニューオーリンズのテュレーン大学の土木技師、ジェーン・スミス博士は次のように説明する。

マンホールの蓋がずれる主な原因は、豪雨時の排水システムにかかる水圧です。これは排水システムに負担がかかっていることを示していますが、(ハリケーンのような)気象現象を予測するものではありません

 簡単に言えば、地下の配管内に溜まった空気や水圧が急激に移動することで、マンホールの蓋を突き上げる力が生じているということだ。

 これは決して珍しいことではなく、都市部の古い配管やポンプ施設が過負荷状態になった際にしばしば見られる現象である。

 さらに近年の相次ぐ豪雨やハリケーンの接近によって、排水施設が過度な負荷を受ける場面が増えており、今回の現象もそれであろうと推測されている。

 ただし、映像ではマンホールから水が噴き出す様子は確認されず、空気圧による挙動も否定できないため、詳細な原因は今後の現地調査を待つ必要があるだろう。

視聴者の反応は様々。懐疑的な声も

 しかしそれでも、市民の中にはこの現象を不吉な予兆としてとらえる人が後を絶たない。スピリチュアルな伝統が深く根付いている土地柄も一役買っているのかもしれない。

  • 私たちの文化では、自然は私たちにサインを与えてくれると信じています
  • こんな映像を見ると、祖父母がカトリーナ以前の予兆について語ってくれた話を思い出します
  • カトリーナの襲来は、5年前から予言されていた。ニューオーリンズは悔い改めなければいけない

 だが、この映像や、将来起こる災害の予兆という説に懐疑的な人も少なからず存在する。

  • どうせAIが生成した動画だろ?
  • こんな近くにマンホールが2つ並んでいるのは怪しくないか?
  • もし本当だとしたら、ニューオーリンズの人たちに「嵐が来る前に避難しろ」って言うサインが出てるわけだろ? 何で避難しないで無視しているんだ?
  • おいおい、俺はダウンタウンで働いてるけど、大雨が降る度にこうなるんだよ、いい加減にしてくれ
  • 今週末にニューオーリンズから引っ越すんだ。まだちょっと迷ってたけど、この映像のせいで気持ちが楽になったよ。まだこれが正しい選択なのかわからないけどね、ありがとう

 日本でもゲリラ豪雨などの際、マンホールから水柱が上がったり、マンホールの蓋が跳ね飛ばされたりといった事件が報道されることがある。

 これは下水道内に急激に流入した雨水が気圧を上昇させ、出口を求めた空気が蓋を突き上げる「エアーハンマー」や、水圧の急激な上昇でマンホールから水が噴き出す「ウォーターハンマー」といった現象によるものだ。

 今回のニューオーリンズの事例が注目されたのは、「見えない場所で起きている異常」が、目に見える形で表出したからに他ならない。

 私たちの日常は、無数のインフラによって支えられているが、それらは通常、地中や壁の中、あるいは遠方にあって目にすることがない。

 だからこそ、身近にあるマンホールの蓋が跳ね上がるという異常な出来事は、人々に「何かがおかしい」と直感させるのだろう。

 そしてそれは過去のトラウマと結びつき、過敏な反応を引き起こす。ニューオーリンズであればハリケーン・カトリーナであり、日本であれば阪神淡路大震災や東日本大震災の記憶であり、といった具合だ。

 インフラに対する信頼とは、単なる物理的・技術的な問題だけではなく、そこで暮らす住民の心理や社会への信頼にまで波及するものなのかもしれない。

References: New Orleans Fears Another Katrina After Manholes Begin Levitating[https://www.hypefresh.com/new-orleans-fears-another-katrina-after-manholes-begin-levitating/]

本記事は、海外で報じられた情報を基に、日本の読者に理解しやすい形で編集・解説しています。

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