
イタリアの新たな研究によると、プロのボディビルダーは突然死のリスクがアマチュアの14倍も高いことが判明したそうだ。
筋トレや運動は体にいい。
この結果を受け、アスリート・医療機関・スポーツ団体がこうしたリスクを無視することはもはや許されないと研究者は警鐘を鳴らしている。
この研究は『European Heart Journal[https://academic.oup.com/eurheartj/advance-article/doi/10.1093/eurheartj/ehaf285/8131432]』(2025年5月20日付)に掲載された。
ボディビルダーの突然死のリスクを調査
イタリア、パドヴァ大学をはじめとする研究チームは、世界初となる男性ボディビルダーにおける突然死のリスクの大規模調査を行った。
2万人以上のボディビルダーを8年間追跡したところ、この間に73人が突然死していた。死亡時の平均年齢は42歳だった。
死因の一部は、ステロイドなどの能力強化薬(いわゆるドーピング)や交通事故、殺人、自殺など多岐にわたったが、圧倒的に多かったのは突然死、いわゆる「心不全」によるもので、46件がそれに該当した。
一流ボディビルダーの突然死リスクはアマチュアの14倍
誤解のないように言っておくと、こうした突然死のリスクは、一般的なボディビルダーにとっては低い。ただトップレベルのプロ選手に限るのなら話が違う。
彼らの突然の心不全リスクはアマチュア選手の14倍以上で、その危険性は競技レベルが高まるにつれて急激に高まる。
たとえば、ボディビル最高峰の国際大会「ミスター・オリンピア」のオープンカテゴリーに出場した選手に限れば、100人中7人が突然死。そのうち5人が突然の心配停止により、平均36歳という若さで亡くなっているのだ。
解剖結果が示す心臓への深刻な変化
今回確認された心不全による突然死のうち、きちんと解剖して検査されたのはほんの1割程度だ。したがって、その詳しい原因や経緯といったことは不明だ。
だがその背景には、「極端なトレーニング」「厳格な食事制限」「能力強化薬の使用」といった要因があると推測されている。
パドヴァ大学のマルコ・ヴェッキアート氏は、「こうしたものは心血管系に大きな負担をかけ、不整脈のリスクを高めます。やがては心臓の構造を変化させる恐れもあります」と説明する。
なお数少ないながらも解剖された心臓からは、いずれも左心室や心臓の肥大が起きていることがわかっている。
2022年に発表されたアメリカの研究[https://www.mdpi.com/2411-5142/7/4/105]では、ボディビルダーの心臓が標準より74%重く、左心室の厚さは平均的な男性の125%に達していたことが報告されている。今回の研究も、こうした結果と整合的だ。
こうした発見を受け、ヴェッキアート氏は、「医療団体はこの問題を無視するべきではなく、各競技関係者や政策立案者と協力して、より安全な競技を目指すべき」と警鐘を鳴らしている。
鍛えられた肉体は美しいが、何事も限度があるということなのかもしれない。ちなみにハーバード大学の2022年の研究では週150~600分の運動がもっとも安全であることが示されている。
References: Male bodybuilders face high risk of sudden cardiac death, especially those who compete professionally[https://www.escardio.org/The-ESC/Press-Office/Press-releases/male-bodybuilders-face-high-risk-of-sudden-cardiac-death-especially-those-who-compete-professionally] / Mortality in male bodybuilding athletes[https://academic.oup.com/eurheartj/advance-article/doi/10.1093/eurheartj/ehaf285/8131432]
本記事は、海外で報じられた情報を基に、日本の読者に理解しやすい形で編集・解説しています。