天の川銀河とアンドロメダ銀河は衝突しないかもしれない。最新シミュレーション結果
天の川銀河とアンドロメダ銀河  <a href="https://svs.gsfc.nasa.gov/11011/" target="_blank" rel="noreferrer noopener">NASA, ESA, Z. Levay and R. van der Marel/STScI,T. Hallas, and A. Mellinger</a>

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 私たちが暮らす天の川銀河は、隣接するアンドロメダ銀河と毎秒100kmの速さで接近しており、これまでの予測ではおよそ40億年後に衝突して両者が一体化し、壊滅的な変化を迎えると考えられていた。

ところが、2025年に発表された最新の研究により、この衝突が起きる可能性はかなり低いことが明らかになった。

 NASAと欧州宇宙機関(ESA)の観測データをもとに、ヨーロッパの研究チームが今後100億年にわたる両銀河の動きを10万通りシミュレーションしたところ、50億年以内に実際に衝突する確率は、わずか2%にとどまるという結果が得られた。

 この研究は『Nature Astronomy[https://www.nature.com/articles/s41550-025-02563-1]』(2025年6月2月付)に掲載された。

天の川銀河とアンドロメダ銀河は衝突するのか?

 天文学者たちはしばしば銀河同士が衝突・合体する様子を観測してきた。その際、合体して誕生した銀河の中心にガスが集中し、怪物のような超大質量ブラックホールがそれを貪りつつ、まるで宇宙の花火かのように激しい放射線を放つ。

 これまでは、私たちが暮らす天の川銀河も40億年~50億年後にはそうした運命をたどると考えられてきた。

 ところが最近では、破局の可能性はもっと低いのではないかと主張する学説も提唱されている。

 今回の研究もまた、悲劇的な結末とはまったく違う未来を予測するものだ。

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50億年以内に衝突する確率はわずか2%

 フィンランド・ヘルシンキ大学をはじめとする研究チームは、NASAのハッブル宇宙望遠鏡と欧州宇宙機関(ESA)のガイア望遠鏡から得られた最新の観測データを活用し、天の川銀河とアンドロメダ銀河の進化を100億年先まで予測する10万回のシミュレーションを行った。

 筆頭著者であるヘルシンキ大学のティル・サワラ博士によると、決して過去の計算にミスがあったわけではないという。

 だがこれまでの研究では、天の川銀河・アンドロメダ銀河・さんかく座銀河の相互作用が主に分析されたのに対し、今回は、天の川銀河で最大の質量をもつ伴銀河「大マゼラン雲」の影響や、観測データの不確実性まで考慮されている。

 その結果、今後50億年以内に両銀河が衝突する確率はわずか2%という、衝突は確実としてきた従来の予測と正反対のものだったのだ。

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衝突したとしても100億年後、衝突しない可能性も

 シミュレーションされたシナリオの半数以上において、天の川銀河とアンドロメダ銀河は1回以上は接近し、軌道エネルギーを失ってやがて衝突・合体した。

 ただし、それは50億年後はなく、80~100億年後のこと。すでに太陽の寿命が尽きた遠い未来の出来事だ。

 その他の大半のシナリオでは、両銀河はそれほど接近することなくすれ違い、お互いほとんど影響を受けないままそれぞれ進化していった。

 このように従来の予測とまるで違う結果になったのは、最新の観測データが用いられた結果だが、とりわけ大マゼラン雲の影響を考慮できた点が大きかったと、サワラ博士は説明する。

大マゼラン雲の質量は天の川銀河の約15%程度ですが、アンドロメダ銀河の軌道に対して垂直に働く重力が天の川の動きを大きく乱すため、両銀河が衝突する可能性を大幅に低下させるのです(サワラ博士)

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 また確実に予測できない状況に対応するために、10万回ものシミュレーションを繰り返し、あらゆるシナリオを試した点も大きい。

過去の研究では、それぞれの変数の一番可能性の高い値のみを用いてきましたが、私たちは数万回のシミュレーションを行い、あらゆる観測の不確実性を考慮しました(サワラ博士)

 共同研究者であるイギリス、ダラム大学のアリス・ディーソン教授は、「私たちはこれまで、天の川銀河がアンドロメダと融合し、「ミルコメダ」と呼ばれる巨大銀河になる未来が確定していると考えていました。しかし今回の結果は、その未来が一つの可能性に過ぎないことを示しています」と述べている。

 ただし宇宙は動的な場所であり、常に進化し続けている。そのため今の時点で、天の川銀河とアンドロメダ銀河の運命をはっきり断言することもできない。

 研究チームは、今後ももたらされるだろう最新の観測データを用いて、さらなるシミュレーションを行う計画をすでに進めているところだ。

 この研究は『Nature Astronomy[https://www.nature.com/articles/s41550-025-02563-1]』(2025年6月2月付)に掲載された。

References: No certainty of a Milky Way–Andromeda collision[https://www.nature.com/articles/s41550-025-02563-1] / Close encounters of the galactic kind: Simulations suggest Milky Way and Andromeda may not collide after all[https://phys.org/news/2025-06-encounters-galactic-kind-simulations-milky.html]

本記事は、海外の情報をもとに、日本の読者がより理解しやすいように情報を整理し、再構成しています。

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