432台の歩行ロボットで、7,500トンの建物をまるごと移動!
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 7,500トンもの住宅群が、大量の歩行型ロボットの足を借りてまるごと大移動。中国・上海の歴史的な建物が密集するエリアで、住宅群を移動させるためにダイナミックな作業が行われた。

 今回の移動は、そのエリアの地下構造建設に伴うものだった。

 2025年5月19日の工事開始から、巨大な住宅群が432台ものロボットに支えられ、1日10mのペースで移動することに。

 ガチャコンガチャコン聞こえてきそうなメカメカしさがクセになる移動の様子を見てみよう。

7,500トンもある歴史的住宅群「華厳里」

 このたび移動を余儀なくされたのは、上海の歴史文化街区「張園」内にある、古い住宅群「華厳里(Huayanli )」だ。

 張園は、伝統的な中洋折衷型の建築様式、石庫門(せきこもん)[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%B3%E5%BA%AB%E9%96%80]の建物が居並ぶエリアで有名で、1882年からの歴史がある。

 その一区画を成す華厳里の住宅群は1920-30年代に建てられ、比較的新しいほうだが、中には貴重な文化財建築物も含まれている。

 華厳里の総面積は4,030㎡、総重量なんと約7,500トンもあり、その文化的価値からしても、通常ならよほどのことが無いかぎり、そっとしておきたいところだろう。

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432台の歩行型ロボットでまるごと移動

 だが今回、張園の大規模な再開発計画に伴い、いったんまるごと移動させる工事が行われた。

 計画では、張園の下に地下3階までの新しい施設を建設することが決まっており、その下準備のため、どうしても華厳里を一度どかす必要があったという。

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 そのため今回は、先端技術を活用する工事計画が立てられ、細心の注意を払いながらの移動工事が行われた。

 まず掘削ロボットが華厳里の地下を掘り進め、鉄骨でまるごと持ち上げられるよう処理した後、油圧式の小型の歩行型ロボット432台が繊細な華厳里をやさしく持ち上げ、あらかじめ敷かれた鉄骨のフレームの上をゆっくり運んだ。

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 2025年5月19日の工事初日には、たくさんの足をつけた華厳里が、1日平均10mの安全な速度でゆっくり「歩き」出し安全に移動できたそうだ。

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中国最大の移転プロジェクト

 この移動は発表直後から、その規模や重さや複雑さから”中国最大の移転プロジェクト”として話題を呼んだ。上海の地方政府はこのように報じていた。

このプロジェクトは歴史的建造物の密集地で、改修や地下開発の余地がほぼ無い中で実施されることで注目を集めています

 下は6月6日Youtubeで公開された大移動の様子。

メカメカしいロボットの足でじりじり動く様子がタイムラプスで楽しめる。映像は再生数17万回超えの人気動画となり、Xでもたちまちのうちにシェアされた。

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特殊なロボットやAI、3Dモデルを活用。その後再び元の位置に

 歴史的景観が魅力の張園は、道路といっても狭い路地がまばらにあるだけ。そこから華厳里の1区画をまるごと壊さず移動することなど、従来の工法では不可能だった。

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 そこで当局は、華厳里の基礎工事の際にも狭所に適した特別な計画を立て、狭い通路や出入り口も通れる掘削ロボットや折りたたみ式アームを備えた特殊な土木作業ロボットなども活用した。

 これにより幅1.2mの狭い空間でも作業が可能になったという。

 さらにこれらのロボットには、粘土と固体の障害物を区別するためAIが活用され、エンジニアたちが建物と敷地の詳細な3Dモデルを構築した。

 これにより、衝突リスク回避をしつつ、効率的で正確な移動ができる経路が得られ、曲線状の土砂輸送経路なども設計できた。

 さらに不要な土砂を無駄なく運び出すベルトコンベアシステムも設置し、混乱を最小限に抑える方法を実現した。

 そのかいあって華厳里の一時移動も無事に済み、6月5日には再び元の位置に戻ったそう。

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再開発で生まれ変わる張園

 現在進行中の再開発計画では、最終的に地上の歴史ある建物群と地下の近代的施設が統合されるほか、周囲の高層ビル、ショッピングエリア、近隣地区とも直結されるそう。

 今後開発される地下3階までの新スペースには、広大な文化・商業ゾーン(53,000㎡)や、車100台以上が駐車できるパーキングエリア、市内の地下鉄数本にすぐアクセスできる交通ハブの開発も計画されている。

  前も中国でロボットの足で移動した校舎を取り上げたけど、あれは単体だったし、今回はその応用というか、さらにグレードアップしてる感。

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 いわゆる曳屋(ひきや)[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9B%B3%E5%AE%B6]的な工法とはいえ、今の技術を投入するとこんなことまでできるのかって感心しきりだ。

 再開発工事が完了したら古さと新しさの両方が楽しめる観光スポットに生まれ変わった張園がまた話題になりそう。

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References: Odditycentral[https://www.odditycentral.com/architecture/chinese-city-moves-entire-historic-neighborhood-using-hundreds-of-hydraulic-legs.html] / Interestingengineering[https://interestingengineering.com/innovation/china-432-robots-move-7500-ton-building-construction]

本記事は、海外の情報を基に、日本の読者向けにわかりやすく編集しています。

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