
西オーストラリア州で、浅瀬に入り込んで迷子になったザトウクジラに寄り添い、イルカの群れが沖合へと誘導する光景が観察された。
イルカは、例え異なる種であっても、危機に瀕している相手を助ける行動をとることがある。
イルカたちの誘導のおかげで、クジラは無事に元の海域へと戻ることができた。
浅瀬に迷い込んだザトウクジラ
2025年6月中旬、西オーストラリア州南部、港町バンバリー近郊のクーンバナ湾で、1頭のザトウクジラが湾内の浅瀬に迷い込んでいるのが発見された。
発見したのは、地元の海洋保護施設「ドルフィン・ディスカバリー・センター(Dolphin Discovery Centre)[https://dolphindiscovery.com.au/]」のスタッフたちだ。
センターのチームはすぐにドローンを飛ばし、船で現場へ向かい、クジラの状況を確認した。
幸い健康状態は良好で、漁具に絡まったり怪我をしている様子もなかったが、浅瀬にとどまっていた。
ザトウクジラは、捕食者に追われたり、体調がすぐれなかったりすると浅い場所に避難してくることもあるという。
ザトウクジラに近づき、沖合へと誘導するイルカたち
するとそこにイルカの群れが現れ、クジラの周囲を泳ぎはじめると、元々のすみかである沖合の方へと誘導しはじめたのだ。
クジラの前で泳いで「こっちだよ」と先導する係と、こっちに戻っちゃだめだよと、クジラが後戻りしないよう後ろを泳ぐ係に別れていた。
イルカたちに導かれ、再び安全な水域内に入ったクジラは、無事に本来の回遊ルートへ戻る様子まで確認された。
イルカの高い知能と社会性が生んだ行動
今回観察されたイルカは、この地域でよく見られるバンドウイルカ*と考えられる。体長2~4mほどで、知能が高く、複雑な社会性を持つことで知られている。
イルカはこれまでにも、人間をサメから守ったり、種の違うイルカの子を育てたりと、異種間の救助行動が各地で報告されている。
今回のケースも、困っているザトウクジラの状況を察知し、自発的に行動を起こした可能性が高い。
他の動物に対しても協力や支援の行動を見せるイルカたちの賢さと豊かな社会性が、今回の救助劇につながったのだろう。
ザトウクジラとイルカ、海の中の思わぬ交流
今回の出来事は、そんなザトウクジラをイルカたちが助けるという、思わぬ「海の交流」を映し出した場面だった。
利他的な行動を見せるイルカの知性とやさしさが、またひとつ新たなエピソードとして記録された。
ザトウクジラは毎年5月から11月にかけて、南極の冷たい海からオーストラリア東部のゴールドコースト周辺の繁殖海域へと移動する。
その距離はおよそ5,000kmにおよび、3か月ほどかけて旅をする。これまでには13,000kmもの記録的な長距離を泳いだ個体も報告されている。
かつては絶滅が危惧されていたが、国際的な保護活動が功を奏し、現在では約5万頭まで個体数が回復している
References: Dolphindiscovery.com.au[https://dolphindiscovery.com.au/]
本記事は、海外の情報をもとに、日本の読者がより理解しやすいように情報を整理し、再構成しています。