地球の地磁気と大気中の酸素濃度に強い関連性
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 地球の地磁気と大気中の酸素濃度は、私たちが考えていた以上に深い関係があることがわかった。

 NASAとイギリス・リーズ大学の共同研究チームは、過去5億4000万年にわたり両者が同時に増減していたという強い相関関係を発見した。

 この結果は、地球内部のプロセスと生命を支える地表環境が密接につながっていることを示しており、地球外生命の探査においても重要な手がかりになる。

 この研究は『Science Advances[https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adu8826]』(2025年6月13日付)に掲載された。

なぜ地球の大気には酸素が豊富に存在するのか?

 私たちが今ここで呼吸をして生きていられるのは、周囲の空気の約21%が酸素で占められているからだ。これは人間だけでなく、この地球上の多くの生命にとって不可欠な命綱である。

 そうした生命を支える酸素が、大気をたっぷりと満たすようになったのは、今から約24~25億年前のこと。

 この時代、シアノバクテリア(藍藻)が光合成を行い、酸素を大量に放出。それによって、大気中の酸素は急激に増加した。この出来事は、地球史において「大酸化イベント」と呼ばれている。

 だが、今この地球が生命豊かな惑星であるのは、シアノバクテリアや植物だけのおかげではないのかもしれない。

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地磁気と酸素の関係

 ずっと以前から、科学者たちは地球の地磁気(地球全体を覆う磁場)がその居住可能性に関与している可能性を疑ってきた。

 岩石や鉱物の中に残されている地磁気の痕跡を調べると、地球に地磁気が形成された時期と生命が誕生した時期がちょうど重なっているのだ。

 ただし、この仮説を裏付けるような直接的かつ長期的な証拠は乏しく、そもそもこれまで考案された地球全体の仕組みを再現したシミュレーションでは地磁気が酸素濃度に影響する要因であるとは考えられてもこなかった。

 その一方、地磁気が宇宙からやってくる太陽風や高エネルギー粒子から大気を守り、宇宙への酸素流出を防ぐ働きがあることは、シミュレーションによって示されてきた。

 だがそれでも、地磁気と酸素濃度の長期的な記録が比較されるようなことはなかった。

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地磁気と酸素濃度に強い相関関係があることが判明

 そこでNASAゴダード宇宙飛行センターと英国リーズ大学の共同研究チームは今回、それぞれ独立した2種類のデータを使って、地球の地磁気と酸素濃度に何らかの相関関係がないかどうか検証した。

 データの1つは、岩石や鉱物に保存された古地磁気データ(仮想地磁双極子モーメント)だ。

 もう1つは、堆積物に含まれる木炭の化石や海が無酸素状態だったことを示す痕跡など、酸素の濃度を推測する手がかりとなる地質学的なデータである。

 この分析の結果、過去5億4000万年にわたる地磁気の強さと酸素濃度とは密接に関係(相関係数0.72)していることが明らかになった。

 そうしたつながりは、長期的なゆるやかな変化を取り除いたあとでもはっきり残っており、両者の変動のズレは、せいぜい100万年という地質学的にはほとんど無視できる程度にしかなかった。

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地球の進化史を紐解き地球外生命探査に役立つ可能性

 この相関関係は、地磁気を発生させる地球内部の物理学的プロセス・地表での酸化還元反応・生物による地球化学的な循環との間に、これまで知られていなかった深いつながりがある可能性を示唆している。

 今回の発見は、私たちの惑星がなぜ生命にとって適した環境を保てたのかを解明するうえで、大きなヒントとなる。

 さらに、この知見は、地球外惑星での生命探査にも応用できる可能性がある。もし強い地磁気を持つ惑星が発見されれば、そこに生命が存在する確率は高まるのかもしれない。

References: Science[https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adu8826] / Surprising discovery shows a strong link between Earth's magnetic field and atmospheric oxygen levels[https://phys.org/news/2025-06-discovery-strong-link-earth-magnetic.html]

本記事は、海外の情報をもとに、日本の読者がより理解しやすいように情報を整理し、再構成しています。

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