
交通違反の取り締まり中にも、思いやりの心を忘れなかった保安官の行動が、人々の心を打っている。
ルイジアナ州で、スピード違反で停止させられた運転手が「葬儀へ向かう途中だった」と打ち明けた。
当然、違反切符は切られたが、その何気ない優しさがSNSで広がり、「法の執行と人間性は両立できる」と称賛されている。
スピード違反した車の運転手は葬儀に行く途中だった
2025年6月中旬、ルイジアナ州セント・タマニー郡のハイウェイ21号線で、保安官代理ダスティン・バイヤーズ氏はスピード違反の車両を停止させた。
運転していた男性は「葬儀に向かう途中だった」と打ち明けた。さらに、礼服のネクタイをどうしても上手く結べずに困っていることも明かした。
その話を聞いたバイヤーズ氏は、男性の状況を察し、ただ取り締まるだけではなく、人として手を差し伸べることを選んだ。
すぐにネクタイを結んであげた保安官
その様子を見たバイヤーズ氏は、すぐに「手伝いましょうか」と声をかけ、道路脇で男性のネクタイを丁寧に結んであげた。
その姿は保安官事務所の職員によって撮影され、2025年6月22日付のフェイスブックで紹介された。
この投稿はまたたく間に拡散され、2024年6月25日時点で2,000回以上シェアされるほどの反響を呼んだ。
コメント欄には「こういう小さなやさしさが一番心に残る」「これが人間らしさというものだ」といった声が寄せられた。
多くの人が、法の執行者である保安官代理が見せた個人としてのやさしさに心を打たれたようだ。
一方で、「違反切符は発行されたのか?」という質問も多くあがったが、保安官事務所は「違反切符は発行した」と明かしている。ただし、それ以上の詳細なコメントは控えた。
あるユーザーは、「これは制服もバッジも超えた人間の行動。
小さなやさしさが残す、大きな記憶
アメリカでは、都市部を管轄するのが「警察(Police)」、郡を管轄するのが「保安官(Sheriff)」と分かれている。
今回登場したバイヤーズ氏は「保安官代理(Deputy)」であり、郡内の治安を守る立場にある。
その彼が見せた思いやりのある対応は、「違反者」として処理するだけでなく、困っている一人の人間として向き合った結果だった。
法を守ることと、人としての思いやりの心を持つこと。その両方が両立できるという事実が、多くの人に静かな感動を与えている。
アメリカの交通違反事情
なお、日本ではスピード違反などの交通違反に対しても、法律上は不服を申し立てる権利がある。
しかし実際には、裁判の手続きが煩雑であることから、大多数の人が保安官や警察の指示に従い、そのまま罰金を支払っているのが現状だ。
対してアメリカでは、「不当だと思えば裁判で争う」という姿勢が市民の間に根づいており、交通違反に関しても法廷で争うことが珍しくない。
そして実際に無罪や減免を勝ち取るケースもある。