
日本ispace社の月面着陸機「レジリエンス」の墜落現場を写した画像がアメリカ航空宇宙局(NASA)とインド宇宙研究機関(ISRO)によって公開された。
レジリエンスは日本時間2025年6月6日未明、月の上空約100kmから降下を始めたが、減速が不十分だったため、月面に衝突したとみられている。
月面上空から撮影された画像には、衝突によって吹き飛ばされたレゴリス(軟らかい堆積層)や広範囲に散らばったレジリエンスの破片が映し出されている。
高度測定器の不具合で減速できず、月面に墜落したレジリデンス
「レジリエンス」は日本の宇宙スタートアップ企業「ispace」が開発・運用していた月着陸機だ。
2025年6月6日、月北部に広がる「氷の海」への着陸に挑んだが、通信が途絶。YouTubeで生配信され2万人が見守る中での、歴史的な挑戦だった。
午前4時4分ごろ、同機は着陸予定点の30~40kmほど手前から減速を開始。その後しばらくは「全て順調」と報告されていたが、着陸予定時刻の4時17時を過ぎても通信を確立できず、4時34分ごろ中継が終了。
おそらくは月面に衝突したと考えられていた。
その後のフライトデータの分析では、ハードウェアの不具合によってレーザー高度測定装置がうまく機能していなかったことが判明している。
本来レーザー高度測定装置は高度3kmまでには動作しているはずだったが、当日は高度1km未満になっても動作していなかった。
そのせいで減速が遅れ、高度650mの時点で予定された降下速度の1.5倍のスピードが出ていた。
その結果、機体は月面着陸の衝撃に耐えることができなかったのだ。
NASAとISROが撮影した墜落現場、機体の破片も確認
ここまではレジリエンスのフライトデータから推測されたことだが、その決定的証拠がNASAとISROの月周回機によって撮影されている。
最初に現場を撮影[https://www.nasa.gov/missions/lro/nasas-lro-views-ispace-hakuto-r-mission-2-moon-lander-impact-site/]したのは、NASAの月周回探査機「ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)」だ。
6月11日に撮影された画像とその前に撮影された画像と比較すると、何やら黒い汚れのような痕跡が確認できる。
これは、衝突の衝撃で吹き飛ばされたレゴリス(月面をおおう塵や岩石)によるものだと考えられている。
さらに6月16日には、ISROの探査機「チャンドラヤーン2号」が、同地点をより高解像度で撮影。
アマチュア天文家シャヌムガ・スブラマニアン氏は、この画像を分析し、少なくとも12個の破片が現場周囲に散乱していることを「X」に報告している。
日本の技術者の挑戦、3度目の正直はなるか?
なお、ispace社にとってレジリエンスのミッションは2度目の挑戦だった。
1度目の挑戦は、「HAKUTO-R ミッション1」によるもの。
2022年12月に米国から打ち上げられた機体は、4ヶ月かけて月に到着。2023年4月26日に着陸に挑むが、やはり通信が途絶してしまった。
今回の着陸機に付けられたレジリエンスという名は「再起」を意味するもので、関係者にとっては文字通り再起をかけた戦いだったことを伝えている。
残念なことに再挑戦も失敗に終わってしまったが、それでispace社の情熱の火が消えたわけではない。
同社の最高経営責任者 袴田武史氏は、「今回の結果を単なる失敗に終わらせず、会社を強くするチャンスと捉えていく」と記者会見で語っている。
References: ispace Mission 2 SMBC x HAKUTO-R Venture Moon Impact Site[https://lroc.im-ldi.com/images/1456] / NASA’s LRO Views ispace HAKUTO-R Mission 2 Moon Lander Impact Site[https://www.nasa.gov/missions/lro/nasas-lro-views-ispace-hakuto-r-mission-2-moon-lander-impact-site/]
本記事は、海外の記事を参考にし、日本の読者向けに独自の考察を加えて再構成しています。