歩くたび崩れ、花の種をまく土でできた靴「ダート・シューズ」
Yerba Madre – Dirt Shoes

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 毎日履いて歩く靴には耐久性が求められるが、この靴はその真逆だ。履くたびに崩れていき、ボロボロになって土に還っていくのだから。

 土、樹液、植物繊維、野生の花の種のみで作られた生分解性の靴「ダート・シューズ」は、長く使えることが目的ではなく、自然に還る靴で自らの足跡に種を落とすこと。

 つまり歩行そのものが種まきになり、使い古して分解される靴からも残った種からの芽吹きが期待できるというこれまでにないコンセプトだ。 

 マテ茶ブランド「ヤーバ・マドレ」と、ニューヨークのデザインスタジオ「バスーラ」によるこのプロジェクトは、靴という身近なアイテムを通して、「消費して終わるもの」ではなく「使い終えた後に何かを遺すもの」という新しい価値観を提示している。

壊れることを前提に作られた靴「ダート・シューズ」

 「ダート・シューズ(Dirt Shoes)[https://yerbamadredirtshoes.com/]」は、あえて壊れることを前提に作られている。

 「ダート(Dirt)」とは英語で「土」や「泥」を意味し、その名の通り素材の中心は土だ。そこにアカシアガム(植物由来の天然接着剤)、植物繊維、そして野生植物の種を混ぜ合わせて固め、靴の形に成形している。

 見た目は粘土のようで、素朴で彫刻的な質感がある。3Dプリンタで型を作ったあと、ひとつひとつ手作業で仕上げるため、同じ靴はふたつとして存在しない。

 歩くと徐々にひびが入って崩れていき、そのたびに靴に埋め込まれた種が地面に落ちていく。

 やがて土に還り、その場に植物が芽を出すかもしれない。まさに、自然のサイクルに寄り添う靴なのだ。

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販売用ではなくコンセプト・アート

 この靴は店頭で販売するための商品ではない。あくまで、「ものの使い方」や「自然との向き合い方」を考えるためのコンセプト・アート作品だ。

 「ダート・シューズ」を発表したヤーバ・マドレは、このプロジェクトを「環境や循環について考えるための表現活動」と位置づけ、その思想を表現する手段として制作した。

 デザインを手がけた「バスーラ」も、この靴をユニークで概念的なアート作品として紹介している。ちなみに「バスーラ」とはスペイン語で「ゴミ」を意味し、その名には廃棄物や使い捨て文化に対する批評のニュアンスもうかがえる。

 靴の形を借りて、私たちが日常的に行っている「消費」のあり方に問いを投げかける。それが「ダート・シューズ」の役割なのだ。

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 ダート・シューズは、あえて仕上げを粗く、不完全なままにしてある。ザラついた土の表面、ゆがんだ輪郭、ひびの入りやすい構造。これらすべてが、「自然は完璧ではない」「壊れることも美しい」というメッセージになっている。

 完璧に均一な工業製品とは違い、一つひとつが「個性」を持つこの靴は、自然に近い存在ともいえる。

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花じゃなくても、何かが芽生えるかもしれない

 靴の中に仕込まれたのは、地域の在来種の植物の種だ。その中には花もあれば、草木もあるかもしれない。つまり、歩いたあとに何が芽を出すかは、履いた人にもわからない。

 大切なのは、履いたその行為が「消費」で終わらず、「何かを遺す行動」になっていることだという。

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 この靴に感銘し、商品化して欲しいという声が上がったら販売される日がくるのだろうか。

 もし販売されるとしても、大都会のコンクリートの上じゃ芽も出ないだろうから、本当に種をまいて植物を育てることを目的にするなら、履く場所を選ぶ靴でもあるよね。

References: Yerbamadredirtshoes[https://yerbamadredirtshoes.com/]

本記事は、海外で公開された情報の中から重要なポイントを抽出し、日本の読者向けに編集したものです。

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