
日焼け止めを塗らないとこうなるよ!イギリスでAI技術を使った看板、その名も「焼けるビルボード(Burnable Billboard)」が話題だ。
このデジタル看板は、皮膚科専門医が監修した健康な肌と日焼けによるダメージの進行を再現したデータをもとに、独自のAIシステムで紫外線の影響をリアルタイムに映し出す。
表示中の“肌”画像が、実際に太陽から降りそそぐ紫外線(UV)に応じて秒単位で変化。赤く焼けていく肌の色、さらには皮むけや水ぶくれまで再現している。
皮膚がんの主な原因とされる日焼けの怖さを強烈に印象付ける、攻めた看板の変わり様とSNSの反応を見ていこう。
リアルタイムで肌が日焼けする看板
リアルタイムで紫外線のリスクを伝えるデジタル看板、イギリスで注目の「焼けるビルボード(Burnable Billboard)」は1か所ではなく、複数の地域に置かれている。
場所は人目につきやすい繁華街。ロンドンのニューアム特別区ストラトフォード地区ストラトフォード・シティ、イギリス南部サウサンプトンのウェストキーなど。
形はいろいろだが、いずれも屋外に目立つように設置され、日焼け止めなしの人間の”肌”がディスプレイされている。
その肌が、秒単位で刻々と変化。実際の紫外線にさらされている時間ともに、背中などが日焼けしてゆく様子がみられる。
3時間16分09秒も紫外線を浴び、痛々しいほど真っ赤になった首や胸元。
4時間23分03秒紫外線を浴びた肌。かなり赤黒く焼け、細かい水ぶくれまでできてるような…
見えない紫外線だからこそ油断は禁物。うっかりすると日焼けというより、やけどレベルの炎症になり、ただれた皮膚と痛みのつらさに泣かされる。
さらに深刻なのが、欧米の白人に多い皮膚がんで、こうした日焼けが主なリスクともされている。
独自のAIシステムで日焼けした肌を再現
広告制作企業 Wonderhood Studios および AI 制作会社 The Gardening.club と提携して制作されたこのキャンペーンでは、この看板専用の独自のAIシステムを使用している。
看板がある地域の気象センサーのUVデータをもとに、AIで健康な肌の高解像度画像を刻々と日焼けする映像に変換して表示している。
なのでUVレベルが上がれば、スクリーン上の肌が赤くなってゆき、水ぶくれができたり、皮がむけたり、細かいシワやひび割れが生じてくる。
ちなみにこうした肌の経過は、画像合成とモーフィングでできているそう。秒単位で取得したUVデータをもとに、AIモデルが肌ダメージのレベルを自動判定。
さらに皮膚科医が監修した皮膚画像と日焼けによるダメージのイラストをブレンドし、その日焼けレベルにふさわしい肌の連続映像を生成して表示する。
またビルボードの下部にあるQRコードは、スキャンすると専門家による日焼け対策のアドバイスが示されるようになっている。
メラノーマの発症率が過去最高に
このキャンペーンは、今や無視できない数字により実施されている。イギリスで唯一「皮膚疾患の研究資金調達と認知向上」を使命とするチャリティ団体British Skin Foundation(BSF)の調査によると、成人の38%が「この春すでに日焼けした」と回答。
またおよそ半数が「春の日差しを過小評価していた」と答えており、日焼け止めについては3分の1が「塗るのが面倒」と告白している。
一方で、メラノーマ[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%82%AA%E6%80%A7%E9%BB%92%E8%89%B2%E8%85%AB](悪性黒色腫:皮膚がんの一種)の発症率は過去最高に達している状況だ。
そこで財団は、日焼けに無関心な人々にも刺さる啓発活動を模索しており、前述のQRコードも併せて企画。多くの人の日焼け対策が習慣化することを期待している。
メラノーマの予防に日焼け止めを推進
このハイテク広告看板はすでに高く評価されており、デジタルクリエイティブコンペティションで銅賞を受賞しているそう。
とはいえ人々の健康を願うBSF財団にとって”真の成功”は、そうした栄誉より、より多くの人が日焼け止めを塗り、陽射しをできるだけ浴びないよう日陰にとどまることだ。
そこでインスタグラムにこの看板を投稿し、実際見たら画像と財団のアカウントをシェアするよう呼び掛けた。そのかいあって、ユーザーからはこんな反応が。
- わあ…本当に肌が焦げてるみたいで衝撃的(泣) これ見たら絶対日焼け止め塗る!
- 皮膚科医として大賛成!科学的データとビジュアルインパクトが両立した最高の啓発ですね
- 今度ロンドンに行ったらチェックする。紫外線ダメージを表現する賢い方法
- 皮むけや水ぶくれまでリアルに再現されてて、ゾッとする…
- ウェストフィールドで見かけた!思わず画面の前で立ち止まったよ。QRコードもすぐ読み取れた
- 子どもと一緒に見に行って2人で大はしゃぎ。見終わってすぐ日焼け止めタイムになった(笑)
- うちの地域でも展開してほしい! 空港とか駅にあったら絶対見ちゃう!
- 情報の”見える化”だけで終わらせず、“アクションにつなげる”仕組みが秀逸。さすがBSF!
毎年約1万7000人がメラノーマを発症
メラノーマはメラニン細胞に由来する悪性腫瘍だが、日本人の年間推定発症率は、欧米人に比べて圧倒的に少ないことで知られる。
がん研究や治療に特化したイギリスのザ・ロイヤル・マーズデン病院[https://www.royalmarsden.nhs.uk/information-gps/gp-resources/skin-cancer/skin-cancer-incidence-and-risk-factors]によると、イギリスではメラノーマが5番目に多いがんとのこと。また王立がん研究基金[https://news.cancerresearchuk.org/2024/05/27/skin-cancer-cases-reach-all-time-high/]によると毎年約1万7000人ものイギリス人がメラノーマを発症している。
一方、日本の国立がん研究センターがん情報サービス[https://ganjoho.jp/public/cancer/melanoma/index.html]によると、日本全国で、1年間にメラノーマと診断されるのは約1800例(人)と、イギリスと比べて1桁ほども少ない。ただ近年は増加傾向にあるともいわれている。
「お前の肌はもう焼けている…紫外線の怖さを思い知れ!」とばかりに置かれた日焼けの看板って、ちょっと大げさな気もしたけど、がん予防のためにもイギリスではそれぐらいのインパクトが必要なんだね。
対して日本はとりわけUV対策に熱心かも。
美白やアンチエイジングや熱中症対策など目的はさまざまだが、日焼け止めを始めとしたUVカット製品もたくさんあるし、日傘ユーザーも今や女性だけでなく男性も見かけるほど。
日焼けにあまり関心がないイギリス人も日本に来たら意識が変わるんじゃなかろうか。
References: Community.designtaxi.com[https://community.designtaxi.com/topic/13450-burnable-billboard-changes-right-before-your-eyes-to-show-real-effects-of-sun-damage]
本記事は、海外の情報をもとに、日本の読者がより理解しやすいように情報を整理し、再構成しています。