あまりにもネズミが多いので。ニューヨークでネズミツアーが開催されている件

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 アメリカのニューヨーク市には300万匹ものネズミが生息していると言われており、市民も当局も一向に数の減らないネズミに頭を悩ませている。

 食料品店が猫を雇うのを合法化する動きがあったり、ネズミに避妊薬を投与したりと、苦肉の策のオンパレードだ。

 そんな中、「ゴミとネズミ」をテーマに、ニューヨークの一番汚い場所をめぐるウォーキングツアーなるものが開催されている。

 敵に勝利するには、まず敵を知ることが大切である。このツアーは参加者たちに、ネズミとの戦いの歴史やゴミの実情について学ぶ機会を与えているのだ。

ネズミを探しに行くツアーはいかが?

 このツアーを主催しているのは、害獣駆除を本業としているスザンヌ・ライスマンさんという女性である。

 彼女はふわふわのネズミ耳を頭につけて、参加者を市内で最も汚れた場所で、最もネズミが一番出没する場所へ案内する。

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 ツアーは2時間半ほどの時間をかけて行われ、ウォール街からスタートして、ロウアー・マンハッタンのネズミの出没するエリアを探検する。

 内容はまるで、「ゴミの山」と化したニューヨークの街角で行われる、サファリツアーのようなものなんだそうだ。

この街にはゴミが山積みになっているという現実を、真剣に受け止めなければなりません。ネズミが簡単に食い破ってしまうゴミ袋を、路上に捨てているのです。

もしネズミの侵入を本当に減らすことができれば、大きな改善につながるでしょう

 参加者はツアーを通してネズミの生態について学び、ゴミ処理の問題について見識を深め、ニューヨーカーとネズミとの戦いの歴史を知るのだ。

 下の動画はその辺を走り回るネズミたち。

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街を歩きながらゴミとネズミの関係を学ぶ

ネズミって、犬のフンを食べるのが大好きなんですよ!

 スザンヌさんは最近のツアー中、興味津々で耳を傾ける参加者に向かってこう語りはじめた。話題は、犬のフンという「珍味」についてだった。

ネズミたちはフンをかき分けて、消化しきれてないドッグフードのかけらを見つけ出すんです。



最近は道端で犬のフンを見かけるたびに思っちゃうんです。「ああ、これはネズミのおやつだな」って

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 ネズミのいる街角を散策しながら、スザンヌさんの授業はニューヨークのゴミとその歴史についても取り上げる。

 ニューヨークのネズミたちは、1700年代半ばの独立戦争の際、ドイツからの傭兵を乗せて来た船に密航して、この地へたどり着いたと言われている。

 当時のニューヨークには廃棄物処理の政策などほとんどなく、住民たちはゴミはもちろん、動物の死骸や排泄物などもすべて路上に放置したり、川に捨てたりしていたという。

ネズミたちは船を降りて、辺りを見渡してこう思ったんです。「やったぜ、これは大当たりだ!」ってね。

彼らはもう、本当に大喜びしたんですよ。そして今では、他の集団と同じくらい、ネズミたちは「ニューヨーカー」、つまり移民として成功したニューヨーカーの一員になったんです

 それ以来、ニューヨークのネズミとゴミは、切っても切れない間柄となり、手と手を取り合う関係になったというわけだ。

 スザンヌさんの「ネズミとゴミ」の講義は続く。

 ニューヨークで公共事業としてのゴミ処理が機能し始めたのは、19世紀後半になってからとか、1968年にはゴミ収集作業員によるストライキが起こった話とか。

 参加者たちは熱心に耳を傾けるが、周囲で講義内容を耳に挟んだ人たちの中には、ドン引きする人もいるようだ。

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ネズミと闘うニューヨーカーたち

 実はスザンヌさんは「ネズミの駆除エリート部隊」、ニューヨークシティ・ラットパック(NYC Rat Pack)[https://www.nycservice.org/opportunity/a0TQq00000DwaIoMAJ/nyc-rat-pack]のメンバーなんだそうだ。

 この部隊はネズミ対策に取り組んでいる、ニューヨークのエリック・アダムス市長の肝いりで始まったもの。

 メンバーは正式なトレーニングを受けた上で、ネズミの駆除に関するあらゆる事柄について、教育し、関与し、行動を起こすことを任務としているのだそうだ。

 スザンヌさんもその部隊の一員として、ウォーキングツアーという形でミッションに取り組んでいるわけだ。

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 ネズミが人間にもたらす被害は、残飯を食い荒らされることだけではない。ノミやダニ、シラミといった外部寄生虫の温床であり、人間にとって危険な細菌やウイルスを媒介する危険な存在でもある。

 かつてベスト(黒死病)の原因となるペスト菌を運んだことはよく知られているが、もっと身近な危険として、ネズミは食中毒の原因菌を日常的にバラまいて歩いているのだ。

 そもそもニューヨークでネズミが大繁殖しているのは、大量に出るゴミとお世辞にも清潔とは言えない衛生状態のせいである。

 街中に残飯などの餌が大量にあることで、ネズミたちは健康的に太り、繁殖を重ねて鼠算式に増え続けているのだ。

 彼らの数を減らすには、いくら駆除をしても限界がある。まずは市民たちの意識を変え、ゴミ問題に本気で取り組むことが近道であり、そのためにもネズミとゴミの関係をもっと知ってもらいたい。

 スザンヌさんたちはこんな思いで、終わりのないネズミとの戦いを今日も繰り広げているのである。

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 ツアーには車いすやベビーカーでの参加も可能。

もし時間内にネズミに出会えなかった場合は、時間を延長することもできるらしい。

 スザンヌさんのツアー[https://www.tripadvisor.jp/AttractionProductReview-g60763-d33035058-Garbage_and_Rats_in_New_York_City_Walking_Tour-New_York_City_New_York.htmlhttps://www.tripadvisor.jp/AttractionProductReview-g60763-d33035058-Garbage_and_Rats_in_New_York_City_Walking_Tour-New_York_City_New_York.html]の参加料金は1人40ドル(約5,800円)だが、ニューヨークでは他にもネズミ探しツアー[https://visitnyckb.com/tours/ola/services/tiktok-subscriber-tour]が開催されているらしいので、興味のある人は探してみるといいかも。

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References: Meet the Rat-Obsessed Tour Guide Leading Visitors Through NYC’s Rodent Hotspots[https://www.vice.com/en/article/meet-the-rat-obsessed-tour-guide-leading-visitors-through-nycs-rodent-hotspots/] / Quirky rat whisperer takes NYC visitors on guided tours — of the city’s worst rodent hot spots: ‘They’re sort of little monsters, but also sort of … cute’[https://nypost.com/2025/06/25/lifestyle/rat-whisperer-offers-tours-of-nycs-rodent-hotspots-theyre-sort-of-little-monsters-but-also-sort-of-cute/]

本記事は、海外で報じられた情報を基に、日本の読者に理解しやすい形で編集・解説しています。

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