アルコールに包まれた星。若い恒星の周囲でメタノールを発見、生命誕生の謎に迫るヒントに
地球から330光年離れた「HD 100453」の原始惑星系円盤でメタノールを検出/Image credit: CfA/M. Weiss

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 地球外生命の可能性や私たちの起源に迫る新たな手がかりが、アルコールに包まれた星から見つかった。

 地球から約330光年離れた若い恒星「HD 100453」の周囲で、生命の材料となるメタノールの同位体が発見されたのだ。

 メタノールはアルコール類の一種で、有機化合物の基礎を成す物質だ。

 この発見は、太古の地球に有機物質を運んだ彗星の役割を裏付ける重要な証拠になる可能性がある。

 若い恒星の円盤で希少なメタノール同位体が見つかった初の事例であり、地球の生命の”素”は宇宙からもたらされたという仮説を補強する発見である。

 この研究は『The Astrophysical Journal Letters[https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/adc7b2]』(2025年6月5日付)に掲載された。

“惑星の資材置き場”でメタノールを検出

 多くの若い恒星は、ガスと塵が渦巻く「原始惑星系円盤」に囲まれている。

 これは惑星・衛星・彗星などが作られる材料であり、円盤はいわば”惑星の資材置き場”ともいえる存在だ。

 今回、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターをはじめとする研究チームは、南米チリにある「アルマ望遠鏡」の観測データを用いて、地球から330光年離れた「HD 100453」という若い恒星の原始惑星系円盤を解析した。

 その結果、「メタノール(メチルアルコール)」の同位体が検出されたのだ。

 原始惑星系円盤でメタノールが発見されたことは過去にもあるが、希少なメタノール同位体が見つかったのは初めてのことだ。

 HD 100453は太陽の約1.6倍の質量があるため、円盤の温度が高い。そのためにメタノールなどの分子は恒星から遠く離れても凍ることなく、気体のままで存在できる。

 そのおかげで、アルマ望遠鏡はこれらの分子を直接検出することができたという。

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地球の生命の素は彗星によって運ばれた?

 メタノールは、私たち生命に欠かすことができない「アミノ酸」などの有機化合物を作る材料の1つだ。

 今回の研究では、HD 100453の円盤におけるメタノールとその他の有機分子との比率が、太陽系の彗星のそれとよく似ていることが判明している。

 地球に存在する生命の素となる有機物は、数十億年前に地球に衝突した彗星などによってもたらされたという仮説があるが、今回の発見はこれを補強するものだ。

 研究の共著者であるオランダ・ライデン大学博士課程の学生ミルー・テンミンク氏は、「この研究は、彗星が太古の地球に有機物を運んだことが、私たち生命誕生につながった可能性を裏付けるもの」と述べている。

 「彗星こそが、私たちをはじめとする生命が地球に誕生できた理由かもしれません」

References: Iopscience.iop.org[https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/adc7b2] / Alcohol-soaked star system could help explain 'why life, including us, was able to form'[https://www.livescience.com/space/exoplanets/alcohol-soaked-star-system-could-help-explain-why-life-including-us-was-able-to-form]

本記事は、海外の記事を参考に、日本の読者向けに重要な情報を翻訳・再構成しています。

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