
ローマ兵はたくましいと言われているが、中には体格的にもたくましい兵士がいたようだ。
イングランド北部の湿地帯にある、古代ローマ皇帝ハドリアヌスの長城の砦跡から、大足のローマ兵の靴が発見された。
泥の中でつま先からかかとまで完全な状態で保存されていた2000年前のその靴は、32cmもあり、履いていたローマ兵は、当時としては傑出した体格の持ち主だったことを物語っている。
また、この発掘調査では、靴だけでなく、化粧道具や木製の櫛といった品々も見つかり、砦周辺に人々が生活を営む「コミュニティ(居住区)」が広がっていたことが確認された。
古代ローマ巨兵の靴を発掘
この、サイズ32cmという巨大な靴が見つかったのは、「ハドリアヌスの長城[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%89%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%8C%E3%82%B9%E3%81%AE%E9%95%B7%E5%9F%8E]」(ローマ帝国が現在のイギリスにあたる北辺を防衛するために築いた防壁)のすぐ南側にある「マグナ」というローマ帝国時代の砦だ。
かつては「カルヴォラン」と呼ばれ、2世紀に建設された長城の防衛ラインを強化する砦のひとつだ。
その東には、同じくローマ軍の砦であり、数々の出土品で知られる「ヴィンドランダ遺跡」もある。
この春、マグナ・プロジェクト[https://romanarmymuseum.com/magnafort/magna-dig-diary-2025/]の考古学チームは、マグナ砦の外部にある堀・土塁・城壁跡の発掘を開始。その一角にあったのが「アンクル・ブレーカー」と呼ばれる細くて深い溝だ。
これはローマ軍の砦によく見られる防御構造で、あらかじめ掘った細くて深い溝を、水や泥で満たして隠しておくことで、それに気づかず足を踏み入れた敵兵の足首を折って動けなくさせる。
今回の巨大な靴は、まさにこのトラップの中から見つかった。
長距離の行軍に耐える頑丈な構造の靴
この遺跡で靴が発掘されたのは初めてではなく、今回のような大足ではないものの、きわめて保存状態のいいものが過去にも発見されている。
そうした遺物からわかるのは、ローマ兵の靴が単なるサンダルではないことだ。
皮を複数に重ねたうえに、紐・縫い目・ホブネイル(靴底の鋲釘)で補強されており、長距離の行軍に耐える頑丈な作りだった。
2000年の間誰にも触れられていなかったものを見つけるのは、いつだってワクワクします。でも靴のような個人的な品は、特に当時の人々の生活が感じられます。
ずぶ濡れの泥だらけになるのも楽しみのうちです(発掘ボランティア ジョーさん)
砦に残された当時の人々の暮らしの痕跡
マグナ・プロジェクトのチームは、砦そのものの発掘にはまだ着手していない。それでもすでに、驚くほど多様な遺物が見つかっている。
そうしたものの中には、軍事用途のものだけでなく、マグナ砦の人々の暮らしぶりを伝える生活品もある。
たとえば職人技が光る木製のくしや、大理石で作られた化粧用パレットといったものだ。
化粧用パレットは乾いた顔料に油を混ぜてペーストにするためのもので、当時の人々は、それを口紅・アイライナー・チークとして使っていたと考えられている。
こうした発見は、ローマの砦が単なる戦いの場ではなく、人々が生活を営む「コミュニティ」だったことを物語っている。
巨大な靴底から化粧のパレットまで、あらゆる遺物が、かつて帝国の辺境に暮らした人々の姿を今に伝えてくれる。
References: Romanarmymuseum[https://romanarmymuseum.com/magnafort/magna-dig-diary-2025/] / A Giant Roman Soldier Lost His Shoe Near Hadrian’s Wall 2,000 Years Ago[https://www.zmescience.com/science/archaeology/a-giant-roman-soldier-lost-his-shoe-near-hadrians-wall-2000-years-ago/]
本記事は、海外の記事を基に、日本の読者向けに独自の視点で情報を再整理・編集しています。