自己中心的で他社員に意地悪だが計算高く仕事をこなす「有害社員」が会社全体に与える損失(アメリカのケース)

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 有害社員(Toxic Workers)とは、「組織の財産や人に対して有害な行動を行う従業員」と定義されている。

 会社の方針などまったく気にせず、仲間と良好な人間関係を築こうせず、隙あらば上げ足をとる自己中心的で意地悪な社員のことを意味する。
だが、計算高いが故に、有能だったりする。

 2014年に発表されたハーバード・ビジネス・スクールの研究論文では、彼らが会社や組織に与える影響について調査している。

 会社全体で考えると、彼らを雇うことでどのような損失がどれくらいでるのだろう?なおこの研究はアメリカ国内をモデルにしたものだ。

【有害社員は従業員のやる気をそぐ】

 その研究から窺えるのは、有害社員のために、他の社員の勤務期間は短くなり、離職率が上がるということだ。

 このために人員を大勢補充しなければならなくなり、おかげで教育コストもかかるし、周囲の人の生産性まで低下してしまう。

 しかも困ったことに有害社員は感染力があり、それ以外の人たちも似たような有害行動をとる危険性が高くなるのである。

 それによる損失は、はっきりと表に出なくても、確実に生じている。

 試算によれば、有害社員を回避することができれば、潜在的な訴訟費用や従業員の士気低下などが抑えられる結果として、平均約140万円ものコストを削減できるという。

【有害社員を回避する効果は、スター社員を雇う効果より高い】

 有害社員を雇わなかった場合の効果は、スター社員(生産性の上位1パーセントの人)を雇った場合の効果のじつに2倍にも上るという。

 つまり、広い意味での悪い社員を雇わない効果は、良い社員を雇う効果よりも高いということだ。

 一般に企業は、ある人が自社の社風に合っているかどうかにあまり目を向けず、有害社員かもしれない人材を雇用するという間違いを犯す。

 だが、スキルを教えることはできても、誠実さといったものは人の本質であり、教えられないということにもっと意識を向けるべきなのである。


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【生産性か? 有害さか?】

 ハーバードの研究では、意外にも有害社員が平均的な従業員よりも生産的(有能)であるという証拠が得られている。

 スポーツ界では、ロッカールームや私的な場で問題を起こしたりしているのに、成績のいいスター選手であるために、チームから大目に見てもらっているというケースがままある。

 有害社員のケースもこれと同じだ。有害であっても、生産性がそれなりに高いために組織から追い出されずに済むことが多いのである。

 有害行為のせいでチーム全体のやる気が低下していたとしても、満足のいく数字を出している社員を解雇できる経営者はそう多くはないだろう。

【だが、支払わねばならない代償は高い】

 有害社員の生産性の高さを突きつけられたハーバードの研究者は、生産性の高さによるプラスと有害さのマイナスのトレードオフをしっかり検証することにした。

 そして判明したのは、有害社員を避けることは、純収益性の点で組織にとって望ましいということだ。

 なにしろ有害社員を避けられれば、平均的な従業員をスター社員に置き換えるよりも、ずっと広い範囲でパフォーマンスの向上を期待できるくらいだ。

 一方、経営者が有害社員の悪行を大目に見ていると、それが従業員に誤ったサインを与えてしまう。

 有害行為が見逃されるために、そこで働く人たちは悪いことをしても咎められないという意識を持ってしまい、いっそう有害な環境が形成されてしまうのだ。

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【有害社員にはどう対応するべきか?】

 明らかに一番いいのは、有害社員を雇わないことだ。だが、もし雇ってしまったのなら、解雇するか、隔離するのがいい。


 どうしても、有害社員の高いパフォーマンスが諦められないというならば、その有害行為を認識した上で、その社員が本当に得意なことだけをやらせ、ほかの従業員から隔離することだ。

 それでも物には限度というものがある。にもかかわらず、有能な有害社員をクビにするのが怖いという経営者は多い。

 こんな事例がある。

 アメリカのある鉄工所に、非常に有能だが、有害行為を働く社員がいた。

 経営者は、長年その人物を教育しようと試みてきたが、ついにほかの社員たちが、その人物を避けるためにお昼休みの時間を変えてしまうくらいまで状況が悪化した。

 経営者はついにその有害社員を解雇せざるを得なかった。

 するとどうだろう。一ヶ月もすると作業者の時間あたりの出荷単価が4割も向上し、以前よりも経営状態が上向いたという。

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 雇用者も人であり、従業員もまた人だ。

 雇用者は従業員の立場になって考え、従業員は雇用者の立場になって考えることができれば、組織としての在り方が見えてくる。

 職種にもよるかもしれないが、組織にもチームプレーが要求される。
有能でも有害な社員は結果的には雇用者にとっても従業員にとっても良い影響をもたらさない。

 また、有害でも有能な社員なら、組織にいるよりも自分で事業を起こしたら成功する可能性もあるかもしれない。

References:Toxic Workers Are More Productive, But the Price Is High - TLNT/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:自己中心的で他社員に意地悪だが計算高く仕事をこなす「有害社員」が会社全体に与える損失(アメリカのケース) http://karapaia.com/archives/52271427.html
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