便微生物移植で自閉症スペクトラム障害の子供の症状が緩和されていることを確認(米研究)

photo by istock
 2年前、18人の自閉症スペクトラム障害(ASD)の子供がある実験的な治療を受けることになった――糞便を移植するのだ。そして2年後、ASDの症状が45パーセント減少していたことが判明した。


 今回発表されたフォローアップ研究によれば、便微生物移植によって自閉症と胃腸系の症状が劇的に改善したという。

 アメリカ・アリゾナ大学のローザ・クラジュマルニク・ブラウン教授が言うように、「2年経ってもなお、調子のいいまま」なのだから驚きだ。
【神経と腸内細菌との不思議な関係】

 神経の発達とお腹の中の細菌とにつながりがあるとは直感的には理解しにくいが、腸内細菌と健康や行動とに関連性があることはいくつもの研究で示されている。

・腸と脳をつなぐミッシングリンクを発見か?腸に神経伝達物質の存在が示唆される(米研究) : カラパイア
 
 腸内細菌が豊富な健康な人の便を、乏しい人に移植してしまおうというこの発想に、医療の専門家が関心を示しているのはこのためだ。
 
 そして認知機能の低下から肥満やスーパー耐性菌への対処にまで便微生物移植が試されてきた。なんと、便微生物移植によってプロの自転車選手になれるという研究結果まであるくらいだ。

[画像を見る]
photo by istock
【子供に便微生物移植し、2年後の経過を観察】

 今回の研究は、2年前に実施された自閉症スペクトラム障害(ASD)の子供18名への便微生物移植の経過観察である。

 そのときの便微生物移植は、2週間の抗生物質の投与、腸内洗浄、糞便の細菌移植(高用量ではじめ、7、8週間かけて投与量を減らす)で構成されていた。

 治療前、ASDの子は、普通の子よりも善玉細菌(ビフィズス菌やプレボテラ菌など)が少ない傾向にあった。

 しかし、治療によって腸内細菌が増え始め、2年後が経過した現時点でも、最初の移植時点よりも腸内細菌が豊富なまま残っていることが今回の研究から明らかになった。

 「治療が終わってからも、着実な改善が見られるのは非常に珍しいことです」と共著者のジェームズ・アダムス氏は説明する。

[画像を見る]
image credit:ASU
【2年後、ASDの症状が減少してることを確認】

 便微生物移植の結果、実験が開始された2年前の基準と比べて、ASDの症状が45パーセント減少していた。


 最初は8割以上が”重度”のASDと診断されていた子供たちだったが、2年後には17パーセントにまで低下。現時点の診察では”軽度”と”中度”が39パーセントで、44パーセントは軽度の水準にも満たなかった。

 さらにASDだけでなく、胃腸系の症状も劇的(58パーセント)に低下していた。

【サンプル数を拡大させ更なる研究が必要】

 日常生活にまで影響するほど重いASDを抱える人たちにとっては、とても有望な結果だ。

 ただし、今回の実験は、参加した子供の数がかなり少なく、プラセボを使った対照試験も行われていない。もちろん適切な移植量もまだ不明なままだ。

 間違っても自己流で他人の糞便を移植してみようなどとは思ってはいけない。その点だけは約束だ。

 この研究論文は『Scientific Reports』に掲載された。

References:Autism symptoms reduced nearly 50% 2 years after fecal transplant | ASU Now: Access, Excellence, Impact/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:便微生物移植で自閉症スペクトラム障害の子供の症状が緩和されていることを確認(米研究) http://karapaia.com/archives/52273117.html
編集部おすすめ