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羽音を唸らせながら接近してくる黄色と黒の警戒色。それを見れば、軽いパニックに陥るはずだ。
信号機だって黄色は注意の意味だもの。
あいにく、この新しい研究を知ってもそれに対する恐怖心は薄れないだろう。それどころか、畏敬の念すら抱くことになるかもしれない。
アシナガバチに論理的な思考ができることが明らかになりつつあるのだ。
【アシナガバチは危険な色を推測できるか?】
アメリカ・ミシガン大学の研究者はこんな実験を行ってみた。
40匹のアシナガバチ(Polistes dominulaとPolistes metricus)を四角い箱に入れる。
その箱は、端のそれぞれが5色のうちの1色で塗られており(便宜上、各色にはAからEまでのラベルが貼られている)、「AとB」「BとC」「CとD」「DとE」の色の組み合わせがある。
各ペアの後者の色には電気ショックが仕掛けられている。たとえば、BとCの箱ならCの下に電気ショックがある。
こうすることで、アシナガバチにどの色が「いい色」なのか学習させるのだ。青は緑よりもいい色で、緑は紫よりもいい色だ。
さて、ここで問題。
はたして、アシナガバチは青が紫よりもいい色であることを理解できるだろうか?
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【アシナガバチによる推移的推論】
これを調べるために、今度はアシナガバチを「BとD」ならびに「AとE」の組み合わせの箱に入れた。電気ショックを避けるには、安全なBかAの色を選ばなければならない。
その結果、BとDの箱では、65パーセント以上がBを選んだのである。またAとEのペアでも同様の結果だった(ただし、Eは常に電気ショックがあるので、こちらはより簡単な問題)。
確率上、この結果はただの偶然によるものではない。
これは「推移的推論」と呼ばれるタイプの論理的思考で、独立した2つの情報から結論を導く能力を示すものだ。
アシナガバチは、Aがある場合はBから、Cがある場合はDから電気ショックを受けることを知っていた。しかし、Bがある場合にDからショックを受けるだろうことは、これまでの経験から推測しなければならない。それを見事やってのけたのだ。
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【無脊椎動物では初。階級社会に鍵が?】
今回の研究は、無脊椎動物がこうした論理的な推論を行えることを示した初めてのものだと言われている。
アシナガバチがこうした能力を備えるにいたった理由は、もしかすると彼らが階級社会に生きていることと関係があるかもしれない。
彼らの社会では、誰が支配的な立場にあるのか把握できなければならないからだ。
じつはアシナガバチについては、過去にも驚嘆すべき能力が確認されている。彼らは、ほかの仲間の顔を認識して、あとで会ったときにきちんと見分けられるのである。
だが、もしかしたら、こうしたことにいちいち驚愕するのも、ほかの生物を下等と見下してしまいがちな、人間の傲慢というものなのかもしれない。
人間は考える葦である。そしてアシナガバチも考える葦なのだ。
この研究は『Royal Society Biology Letters』に掲載された。
References:newscientist/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:無脊椎動物で初。アシナガバチは論理的な思考ができることが確認される(米研究) http://karapaia.com/archives/52274349.html
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