
植物は光エネルギーを使って水と空気中の二酸化炭素を吸収し、酸素を排出する。ご存じの通りこれは光合成と呼ばれるものだ。
人為的な二酸化炭素排出による自然環境破壊という問題に、人類は今取り組んでいるわけだが、スイスのチューリッヒ工科大学の生態学者とそのチームが、新たな研究結果を発表した。
この地球上に新たに1兆2,000億本の木々を植えると、人間が人為的に排出する10年間分のCO2排出量が木に吸収されるというのだ。
【地球温暖化により気候変動が加速している】
生態学者トーマス・クロウサー博士は、これまでの研究で世界の炭素の多くが北極圏もしくは亜寒帯地域に存在していることを発表していた。
今回の研究では、地球温暖化により土壌が温まると、特にこれら高緯度の地域の土壌からのCO2排出量が増加し、それが放出されると気候変動を17%加速させる可能性があると明らかにした。
このままでは、温暖化が2050年までに上層地平線から55ギガトンの炭素の損失を生じさせることになるという。
そこでこの問題の解決策として、1兆2,000億本の植樹活動を提案したのだ。
[画像を見る]
kanenori miura / Pixabay
【植林は気候変動との闘いにおいて、最も強力な武器】
今年、ワシントンD.C.で開催されたアメリカ科学振興協会で、クロウサー博士はチーム一同が取り組んだ研究を発表した。
世界中の120万か所におよぶ地域から、森林目録データと衛星画像を組み合わせて調査を行ったチームは、現在の地球上には3兆本の木があると見積もった。これは、過去の見積もりデータの7倍になるそうだ。
このように地上と地下の双方のデータを使用することで、チームは多様な生態系保全を考慮しながら、植樹活動のために優先度の高い地域を特定できるというわけだ。
またチームは、都市や農地を含まない何百万エーカーもの放置されたスペースがあることも発見した。
[画像を見る]
Pixabay
この地球上には、公園や森林、廃棄された土地など植樹できるスペースはまだ十分にあります。
木は気候変動との闘いにおいて最も強力な武器であり、植樹活動は温室効果ガスの削減には最も効果的な方法の1つだといえます。
3兆本の木には、400ギガトンのCO2が貯まっています。もし1兆2,000億本の植樹が叶えば、大気から何百ギガトンというCO2が吸収されることになります。
つまり、新たに植樹される木々は、毎年人間が排出するCO2量よりも多くの炭素を吸収し、人為的に排出されるCO2の少なくとも10年分が相殺されるほどの貯蔵庫になるのです。(クロウサー博士)
【国連も植樹キャンペーンを開催中】
[画像を見る]
Sven Lachmann / Pixabay
近年、植樹活動は地球温暖化防止を促進するため、そして地球上の命を守るための重要な活動として認識されている。
国連では、既に「10億本植樹キャンペーン」を行っていたが、クロウサー博士の発表を受け「1兆本植樹キャンペーン」に変更し、これまで世界中に140億本近くの植樹に成功している。
また、オーストラリアは、パリ協定での目標を達成するための努力の一環として、2050年前に更に10億本の木を植える計画を発表した。
[画像を見る]
Johannes Plenio / Pixabay
クロウサー博士は、「都市に木があると、環境が改善されて人々を幸せにします。また、大気汚染や水質汚染、食品品質、更には生態系のバランス改善など自然に多くの利益を生み出してくれます。植樹活動は、シンプルかつ具体的で誰でも参加できる取り組みなのです」と語っている。
References:Planting 1.2 Trillion Trees Could Cancel Out a Decade of CO2 Emissions, Scientists Find - Yale E360/ written by Scarlet / edited by parumo
記事全文はこちら:1兆2000億本の木を植えることで人間が排出する二酸化炭素を10年分吸収してくれる(スイス研究) http://karapaia.com/archives/52274559.html
編集部おすすめ