
ネットニュースを見る人にありがちな誤解 Tero Vesalainen/iStock
今やニュースはネットで見るという人も多いだろう。ポータルサイトはもちろんSNSにも最新の情報が大量に流れてくる。
SNSに流れてくるようなネットニュースのタイトルの文字数は限られている。さらに冒頭の序文は、本文に導入するための要約であり、詳しいことはわからない。
そのため、本文をしっかり最後まで読まないと正しい知識は得られない記事も多い。中には本文最後に一番重要なことが書いてあるものもある。
だが、ネットニュースを読む人の多くは、タイトルや要約文だけしか読んでないのに、全て完璧に知識を得たと思い込む傾向にあるようだ。
『Research and Politics』に掲載された新しい研究によると、フェイスブックのニュースフィードを断片的にしか読まないで、わかったつもりになっている人が結構いるらしい。
断片的な情報だけでは正しい理解はほとんど得られない アメリカ・ペンシルベニア大学などの研究者は、およそ1000名の被験者を3つのグループにわけて、あるニュース記事を読んで学んだ知識の量と被験者が学んだと思っている知識の量を測定するという実験を行なった。
第一のグループ(320名)は、ワシントンポスト紙に掲載された遺伝子組み替え食品(GM食品)についての完全なニュース記事を読んだ。
第二のグループ(319名)は、Facebookのニュースフィードに表示される4本の記事の序文・要約(うち1本は第一グループが読んだGM食品のニュース)を読んだ。
第三のグールプ(351名)には、何の情報も与えられなかった。
ニュースの読了後、GM食品についての知識を評価するために、被験者に質問を6つ尋ねた。なお、ニュース記事にはそれらのうち5つ、ニュースフィードには3つが説明されていた。
また被験者それぞれの自信の程度を把握するために、自分が何問正解していると思うかも答えてもらい、さらに、それぞれの認知の傾向を把握するアンケートにも答えてもらった。
[画像を見る]
pixabay
序文・要約だけで完璧に理解したと思い込む謎の自信 一番正解率が高かったのは、完全なニュース記事をきちんと読んだ第一のグループだった。この結果に特に驚きはないだろう。
意外だったのは、ニュースフィードで序文・要約を読んだ第二グループだ。このグループは何も読まなかった第三グループよりもかろうじて1問正解が多いだけだった。つまり第二グループの人たちは、そこからあまり学ばなかったということだ。
それなのに、第二グループは、なぜだかやたらと自分たちの知識に自信を見せていた。なお、このことは、認知の傾向が感情的な人の場合、特に強く当てはまっていた。実際の正しさよりも正しいと感じることの方が満足度を得られる この結果が示しているのは、被験者は強い本能的・直感的反応を示すことがあり、そうした場合、その反応について疑問を抱くことが少ないということだ。
つまり、多くの人にとっては、実際に正しいことよりも、正しいと感じられることの方が満足できるということなのだ。そうすると歪んだ正義感が産まれることになる。
研究論文にはこうある。
人を偽情報に騙されやすくさせるだけでなく、政治を含むさまざまな事柄について極端で偏った意見を持ちやすくさせる懸念があるからだ。
たとえば、今日アメリカ人の67%がSNSでニュースを読んでいるそうだ。FacebookやX(旧Twitter)のような場はそれだけ重要な情報源ということなのだが、では相互理解の場であると言えるだろうか?
今回の研究は、そうではない可能性を示唆している。
平均的なFacebookのユーザーは、フィードに流れてきた政治ニュースの7%しかクリックしていない。
ということは、ほとんどの場合、ユーザーはFacebookに表示される序文だけの情報の断片しか目にしていないのだ。それが自分の理解レベルを過信させることは、ここで述べたとおりだ。
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iStock
あなたの意見は本当に正しい?記事をきちんと全部読もう 今やネット上では様々なニュースを手軽に見ることができ、匿名でコメントできる。タイトルと序文を読んだだけで、辛辣な意見を書き込む人も多い。
もちろん不正や過ちに対して声を上げるのは必要なことだ。
疑問に思うことがあれば直ぐに調べることもできる。同じ内容を扱った記事を探すこともできる。また科学系の記事は論文のリンク先が貼られているサイトもある。大多数の意見に誘導されず、自分の目で確かめよう。
人はだれでも過ちを犯す。そういう風にできている、その中には必ず自分も含まれている。早とちりやミスリードで恥ずかしい思いをする前に、何か意見を表明する時には、きっちりと全文読むことにしよう。そう、私も日々反省しつつ過ちを少なくするように努めなくては。
◆追記(2020/07/11)この記事は2019年6月に投稿したものを再送してお届けしております。
References:Didn't Read The Article Before Commenting? Science Says It Really Shows/ written by hiroching / edited by parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
今やニュースはネットで見るという人も多いだろう。ポータルサイトはもちろんSNSにも最新の情報が大量に流れてくる。
SNSに流れてくるようなネットニュースのタイトルの文字数は限られている。さらに冒頭の序文は、本文に導入するための要約であり、詳しいことはわからない。
そのため、本文をしっかり最後まで読まないと正しい知識は得られない記事も多い。中には本文最後に一番重要なことが書いてあるものもある。
だが、ネットニュースを読む人の多くは、タイトルや要約文だけしか読んでないのに、全て完璧に知識を得たと思い込む傾向にあるようだ。
『Research and Politics』に掲載された新しい研究によると、フェイスブックのニュースフィードを断片的にしか読まないで、わかったつもりになっている人が結構いるらしい。
断片的な情報だけでは正しい理解はほとんど得られない アメリカ・ペンシルベニア大学などの研究者は、およそ1000名の被験者を3つのグループにわけて、あるニュース記事を読んで学んだ知識の量と被験者が学んだと思っている知識の量を測定するという実験を行なった。
第一のグループ(320名)は、ワシントンポスト紙に掲載された遺伝子組み替え食品(GM食品)についての完全なニュース記事を読んだ。
第二のグループ(319名)は、Facebookのニュースフィードに表示される4本の記事の序文・要約(うち1本は第一グループが読んだGM食品のニュース)を読んだ。
第三のグールプ(351名)には、何の情報も与えられなかった。
ニュースの読了後、GM食品についての知識を評価するために、被験者に質問を6つ尋ねた。なお、ニュース記事にはそれらのうち5つ、ニュースフィードには3つが説明されていた。
また被験者それぞれの自信の程度を把握するために、自分が何問正解していると思うかも答えてもらい、さらに、それぞれの認知の傾向を把握するアンケートにも答えてもらった。
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pixabay
序文・要約だけで完璧に理解したと思い込む謎の自信 一番正解率が高かったのは、完全なニュース記事をきちんと読んだ第一のグループだった。この結果に特に驚きはないだろう。
意外だったのは、ニュースフィードで序文・要約を読んだ第二グループだ。このグループは何も読まなかった第三グループよりもかろうじて1問正解が多いだけだった。つまり第二グループの人たちは、そこからあまり学ばなかったということだ。
それなのに、第二グループは、なぜだかやたらと自分たちの知識に自信を見せていた。なお、このことは、認知の傾向が感情的な人の場合、特に強く当てはまっていた。実際の正しさよりも正しいと感じることの方が満足度を得られる この結果が示しているのは、被験者は強い本能的・直感的反応を示すことがあり、そうした場合、その反応について疑問を抱くことが少ないということだ。
つまり、多くの人にとっては、実際に正しいことよりも、正しいと感じられることの方が満足できるということなのだ。そうすると歪んだ正義感が産まれることになる。
研究論文にはこうある。
感情的に反応する人ほど、正しいと感じることでポジティブな気分を味わい、それはきちんと正確に認識しようという欲求を上回ってしまう。本文を全部読まないと偽情報に騙され、歪んだ正義感を持つように 残念ながら、この間違った自信は深刻な影響を及ぼすかもしれない。
したがって情報に断片的に触れただけで終わりにしてしまうと、その話題に関する自分の知識について不当なまでに大きな自信を抱くことになる。
人を偽情報に騙されやすくさせるだけでなく、政治を含むさまざまな事柄について極端で偏った意見を持ちやすくさせる懸念があるからだ。
たとえば、今日アメリカ人の67%がSNSでニュースを読んでいるそうだ。FacebookやX(旧Twitter)のような場はそれだけ重要な情報源ということなのだが、では相互理解の場であると言えるだろうか?
今回の研究は、そうではない可能性を示唆している。
平均的なFacebookのユーザーは、フィードに流れてきた政治ニュースの7%しかクリックしていない。
ということは、ほとんどの場合、ユーザーはFacebookに表示される序文だけの情報の断片しか目にしていないのだ。それが自分の理解レベルを過信させることは、ここで述べたとおりだ。
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あなたの意見は本当に正しい?記事をきちんと全部読もう 今やネット上では様々なニュースを手軽に見ることができ、匿名でコメントできる。タイトルと序文を読んだだけで、辛辣な意見を書き込む人も多い。
もちろん不正や過ちに対して声を上げるのは必要なことだ。
でも、自分の意見を書き込む前にまずは本文を最後までしっかり読んでみよう。
疑問に思うことがあれば直ぐに調べることもできる。同じ内容を扱った記事を探すこともできる。また科学系の記事は論文のリンク先が貼られているサイトもある。大多数の意見に誘導されず、自分の目で確かめよう。
人はだれでも過ちを犯す。そういう風にできている、その中には必ず自分も含まれている。早とちりやミスリードで恥ずかしい思いをする前に、何か意見を表明する時には、きっちりと全文読むことにしよう。そう、私も日々反省しつつ過ちを少なくするように努めなくては。
◆追記(2020/07/11)この記事は2019年6月に投稿したものを再送してお届けしております。
References:Didn't Read The Article Before Commenting? Science Says It Really Shows/ written by hiroching / edited by parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
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