ツングースカ大爆発に関する新たなる研究。このような大規模な爆発は数千年に一度

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 1908年6月30日、現、ロシア連邦クラスノヤルスク地方(シベリア)上空で隕石による大規模な爆発が起きた。今から111年前のことだ。
強烈な爆風で半径30~50キロの森林が焼き尽くされるほど凄まじいものだった。

 詳細については今もなお不明な点が多いのだが、『Icarus』(7月15日付)に掲載された一連の研究論文では、2013年2月のチェリャビンスク隕石のデータを基にして、100年前の大爆発について新たな分析を行っている。

 それによると、このような大爆発の頻度は、これまで考えられているよりも低く、数千年に一度くらいの割合であることがわかったそうだ。
【世界中の地震計が観測するほどの衝撃だったツングースカ大爆発】

 ツングースカ大爆発の衝撃は世界中の地震計で観測されており、場所によってはマグニチュード5にも達した。しかし人口のまばらな地域だったこともあり、目撃者はあまりいない。

 少数のロシア人入植者やエヴェンキ族の証言によると、空を光の筋が横切り、続いて閃光が見え、衝撃波をともなう大きな音がしたという。

 「突然、森の上の空が二つに割れたように見えて、北の空全体が燃え盛る炎に覆い尽くされたかのようだった」とある農民は回想する。

 彼は爆発地点から64キロ北で朝食をとっていた。「その瞬間、凄まじい熱波を感じて、シャツに火がついたかと思った」という。その衝撃波で椅子から転げ落ちたそうだ。

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Tunguska Explosion 30 July 1908

【半径8キロの範囲の木々がなぎ倒されていた】

 爆発地点はきわめて辺鄙なところだったので、調査の手が入ったのはそれから10年以上が経過してのことだ。1927年、ようやくロシアの鉱物学者レオニード・クーリックが科学的調査に乗り出した。


 エヴェンキ族のガイドは、爆発は雷の神アグダの天罰と信じていたらしいが、クーリックは隕石が原因だと確信していた。それなのに不思議なことに衝突クレーターはどこにも見当たらなかった。かわりに半径8キロの範囲の木々がなぎ倒された状態で焼けていた。

 クーリックは計3回の調査を行い、その間に深い穴のような小さな沼も見つかっている。衝突クレーターではと疑われたが、水を吸い出してみると、その底から古い切り株が見つかり、クレーター説は否定された。

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Не указан в первоисточнике, неизвестен./wikimedia
【原因は小惑星のような天体】

 ツングースカ大爆発の原因については数十年間議論が続けられ、最終的には2つにまで絞り込まれた。

 1934年、イギリスの天文学者F・J・W・ウィップルは、彗星がシベリア上空の大気で爆発したことが原因と主張。衝突から数日間一帯の夜空が輝いたことを取り上げて、彗星の尾に見られるチリや粒子の証拠であると述べた。

 ただし、これについては、そのような浅い角度で進入した彗星なら、地球大気の低いところに到達する前にバラバラになってしまっただろうと反論がなされている。

 現在支持される見解は、小惑星のような天体だろうというものだ。

 軌道をモデル化した結果、83パーセントの確率でツングースカの隕石は小惑星のような軌道をたどったと考えられ、その出所については小惑星帯からやってきた可能性があると結論づけられている。

 なお現地で見つかった破片や周辺の木々から採取された樹脂の分析からは、一般に岩石の小惑星で見られる物質が高い濃度で発見された。
またクレーターが存在しないのは、地上に激突する前に分解してしまったからだと推測されている。

【ツングースカとチェリャビンスク隕石事件】

 2013年、ロシアのチェリャビンスクでも同じような隕石爆発が発生。爆発の衝撃波によって窓ガラスが割れるなど建物に損害が発生し、さらに1600人ものけが人が出た大変な事件だったのだが、ツングースカとは違い、このときは最新の観測機器でモニタリングされ、しかも目撃者もたくさんいる。

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 NASAで惑星防衛を担当するリンドレー・ジョンソンは、これを「宇宙の目覚まし」と呼び、大型の小惑星を発見し、地球への衝突を未然に防ぐ体制の充実を主張した。

 NASAはこれに応じ、シリコンバレーのエイムズ研究センターで『天文学上の未解決事件、1908年ツングースカ大爆発を再調査する』と題されたワークショップを開催。今回発表された論文はこのときに論じられたものだ。

 チェリャビンスクの火球の動画と一帯の地図をコンピューターモデルに組み込んだ結果、チェリャビンスクの隕石は、5階建てのビルくらいの大きさを持つ石質の小惑星で、地上24キロの上空で爆発した可能性がもっとも濃厚であると予測された。それによる衝撃波は、550キロトンの核爆発に匹敵する。

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360° Video: Chelyabinsk Meteor | California Academy of Sciences

 この結果をさらに当時の記録で補足して考えると、ツングースカの隕石はおそらく岩石(氷ではない)で直径は50~80メートル、時速5万4700キロで大気に突入した可能性が高い。

 その威力はチェリャビンスクを上回り、大型の活火山セント・へレンズ山の噴火1980回相当のエネルギーを生み出したろうという。

【ツングースカ級は数千年に一度飛来】

 このモデルに、最新の小惑星の数のデータを加えることで、こうした爆発現象が発生する頻度も試算された。

 その結果は朗報と言えるだろう。
幸いにもツングースカ大爆発を起こすような中サイズの岩石天体が地球に飛来する頻度は、これまで考えられていたよりも低く、数百年ではなく、数千年に一度くらいのものであるそうだ。

 とはいえ、こうした現象が観察されたケースは数少なく、それがどのように分解し、地上にどのような被害をもたらすのか、不確定なことがたくさんある。

 あくまでも確率の問題で、次が数千年後であるという保証もない。NASAは地球に衝突する可能性がある小惑星を検出するシステムの改善を約束しているという。

References:New research on Tunguska finds such events happen less often than we thought/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:ツングースカ大爆発に関する新たなる研究。このような大規模な爆発は数千年に一度 http://karapaia.com/archives/52277354.html
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