キューバの大使館で働く外交官の脳が構造的に変化するという謎の症状。やはり音響攻撃によるものなのか?

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 その事件は2016年末から始まった。キューバの首都ハバナにある大使館で働くアメリカやカナダの外交官たちが、次々と原因不明の健康上の被害を訴え始めた。


 彼らによると、自宅やホテルで耳をつんざくような高音のノイズを聞いてから、頭痛、めまい、混乱といった症状が現れるようになったという。

 2017年にはキューバにある大使館の職員が半分以上にまで削減されるほどの深刻な事態となった。その原因は音響攻撃によるものだと言われているが、いまだに正確には分かっていない。ただし今回の報告で、彼らの脳が構造的に変化していた事実が明らかとなった。
【ハバナ症候群による国際的緊張の高まり】

 この謎の症状は「ハバナ症候群」と呼ばれている。

 現時点では何が原因なのか不明だが、そのせいで2017年には大使館の職員が半分以上にまで削減されるほどの深刻なものだ。

 さらにワシントンからはキューバの外交官2名が追放され、トランプ大統領が責任はキューバ側にあると発言。カナダの外交官5名は損害賠償を求めて訴訟を起こすなど、事態はエスカレートしている。

 一連の事件に関連し、国務省の担当者が「超音波アタック」や「指向性の現象」といったことに言及しており、キューバ政府が超音波兵器で攻撃を仕掛けているという噂まである。

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How an Alleged Sonic Attack Shaped U.S. Policy on Cuba | Times Documentaries

【脳に構造的な変化が生じていることが判明】

 今回、ペンシルバニア大学の研究チームがハバナ症候群にかかった外交官たちの脳をMRIでスキャンしてみたところ、重大な構造的変化が生じていることが判明した。

 『Journal of the American Medical Association』に掲載された研究では、症状を訴える40名の外交官の脳をMRIで詳細にスキャンし、それを年齢や学歴・職歴などが似ている健康な人の脳と比較した。

 その結果、外交官の白質(学習を担う中枢神経系の領域)の全体的なボリュームが5パーセント小さいことがわかった。
さらに聴覚ネットワークの機能的な結合がおよそ15パーセント低下していた。

 ハバナ症候群は精神的なものであると主張する専門家もいたが、少なくとも確かにその原因となる物理的な変化はあったわけである。

【見たこともない謎の症状】

 アメリカ・ペンシルベニア大学のダグラス・スミス医師は、こうした患者で発見された脳の変化を「電圧の低下」に例え、次のように話している。

まったく未知の変化です。初めて見るもので、とても興味深いです。その正体が何なのかはっきりとはわかりませんが、何かが起きているようです。

 スミス医師によると、患者の中には回復した人もいるが、未だに謎の症状で苦しみ続けている患者もいるという。

【コオロギの鳴き声説も】

 超音波兵器が使われているという説は、2017年にアメリカの職員によってキーンと鳴る高音ノイズが録音され、それがマスコミによって報じられたことで広まるようになった。

高音ノイズを録音した動画
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Recordings Reveal What Americans Heard During 'Sonic Attacks' in Cuba: Report

 しかし今年初めに発表された分析では、高音のノイズはコオロギの鳴き声であることが明らかにされている。

 なお、キューバ政府はこの事件への関与を一貫して否定している。

References:US diplomats' brains were shrunk by sonic attacks at Cuban embassy, study finds

記事全文はこちら:キューバの大使館で働く外交官の脳が構造的に変化するという謎の症状。やはり音響攻撃によるものなのか? http://karapaia.com/archives/52277418.html
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