赤ワインに含まれる化合物がうつ病や不安神経症の新治療の扉を開く(中国研究)

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 最近では飲酒のリスクに関しての研究結果が数多く報告されているのも事実だが、アルコール以外の成分に着目してみると、健康効果が見込めるものもあるようだ。

 赤ワインに豊富に含まれている「レスベラトロール」という植物由来の化合物には抗うつ作用があることが判明したそうだ。

【赤ワインの健康物質レスベラトロール】

 レスベラトロールはぶどうやベリーの皮や種に含まれるポリフェノールの一種で、抗酸化作用があり、動脈硬化を予防するなど、さまざまな健康効果があることで知られている。抗うつ効果もそのひとつだ。

 しかしレスベラトロールとホスホジエステラーゼ4(PDE4/ストレスホルモンのコルチコステロンによって影響される酵素)との関係がわかっておらず、そのことが新薬の開発を難しいものにしていた。

 『Neuropharmacology』(2019年7月15日付)に掲載された中国、徐州医学大学の研究チームの研究では、その神経学的な関係を明らかにしている。

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【レスベラトロールによりPDE4の発現を抑制】

 コルチコステロンは体のストレスへの反応を調整する。しかし、あまりに多くのストレスを受けると、脳に過剰なコルチコステロンが流れてしまい、やがてはうつ病などの精神疾患を発症させてしまう諸刃の剣だ。

 マウスを使った実験で、過剰なコルチコステロンによって誘発されたPDE4は、うつ病や不安神経症的な行動を生じさせることが明らかになった。

 PDE4によって環状アデノシンーリン酸(細胞の分裂・変化・移動・死といった生理学的変化の信号を出すメッセンジャー分子)が減少し、脳内の物理的な変化を引き起こしていたのだ。

 だがレスベラトロールはPDE4の発現を阻害することができた。これがコルチコステロンに対する神経防護作用となり、抗うつ効果を発揮していたのだ。

【うつ病の新薬開発の礎に】

 既存の抗うつ剤は脳内にあるセロトニンやノルアドレナリンに作用するが、これで症状が完全に治るのは3分の1の患者だけだ。
 
 今回の発見が新しい抗うつ薬開発につながれば、従来の薬が効かなかった患者たちの苦しみも癒すことができるかもしれない。


 これは赤ワインをガブガブ飲めばいいという話ではない。飲酒がもたらすリスクはもはや常識となっている。レスベラトロールを抽出したアルコール成分のない新薬が開発されるまで待つことにしよう、そうしよう。

References:Compound found in red wine opens door for new treatments for depression, anxiety | EurekAlert! Science News/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:赤ワインに含まれる化合物がうつ病や不安神経症の新治療の扉を開く(中国研究) http://karapaia.com/archives/52277710.html
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