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世界最速の鳥として知られている猛禽類のハヤブサ。ハヤブサという和名は「速い翼」が転じたと考えられている。
遠方にいる獲物を捕らえる時には、時速386kmものスピードで急降下することができるという。
ダイナミックに空中を大きく回転しながらハイスピードで飛行する姿は、まさに“羽根のついた戦闘機”と呼ばれるにふさわしい。
これほどまでにスピードが出せる理由はなんなのか?
今回は、その速さの秘密に迫ってみよう。
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Peregrine Falcons are Feathered Fighter Jets, Basically
【優れた視力で遠方の獲物を発見】
ハヤブサは通常の水平飛行の速度は100km前後、獲物を見つけて急降落下するときには、時速386kmもの速さとなる。
しかし、そもそも遠方にいる獲物を見るには、優れた視力が必要となる。大きな目を持つハヤブサの視力は、私たち人間の2倍ほどで、中心窩(ちゅうしんか)が2つあるという。
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人間の場合、高繊細な中心視野を助ける役割をする、中心窩と呼ばれる重要な部分が目の奥にあるが、ハヤブサには目の奥と目の脇部分に2か所の中心窩があり、それが高スピードでの飛行中に奥行間隔を助ける役目を担っている。
【目の上の隆起が小さい=飛行スピードを妨げない】
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他のタカ類には、目の上にひさしのように突出した部分があり、それが太陽の光を遮る役目を果たしているが、これがあることにより飛行スピードに影響が出る。
しかしハヤブサの場合、その隆起部分が非常に小さいため、飛行スピードが落ちることなく、他のどの鳥よりも速く飛ぶことができるのだ。
その代わり、ハヤブサの目の下は黒い。これはちょうどスポーツ選手が目の下に黒いペイントを塗るのと同じで、太陽光の反射から目を守る手助けとなっている。
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【羽根が固く翼はコンパクト】
ハヤブサが、世界最速の鳥と言われる理由の1つに大きく関係しているのが、翼のサイズとアングルだ。
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フクロウ(写真中央)やタカ(写真下)の翼と比較すると、ハヤブサ(写真上)の翼はよりコンパクトで斜めになっている。また、1枚1枚の羽根も固く長い。これらは、ハヤブサが速くスムーズに飛ぶことができるサポート的役割を果たしている。
【高速飛行時の呼吸を助ける鼻の骨】
ハヤブサの鼻の中には、結節と呼ばれる小さな骨がある。空中での高速飛行は、空圧も高く肺に大きな圧力がかかり、窒息の可能性もあり得る。それを防ぐのが、この結節だ。
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これがあることで、空中飛行時に吸った空気が肺に届く前にスローダウンし、窒息を防いでいるのだ。
【獲物を仕留める2つの武器】
一旦、攻撃された獲物が地面に落ちると、ハヤブサは長く鋭い爪を使って獲物を捕食する。しかしもう1つの武器は、くちばし上部にある歯状の突起部分だ。
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爪だけで獲物が仕留められない場合は、この突き出た個所を使って獲物の首に噛みつく。
【絶滅の危機に瀕していた過去】
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実はこの美しいハヤブサは、50年ほど前にはアメリカで絶滅の危機に晒されていた。
有機塩素系の殺虫剤・農薬(DDT)などの普及により、ハヤブサの在来種が絶滅寸前に陥ったのだ。
1970年には、米カリフォルニア州のハヤブサの個体数は激減。州全体で、たった2羽のペアが生存しているのみとなってしまった。
そこで、連邦政府は1972年にDDTを禁止。更に、ハヤブサ保護のための非営利団体らが率先してハヤブサの個体数の回復に尽力した。その努力でなんとか絶滅は免れ、1999年になる頃には連邦の絶滅危惧種リストから削除されるまでになった。
最近の調査では、カリフォルニア州には現在300~350のペアが巣作りしており、全米で2400を超えるペアが生息していると推定されている。
特にカナダとアメリカでは、繁殖プログラムによって毎年個体数を増やすことにも成功しており、現在では、この両国を含む世界の数か所で、ハヤブサの生息数が70年代の減少以前の数よりも増加しているとのことだ。
References:boingboing.netなど / written by Scarlet / edited by parumo
記事全文はこちら:時速386km!ものすごいスピードで急降下する猛禽類、ハヤブサにズームイン! http://karapaia.com/archives/52278577.html
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