仲良しグループが集まってわいわいガヤガヤ。まるで人間のようなマンタの生態が明らかに(オーストラリア研究)


 マントを羽織っているかのような大きな体が優雅でかっこいいマンタ。水族館ではもちろん、毒針がないことから海のダイバーたちにも親しまれている人気者だ。


 一匹で悠々と泳ぐのが好きなようにも見えるが、だからといって完全な一匹狼(?)というわけではないらしい。

 単独行動をする魚として知られているものの、インドネシアでの5年に渡る研究によると、マンタは我々が思っているよりも社交的であるかもしれないようだ。

 なお、「マンタ」と呼ばれるエイはオニイトマキエイ(Manta birostris)とナンヨウマンタ(Mobula alfredi)の2種類がいるらしい。

 世界最大のエイとされるオニイトマキエイはオニイトマキエイ属、ナンヨウマンタはイトマキエイ属に属し、日本近海で見られるのはほとんどがナンヨウマンタなのだとか。

 今回、研究の対象となったのはナンヨウマンタの方である。
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MANTA RAY SOCIAL RELATIONSHIPS

【社交的な生き物・マンタは友だち同士でつるんでいる可能性あり】

 ナンヨウマンタは、食事やクリーニングのために集まってきて、大きな集団をつくることが知られているが、その理由ははっきりとはわかっていなかった。

 エサ場や身を守れる同じ場所がたまたま同じなので集中して集まっているだけではないかと言われていたが、別の説明もありそうだ。

 それは、マンタ同士が互いに友だちとつるんでいるからというものだ。

 オーストラリア・マクオーリー大学の生物学者、ロブ・ペリマン氏によると

マンタの生態はほとんどわかっていないが、彼らはけっこう社会的な生き物で、互いに影響しあっていることは知られている。この相互関係が彼らが集団を構成することに重要な意味があるようだ

とのこと。

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【偶然に出くわしたわけではなくマンタ界にも仲良しグループが存在】

 インドネシアのラジャ・アンパット海洋公園で500匹以上のマンタの群れを追跡して、ペリマン氏らの研究チームは初めて彼らの社会構造の秘密を説明することができた。

 マンタたちは相手と親しくなって社会的つながりを築くだけでなく、積極的に好みの相手と仲間になろうとするらしい。


 つまり、偶然に出くわした相手と群れているのではなく、好みのマンタと積極的に友だち作りをしているようなのだ。

 マンタと3400回ほど遭遇し、600匹近くの個体を識別した記録から、同じエリア内ではっきり区別できる2種類の集団ができていることを発見した。

 ひとつは、ほとんどメスで構成されたグループ。もうひとつは、メスとオス、そして子どもが混在するグループだ。

 このふたつのグループの間には、緊密なつながりはない。少なくとも、イルカやクジラの集団のようなタイプではないが、立場の弱い者の間には強い結びつきがあるパターンもあったのだとか。

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【掃除魚のいるクリーニング場で社会的な結びつきが生まれていた】

 マンタがベラなどの小さな掃除魚に身づくろいしてもらうクリーニングの場所に、同じグループがいるのに研究者たちは何度も気がついた。

 マンタのお腹にはそれぞれその個体独特の斑紋があって見分けがつくため、研究チームは各マンタがどこで、どのマンタと一緒にいたかを記録し始めた。

 その結果、

多くの個体がひとつのクリーニング場で何度も観察されたが、ほかの場所ではまれか、まったく見られないこともあった。これはその場所に強い愛着があることを示している。

また、一般的にメスのマンタにはクリーニング場、オスはエサ場で遭遇する可能性が高い傾
向があった

とペリマン氏は説明する。

 クリーニング場では、強い社会的な結びつきは数週間または数ヵ月続くことがあるという。


 こうした結びつきは、メス同士やオス・メス混合の関係で特に明白だったが、オスの子どもにも規模は小さいが友だちと一緒にいる傾向があったようだ。

 大人のオスは、短い期間しか一緒にいないことからその関係性は弱いという証拠しかなかった。

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【メスが好ましいパートナーを見つけグループを作る重要なスポット】

 これまでの発見から、クリーニング場がマンタ同士の手ごろな交流の場になっていると研究者たちは考えている。

 ペリマン氏は

友だちをつくるという社会的行動を可能にしているのは、マンタが社交場としての役割をもつクリーニング場を訪れることが第一要因なのかもしれない。

こうした場所の階級社会組織は、成熟したメスが好ましいパートナーとグループをつくることができ、同時にイヤなオスからの不本意なアプローチを避けることができる

と語る。

 しかし、マンタたちは自ら積極的に友だちを探しているのだろうか?それとも単によく訪れるお気に入りの場所で知り合っているだけなのだろうか?

 ペリマン氏らは、こうした親しい社会的結びつきは行き当たりばったりではなく、気まぐれでもないと推測している。

 この研究ではっきりしている社会的関係は、イルカやクジラに比べると飽きっぽく長続きしないように見えるが、それはエサ場やクリーニング場で彼らがしていることをベースにしているからだろう。

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【生態を探ることが絶滅の危機に瀕しているマンタを保護することに】

 マンタの生態の秘密についてはさらに突っ込んだ研究が必要だが、これは単に人間の好奇心だけの問題ではない。

 マンタがどのようにして別の個体と影響しあっているのかを知ることは、すでに絶滅の危急種とされているこの生き物を守るために大切なことだ。

 海洋大型動物層財団の主任科学者であるアンドレア・マーシャル氏は

マンタ同士の相互関係を知ることは、ダイビング観光が増加して彼らへの影響が懸念されるエリアでは、特に重要。

ラジャ・アンパットのクリーニング場などでナンヨウマンタのまわりにボートやダイバーが増えると、彼らの社会構造が崩れてしまい繁殖に影響が出る可能性があるのだ

とコメントしている。

 この発見は、学術誌「Behavioral Ecology and Sociobiology」に掲載された。


References:YouTube / Behavioral Ecology and Sociobiology / written by konohazuku / edited by usagi

記事全文はこちら:仲良しグループが集まってわいわいガヤガヤ。まるで人間のようなマンタの生態が明らかに(オーストラリア研究) http://karapaia.com/archives/52282140.html
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