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地球上の多種多様な生物の中で、どんな場所でも生きられることを何度も証明してきたのは微生物だろう。そして今、さらに新たな証拠が出てきた。
カナダにあるキッドクリーク鉱山の地下2.4キロもの深さのところで生息している微生物が発見されたのだ。この環境には太陽光は一切届かず、新鮮な空気もない外界から隔離された場所である。
これまで、これほど過酷な場所に生物は存在しないと考えられていた。
この深淵には太古からたまっている地下水には硫酸塩が含まれていた。これらの微生物はこの硫酸塩を栄養素にして生きているのではないかと、研究者たちは考えている。彼らは酸素に頼るのではなく、硫酸塩を吸って生きているようだ。
【生き物が存在できないとされていた場所での生命活動】
この洞窟の水は、何百万年もの間、地表から隔絶されているもっとも古い水のひとつだ。
これほど深いところでは、生物が生きるのに必要な成分が不足しているため、普通は生き物が発見されることはありえないと、つい最近まで考えられていた。
「現代科学でも、地球の生物圏は、おもに光合成に依存して繁栄する生き物がいる地表や地表近くの狭い範囲だと考えられていた」と研究者たちは、『Geomicrobiology Journal』誌に発表したの論文に書いている。
だが、その仮説は変わりつつある。この鉱山の深淵からサンプルを採取し、地表近くで鉱山の操業によって汚染されていない古代の水を調べて、代謝活動の痕跡を探した。
【深淵の微生物は硫酸塩を糧としていた】
サンプルから抽出した微生物の培養細胞に栄養源を与えて代謝活動をみてみると、硫酸塩を糧にしていることがわかった。
この結果からは、微生物の正体ははっきりとはわからなかったが、この微生物は、硫酸塩を消費して活動し、地表から遥か下にある水や岩の間で化学反応をして生きていることがはっきりした。
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Stable Isotope Laboratory, University of Toronto
こんな深い場所に微生物が生存していることがはっきりわかったのはすばらしいことです。微生物の存在は確信していましたが、それを実際に裏づける確固たる一連の証拠を見つけるのは長い道のりでした
カナダ、トロント大学の地質学者、バーバラ・シェアウッド・ロラーは言う。
これは、水素や硫酸塩が豊富なこの水域に棲む微生物の証拠を見つけた過去の研究者たちのこれまでの研究を裏づけるものだ。今でも、生命のサイクルが続いていることがわかる。
【過酷な環境でも生き延びられる生命の不思議】
鉱山の地下奥深くに生息している微生物のことなど、人間の日々の生活にはそれほど大きな衝撃ではないかもしれない。だが、生命とはなにか、過酷な環境でもいかに生き延びることができるのかを理解するのに大いに役立つ。
深淵で発見された微生物は、太陽系外の生物の探索から、地球上の地下生物圏の調査まで、すべてのことを教えてくれることだろう。この、キッドクリーク鉱山で起こっていることは、ほかでも起こりえることなのかもしれない。
この地下環境で、活動している微生物としていない微生物、両方を特定するという観点から、最新研究の範囲を超えたものがもっと出て来る可能性はある。
微生物生態学者のジョン・スピアはこう語る。
この論文は、いわば、鍬入れ式のようなものです。
この研究によって、ここの微生物の生物量を知ることができ、微生物が生息している洞窟の水が宿主としての水であることが確認できたのです。この水は地表からの水によって汚染されたり影響を受けたりはしていません
References:the-scientist/ written by konohazuku / edited by parumo
記事全文はこちら:生命力すごい。外界から完全に隔離されている鉱山の地下2.4キロの水たまりで微生物が生息していた(カナダ) http://karapaia.com/archives/52282491.html