
ありとあらゆる情報が手に入るインターネット。Google(グーグル)で検索することを意味する「ググる」という言葉もすっかり定着しており、今や日常生活に欠かせないものとなった。
日々、さまざまな言葉がググられているわけだが、もしかしたらその検索データから人々の不安感を読み解ける可能性があるようだ。
オーストラリア、カーティン大学の浜村武氏が行った研究によると、「不安」とググられた回数にはその地域に暮らしている人々が感じている不安が正確に反映されていたのだとか。
【日本ではお馴染みの「五月病」は本当にあるのか?】
浜村氏は、普通では研究が難しい問題をビッグデータで分析する方法の一例として今回の研究を行っている。
たとえば、入学や就職などのシーズンがひとまず落ち着き5月に入ると、環境の変化によるストレスや疲れのせいか五月病なる心の病が流行り出すと言われている。
日本人にはお馴染みの話だが、浜村氏によると、じつはこれをきちんとデータで裏付けた研究は少ないのだそうだ。
というのも、この手の現象をきちんと調べるにはかなりの期間にわたり定期的に人々の不安感を調査しなければならないからだ。
これはかなり大変な調査であって、ほとんどなされることはないとのこと。
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【「不安」とググられている地域では心理的ストレスも高い傾向】
そこで、グーグル・トレンドを利用しようではないかというのが浜村氏のアイデアだ。
グーグルで「不安」と検索された回数を調べてみれば、そこには人々が感じている不安が反映されているかもしれない。
このアイデアを確かめるために、日本政府が定期的に行っている不安や悩みに関する調査とグーグル・トレンドの記録が比較された。
すると、グーグル・トレンドで「不安」や「心配」という言葉が多く検索されている地域では、心理的ストレスもまた高い傾向にあることが判明したのだ。
また、これらの単語の検索数は、災害が起きた後だと増加することも明らかになった。
人々が不安を感じているタイミングや場所では、実際に不安と検索されているようだ。このことは、グーグルで「不安」と検索された回数が、人口レベルでの不安の指標となることを裏付けている
と浜村氏は話す。
ちなみに5年間分のグーグル・トレンドの記録を調べてみたところ、日本では春先になると不安と検索された回数が増えていたそうだ。
どうやら五月病というものは確かに存在するらしい。
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【2004年以降に「不安」と検索する人が増加しているとのデータも】
また、嫌なことに日本では2004年から「不安」の検索回数が増えているようだ。一方で、不安を感じている日本人が増えていることを示すきちんとした指標はないという。
グーグル・トレンドが人の心を反映しているのならば、なぜこのような不一致が生じるのだろうか?
これについて浜村氏は、不安への対処方法が変わっていることが原因かもしれないと説明している。
たとえば、人が不安で苦しんでいたとしても、これまで一般的だった支援制度に助けを求めず、ネットに頼るようになっているとも考えられる。
その場合、社会で不安が増加していたとしても、従来不安の指標とされてきたものにはそれが反映されなくなってしまう。
現時点で不安を感じる日本人が本当に増えているのかどうかはっきりしないが、浜村氏は今後も調査を続ける必要があると述べている。
なお、この研究は『Emotion』(8月15日付)に掲載された。
References:Emotion / Psypostなど / written by hiroching / edited by usagi
記事全文はこちら:Google検索と感情の研究。