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本人は普通にしゃべっているつもりなのに、なぜだか外国語なまりのような発音になってしまう。かといってその国の言葉をもともと話せるわけではない。
これは「外国語様アクセント症候群」と呼ばれる珍しい医学的症状であり、なぜこの症状が出るのか、完全な解明には至っていない。
主に頭部の外傷や脳梗塞などで脳が損傷することで発症するとされているが、最近では心理学的な要因もあると指摘する研究も発表されている。
【約1世紀前に報告されてから100例に満たないレアな症状】
外国語様アクセント症候群(Foreign accent syndrome)は、1907年に初めて報告されて以来、100人ほどにしか診断されていない(1941年から2009年までの間の記録例は62例)非常に珍しい症状で、母国語が英語である人に多いとされる。
ジュリア・マティアスという英国人女性は、交通事故にあってから突然フランス語と中国語の中間の様な奇妙なアクセントで話すようになった。
また、あるアメリカ人女性は夜に頭痛を覚え、目が覚めるとイギリス、アイルランド、オーストラリア風アクセントが混ざった話し方をするようになった。
英語だけでなく、アジアやスペインなどにも事例はあるそうだ。
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【外国語様アクセント症候群の原因は?】
原因と考えられるのは、脳の左側にある「ブローカ野」の損傷だ。ここは運動性言語中枢とも呼ばれ、発音に関連しているとされる。
だがより最近では、心理学的な要因もあると指摘する研究も発表されている。
全体的に見ると、原因によって「神経性」(脳梗塞や外傷など、脳の構造的損傷に起因)、「心因性」(はっきりとした損傷はないが、患者に感情的・精神的ストレスがあったり、統合失調症などの精神疾患がある)、「混合」の3タイプに分類できるようだ。
【特定の発音が苦手になる】
外国語様アクセント症候群の患者に共通しているのは、たとえば「splash」という単語にあるS-P-Lなど、特定の子音結合が苦手になることや、母音と子音がはっきり発音されていないように聞こえることだ。
ほかにもイントネーションが増えて、どの単語も強調しているかのように聞こえる、舌で口の上を叩くような発音が苦手になる、「あー」という音が増えるといった特徴もある。
万が一、あなたにもこうした症状があれば、念のため医師の診察を受けてみるといいかもしれない。話し方の変化は、何か重篤な問題が隠れているというサインであることがあるからだ。
ただし、外国語様アクセント症候群はきわめて珍しい症状なので、きちんと診断されるまでには幾度か専門家の検査を受ける必要があるかもしれない。
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Stefan Keller from Pixabay
【思ったように話すことのできない苦痛】
もしかしたら、発音が外国語なまりになるくらい大したことではないと思う人もいるかもしれない。
しかし、目が覚めたら突然話し方が変わっているという経験は、その人の自意識に大きな影響を与える。それはアイデンティティの危機にいたらせる大変な経験なのだ。
本来の自分のものではないアクセントになってしまうと、これまで自分が属していた社会階層、教育レベル、出自といったものから切り離されるような思いを味わうことになる。
それがいかに大変なことか想像してみてほしい。
【治療法はあるのか?】
治療方法は、先ほどの述べたタイプによって異なる。
心因性のものなら、言語療法士から発音の訓練を受けたり、カウンセリングを受けることで新しいアイデンティティに対応するといった治療が考えられる。
神経性であれば、脳梗塞を予防するための治療や抗けいれん薬の服用、あるいは場合によっては外科手術も検討されることだろう。
しかし繰り返すが、非常に珍しい症状であるために、有効な治療法の確立やはっきりとした原因の究明にはまだまだ研究が必要なのが現状だ。
References:Foreign Accent Syndrome: a Curious and Extremely Rare Brain Condition – Learning Mind/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:なぜだか外国語なまりになってしまう奇妙な症状「外国語様アクセント症候群」とは? http://karapaia.com/archives/52285445.html











