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自分に何のメリットがなくても仲間を助けようとする利他的な行為は動物界でも確認されている。サルや犬、クジラやアシカ、吸血コウモリだってそうだ。
そして今回、鳥類でも最も賢いと言われている、大型のインコ「ヨウム」にも仲間を思いやる行動が確認された。
特に見返りが期待できるわけでもないのに、パートナーがエサを手にできるよう自発的に助ける姿が観察されたという。
【オウム目インコ科の鳥に利他性を確かめるテスト】
頭の良い鳥といえば、まずカラスが思い浮かぶかもしれない。実際、カラス科の鳥はかつては霊長類にしかできないと思われていた知的な作業をやってのける。
だがオウム目の鳥もカラスに匹敵する賢さを持っている。例えばオウムは自分で道具を作り、遊び心たっぷりな創造性を見せてくれる。さらにヨウムにいたっては、人間の子供を上回る知能を見せることもある。
さらにヨウムは、人の言葉を真似るだけではなく、言葉の意味を理解して人間とコミュニケーションをとる能力があると言われている。
そして今回、利他性を確かめるテストに挑戦したのは、オウム目インコ科のヨウムとヤマヒメコンゴウインコだ。
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【引換券でエサを交換する実験】
実験では、引換券(金属ワッシャー)とエサが交換できることを鳥に教え、さらに他の仲間との関係を調査。その上で、仲のいい仲間またはそれほど仲の良くない仲間とペアにして、そのときの行動を観察してみた。
なお、ペアは次のような状況に置かれていた。
それぞれは透明な仕切りで区切られる。仕切りには穴が開いており、そこからペア同士で物を交換することができる。
区画の片方には、人間の実験者に引換券を渡してエサと交換するための窓口がある。どちらの区画からも引換券で交換できるエサが見えるが、実際に交換できるのは窓口がある片方だけだ。
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【エサの引換券を仲間に渡したヨウム】
ヨウムもヤマヒメコンゴウインコも引換券でエサを得られることまではすぐに理解した。しかし引換券をペアの片方にだけ与えてみると、仲間にそれを渡したのはヨウムだけだった。
驚いたことに、じつに8匹中7匹のヨウムが最初の実験からいきなり引換券をパートナーに渡したのだという。
ヨウムはこれまで同じような状況を経験したことはないし、その後でお互いの役割が交換されることも知らない。したがってヨウムは特に直接的な利益や見返りを期待することなく、相手を助けていたということになる。
なおヨウムはパートナーとの仲の良さとは関係なしに引換券を渡していたが、仲の良い相手とペアを組んだときの方がたくさん渡したそうだ。
「はっきりとした直接的なメリットが何もないのに、見知った仲間が目的を遂げられるよう自主的かつ自然発生的に助けるヨウムの姿が観察されました」とドイツ、マックス・プランク鳥類研究所のデジレー・ブルックス氏は話す。
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一方、ヤマヒメコンゴウインコではそうした行動がほとんど見られなかった。
ごくまれにそうしたとしても、人間が現れたときに穴から落とすだけだった。
このことから、コンゴウインコは引換券を人間に渡そうとしていたのではないかと推測されている。
【ヨウムは仲間が自分より良い思いをしていても羨ましがらない】
なお別の最近の研究では、もうひとつ面白いことが観察されている。
ペアにしたヨウムの片方が自分よりも良いエサをもらったのを見ても、特に羨ましがっているような様子がなかったというのだ。これは、同じ状況で苛立ちを見せるチンパンジーとは対照的だ。
研究グループの1人によると、こうした違いは、ヨウムが一雌一雄(一夫一妻)であることと関係があるかもしれないそうだ。
ヨウムは1匹のパートナーと深い絆を育み、お互いに依存する。つがいは一つのユニットとして機能しているので、ときおり片方が良い思いをしても特に問題はないのだ。どうやら、このことがヨウムの寛容さの秘訣であるようだ。
この研究は『Current Biology』(1月9日付)に掲載された。
References:eurekalert/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:ヨウムはやさしい。見返りを期待せず仲間を助ける利他的な行動を確認(ドイツ研究) http://karapaia.com/archives/52286586.html
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