高度から消火剤を投下、新たな空中消火システムで夜間の消火が可能に(イスラエル)

Elbit Systems
 より安全かつ効率的に消火活動を行うため、イスラエルの軍用エレクトロニクス企業「エルビット・システムズ(Elbit Systems)」が高高度から消火剤を投下する新システムを開発した。

 従来の空中消火は上空30~36メートルからの位置だったが、「ハイドロップ(HyDrop)」と呼ばれるそのシステムは、150メートルの上空から液体ペレットを投下することで、夜間でも空中消火が可能になる画期的なものだという。

【危険な低高度での空中消火】

 今でもなお猛威を振るうオーストラリアの森林火災を見れば容易に想像できるように、広範囲にわたる火災の消火は危険で困難な仕事だ。

 こうした状況において、航空機で低高度から消火剤を投下する空中消火は、消防士たちの頼りになる武器のひとつだ。

 ちなみにここでの低高度とは30~36メートルくらいのことだ。

 地面とほとんどすれすれの距離を飛行するのはとても危険な行為なのだが、それよりも高いところからの投下となると、せっかく消火剤が霧散してしまって、十分な効果を得られなくなってしまう。

 おかげで利用できる機体やそこに積み込める消火剤の重量、さらには地形まで、現在の空中消火にはさまざまな制約がつきまとう。

 また実行可能な時間帯も限られており、火災は年中無休で発生するというのに、夜間の消火作業はとりわけ危険とされている。

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【液体ペレットを高度150メートルから投下】

 そこで従来の4倍となる高度150メートルから消火剤を投下できるようにしたのが新開発のハイドロップだ。この高度ならば夜間飛行も違法ではないので、これまではできなかった夜の消火作業も行える。

 公開されたデモでは、それぞれの機体から1個140グラムの生分解性液体ペレット1.6トン分を軌道計算しつつ投下し、1平方メートルあたり1~2リットルをまく様子が実演された。

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Elbit Systems
【戦闘機の目標捕捉システムを利用し、精密投下を可能にする】

 ハイドロップはヘリコプター、固定翼機、重量物輸送機などで運用するよう設計されたシステムだ。

 すごいのは消火ペレットをただ闇雲にばら撒くのではなく、弾道解析器・指揮統制システム・高性能ディスプレイといった、戦闘機に搭載される航空電子機器を利用している点だ。

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 これによって目標となる消火地点を捕捉し、速度・高度・位置・風・ペレットの重量や形状といった要素を加味しつつ、消火剤の正確な投下が可能になる。


 ペレットは一般的な貨物コンテナに収まる大きさの製造機を使って製造する。

 これを使えば、1時間あたり10トンの消火ペレットを作ることができるという。有害な物質は使われていないので、地上の消防士が危険にさらされることもないとのことだ。

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Elbit Systems / HyDrop
References:elbitsystems./ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:高度から消火剤を投下、新たな空中消火システムで夜間の消火が可能に(イスラエル) http://karapaia.com/archives/52287234.html
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