梅毒がフランスのファッション文化に大きな影響を与えたかもしれないとする説

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 梅毒と聞くと、性感染症という言葉を瞬時に思い浮かべる人も多いだろう。梅毒は、アメリカ先住民の間に数千年にもわたって存在していたという説があるが、ヨーロッパで最初に記録された梅毒のアウトブレイクは、15世紀になってからだったという。


 そんな梅毒と、フランスのファッションに強い関連性があるかもしれないという説があがっている。
【梅毒は15世紀にヨーロッパで流行】

 梅毒は、15世紀にヨーロッパで流行した。フランス軍の帰還と共にイタリアのナポリで流行したことから、イタリアでは梅毒を「フランス病」と呼び、後にフランスへも感染が広がると「イタリア病」と呼ばれた。

 更に、オランダでは「スペイン病」、ロシア人は「ポーランド病」、トルコでは「キリスト教徒の病」「フランク人 (西欧人) の病」と呼ぶなど国名を冠した名前で呼ばれていたが、それは当時の国家間の政治的対立を反映したものとされている。

 梅毒の症状は4段階で生じると言われている。まず、患部に痛みのない潰瘍が現れ、第2期では発疹、発熱、疲労感、頭痛、食欲減退が見られる。

 抗生物質による治療を受けないままにしておくと、病気の第3段階には皮膚や筋肉、骨にゴムのような腫瘍(ゴム腫)が成長、脱毛が起こり、4段階症状になると壊死性潰瘍や神経障害を引き起こす可能性があると言われている。

 ちなみに、現在では治療により第3、4期に至ることは少なくなったそうだ。

【梅毒を隠すためにフランスでファッションが進化!?】

 当時の梅毒は、免疫性の低いヨーロッパ人の間では、現在よりも致死性が高いと示唆されていた。

 しかし一部の学者によると、不幸な症状の影に当時の患者が隠れることは必ずしもなかったという。

 場合によっては、梅毒に感染していることを隠すためにファッションが進化した可能性もあるようなのだ。

 当時、フランスのルイ14世はカツラを着用していたと言われている。
歴史家は、17世紀にルイ14世が着用し始めるまではカツラの人気はあまりなかったと述べている。

 ルイ14世は、一部の説では5歳の頃に梅毒に感染したと言われており、「ルイ14世の死」という映画で描かれていたが、フランス版のウィキペディアには、梅毒とは書かれていない。5歳の時には、パレ・ロヤの庭のプールで溺れて死にそうになったそうだ。9歳で天然痘になったという。

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 ルイ14世は子供時代から病気がちで、17歳の頃から髪の毛を失い始めたという。それを隠すため、カツラの着用を始めた。

 ルイ14世のいとこであるイギリスのチャールズ2世は、梅毒で脱毛に悩まされており、カツラを付け始めたため、カツラは瞬く間にヨーロッパ間で「ファッショントレンド」として流行した。

追記(2020/03/15)本文を一部修正して再送します。

【コッドピースも梅毒を隠したファッションアイテム!?】

 カツラに続き、梅毒とファッションを結びつけるアイテムとして考えられているアイテムが、コッドピースだ。

 コッドピースは、男性の股間の前開き部分を覆うための布で、梅毒になった男性がプライベート部分の傷に巻き付けられた薬用包帯によってできた疑わしい膨らみを隠すために役立ったと言われている。

 しかし、これについては全ての歴史家がその説を信じているわけではないようだ。コッドピースは一時的に大流行したものの、その期間が短かったために、役割についてはほとんど知られていないからだ。


 ただ、短い間でもコッドピースのデザインは多少変化したと言われており、15世紀は体にピタリとフィットするデザインだったが、16世紀には詰め物や装飾が施され、男らしさの主張となった。

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 画像を見ると、そこの膨らみは目立っているのがわかる。もし、コッドピースが当時の梅毒の隠れ蓑になっていたとしたら、余計に人の視線を惹きつけていたのではないかと思わないでもない。

 梅毒の隠れ蓑になったファッションアイテムは、他にもサングラスが挙げられている。

 梅毒の症状が進むにつれて壊死性潰瘍ができ、それが全身にも広がることから、顔に露わになった症状を隠すためのアイテムとして使用されたという説がある。

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【フランスのファッションはルイ14世の時代から】

 現在、フランスのパリと言えばミラノ、ロンドン、ニューヨークと並び、世界的なファッショントレンドの中心地だ。

 しかし歴史を遡ると、フランスとファッションやスタイル(「モード」)との結び付きは、やはりルイ14世が在位した17世紀頃に遡るようだ。

 とはいえ、こうした一部の学者説が真実か否かは定かではなく、あくまでも「ファッション進化の過程にそのような可能性があったかもしれないし、なかったかもしれない」ということなので、さらっと読み流してくれると嬉しい。

References:Popular Scienceなど / written by Scarlet / edited by parumo

記事全文はこちら:梅毒がフランスのファッション文化に大きな影響を与えたかもしれないとする説 http://karapaia.com/archives/52288336.html
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