
本来は敵同士となる異種間の動物に愛情が芽生えるケースは非常にレアだが、過去にいくつかの事例はあり、新しいところでは2017年にタンザニアのセレンゲティ国立公園でメスライオンによるヒョウの赤ちゃんへの授乳光景だろう。
そして、2018年12月下旬にインドの国立公園でも、メスのライオンがヒョウの赤ちゃんを保護し育てている光景が研究者らに目撃された。
残念ながらこのヒョウの赤ちゃんは、生まれた時から患っていた病のため、間もなくして死んだことも伝えられた。
【メスライオンがヒョウの赤ちゃんと一緒にいる光景が目撃される】
インド西部グジャラート州にあるギル国立公園で、7年にわたり動物行動学を研究しているミネソタ大学のポスドク研究員ストトラ・チャクラバルティさんは、2018年12月下旬に、野生生物間で不思議な絆が育まれているのを発見した。
子供を2匹抱えたメスのライオンが、生後2か月ほどのヒョウの赤ちゃんを連れていたのだ。
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ペアは、狩ったばかりのニルガイの近くにおり、当初この光景を見た研究者らは、関係は一時的なものと思っていた。
というのも、種の異なる肉食獣は、通常テリトリーと食物を奪い合い、特に野生のライオンはヒョウを殺す習性がある。互いに「永続した敵同士」にあることから、赤ちゃんであっても殺してしまうのが普通と考えられていたからだ。
ところが、このメスライオンに関しては例外だったようだ。
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【メスライオンはヒョウの赤ちゃんを保護し守っていた】
生後3か月の我が子2匹を抱えたメスライオンは、ヒョウの赤ちゃんにも同様に乳を与え、捕食者から守るなど自分の子供のように育てていたという。
また、子ライオンもヒョウの赤ちゃんと仲良くしており、一緒にじゃれ合ったり木に登ったりする姿が度々目撃された。
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チャクラバルティさんは、このレアな光景にただ驚きを隠せなかったと話している。
インドのメスライオンは、数か月間プライドから離れて自分の子供を育てます。もし、プライドが大きければ、ヒョウの赤ちゃんは受け入れられていなかったかもしれません。
研究員たちは、この病気を抱えたヒョウの赤ちゃんを自分の子供のように育てているメスライオンを記録した。
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ところが、そんな矢先に悲劇が訪れてしまった。
【病気が原因でヒョウの赤ちゃん、死ぬ】
異種間の肉食獣の子育てというレアなケースをどこまで記録できるかと思っていた矢先、研究チームは、ヒョウの赤ちゃんの死骸を水飲み場で発見した。
メスライオンがヒョウの赤ちゃんを連れている光景を見てから45日ほど経った日のことだったそうだ。
剖検により、ヒョウの赤ちゃんは生まれた時から患っていた大腿ヘルニアが原因で死亡した可能性が最も高いことが判明した。
チャクラバルティさんは、悲しい結果について次のように語っている。
ヒョウの子供がライオンのもとで成長すれば、どんなふうになるのかと楽しみにしていたのですが、それは起こることはありませんでした。
また、チャクラバルティさんら研究者は、メスライオンは幼い我が子の姿と共有する類似性がヒョウの子にあったことから、おそらくヒョウの子供であるという事実を見過ごしていた可能性があると指摘。
ライオンとヒョウは、子供の時は同じような鳴き声を出して母親に乳を求めます。そのため、ヒョウの子供は養子としてライオンの子に混ざることができたのかもしれません。
しかし、やはりこうしたケースはレアであり、このメスライオンが我が子に授乳をしていた時期だったからこそ、起こったことなのかもしれない。
なお、この事例は2020年2月21日の生態学情報誌『Ecosphere』で発表された。
written by Scarlet / edited by parumo
追記:(2020/03/06)本文を一部訂正して再送します。
記事全文はこちら:病気を抱えたヒョウの赤ちゃんを保護し養子にしたメスライオン(インド) http://karapaia.com/archives/52288521.html
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