
2020年3月11日、WHO(世界保健機構)のテドロス事務局長は、ジュネーブで記者会見を行い、新型コロナウイルスについて「パンデミック(世界的流行)とみなせる」と表明し、世界各国に全力で感染拡大を抑え込むよう訴えた。
WHOがパンデミックの呼称を使うのは、2009年の新型インフルエンザ以来11年ぶりとなる。
ところで、最近ニュースでよく耳にする、「パンデミック」、「エピデミック」、「アウトブレイク」という言葉だが、どんな違いがあるのか?
どれも外国からきた言葉だし、「大流行」を意味しているくらいはわかるが、それぞれにちゃんとした違いがあるという。
ここでは海外サイトで説明されていた「パンデミック」「エピデミック」「アウトブレイク」の正確な意味を確認していくことにしよう。
【アウトブレイク:感染者はまだ少数だが、予想より感染が生じている】
ある地域や経時的な感染症の発生件数を調べれば、一定の期間・場所・人口の中である感染症が通常生じる頻度を把握することができる。
アウトブレイクとは、感染者数は少ないのだが、通常予測されるよりは多くの感染が生じてしまった事態のことをいう。
たとえば、ある託児所で下痢になる子供が急に増えたとしよう。普段なら、体調を崩す子など週に1人か2人くらいのものだ。それが一度に15人もの子供が下痢になってしまったのだ――これがアウトブレイクである。
新しい感染症の場合、アウトブレイクはかなり目立つ。というのも、それまでその感染症の症例がまったくないからだ。
武漢で不意に広まった新型肺炎もその一事例だ。今や公衆衛生当局は、これが新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」のアウトブレイクであったことを知っている。
アウトブレイクの事実が判明すれば、正確な感染者や発症者の数を突き止めるべく、ただちに調査が開始される。
ここから得られたデータから、感染症の流行を防止するために最適な戦略が考案される。
[画像を見る]
【エピデミック:特定地域でさらに感染者が増えてしまった状態 】
エピデミックは、より広い範囲でアウトブレイクが生じてしまった事態のことだ。
武漢ではない地域でも新型コロナウイルスの陽性反応を示す人が出てきてしまった場合、アウトブレイクが拡大しているということになる。封じ込め対策が不十分だったか、遅すぎたということだ。
しかし、現時点でワクチンがないことを考えれば、まったく予想外だったわけでもない。いずれにせよ、中国全土に新型コロナウイルスが拡散してしまったということは、アウトブレイクからエピデミックに事態が悪化したということになる。
[画像を見る]
【パンデミック:世界全体で感染者が増加、制御が難しい流行】
もっとも標準的な意味では、エピデミックが世界の複数の国家や地域に広まってしまった事態をパンデミックという。
ただし専門家によっては、局地的な感染を通じて、それまで感染症がなかった地域にまで流行してしまった状況のみをパンデミックとする場合もある。
たとえば中国で新型コロナウイルスに感染したある旅行者が、日本に帰国したとしよう。この時点ではまだパンデミックではない。だが、その人から家族や友人といった複数の人たちに病気がうつってしまったなら、議論の余地がある。
この結果として、各国で新たにアウトブレイクが生じてしまったのなら、専門家はパンデミックであることに同意することだろう。
世界的な流行を防止する努力は徒労に終わったということだ。
[画像を見る]
【WHOがついにパンデミック宣言】
疫学者や医療関係者の主な関心は病気の治療や予防であるが、それは政府や国際的な保健組織のより広範な関心とはまた違ったものである場合がある。
3月9日の時点では、WHOは新型コロナウイルスの世界的な拡散リスクを「非常に高い(very high)」としていた。これは、WHOの分類の中ではもっとも高リスクで、正式なパンデミック宣言の一歩手前の段階だ。
そしてついに11日、WHOは「新型コロナウイルスはパンデミックと言える」と発表した。
この発表の前から、WHO以外の保健機関や専門家の中には、すでにパンデミックと呼んでいる者たちがいた。公式な感染者数は、ほぼ100ヶ国で10万人を超えている。これは標準的な定義に照らすならば、パンデミックだろう。
正式なパンデミック宣言は、政府や関連組織にとっては、感染症の封じ込めから緩和へと方針が移ることを告げるものだ。それは、世界的な規模で、社会経済・政治的な影響を与えることになる。
[画像を見る]
【パンデミック宣言は個人の危機感をあおるためのものではない】
正式にパンデミック宣言が出されたわけだが、これは個人のパニックを煽るためのものではない。マスクや消毒液、トイレットペーパーや食料品を買い占めるためのものではない。
新型コロナウイルスの感染力が強まったわけでもないし、致死率が急激に上がったという意味でもない。
個人レベルでやるべきことは今までと変わらない。手洗いうがいの徹底や、咳エチケット、空気の循環の悪い人の集まる場所に近寄らないようにすることだ。言葉に振り回されずに適切な行動を心がけよう。
国家レベルでは更なる対策の強化が迫られている。テドロス事務局長は「WHOや各国がやるべきことは変わらない」と述べた一方で、世界各国に全力で感染拡大を抑え込むよう訴えた。
References:What's the difference between pandemic, epidemic and outbreak?など / written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:新型コロナウイルスがパンデミック宣言。「パンデミック」「エピデミック」「アウトブレイク」の違いって何? http://karapaia.com/archives/52288762.html
編集部おすすめ