地球はいかにして月という衛星を獲得するにいたったのか? これは長きにわたり議論されている謎だ。
「ジャイアント・インパクト説」では、初期の地球が「テイア(太陽系の仮説上の原始惑星)」という天体と衝突した結果、月が形成されたと説明する。
この仮説は、月の形成理論としてはもっとも有力視されているが、具体的なことになると曖昧な部分がある。実際、この説ではうまく説明できない、観察結果もたくさん報告されている。
『Nature Geoscience』に掲載された最新の研究は、これに関する最大の疑問点に光を当てている。
――仮にテイアが衝突して月が誕生したとして、なぜ月はテイアではなく、地球とほとんどそっくりになったのだろうか?
【月と地球が似ているのはなぜ?】
じつは月と地球はとても良く似ている。もちろん見た目のことではない。その構成がほとんど同じという意味だ。
違いと言えば、地球に比べれば、月には鉄が少なく、水素のような軽い元素も少ないというところだろうか。
ジャイアント・インパクト説は、この点について次のように説明する。「重たい鉄は地球に取り残された。また衝突によって生じた熱は宇宙へと放出され、軽い元素を沸騰させてしまった。そして地球とテイアの残りの部分は、互いに混ざり合った」と。
テイア衝突による月の形成を再現したコンピューターモデルからは、月は8割がテイアに由来する物質で構成されているはずであることが示唆されている。
それなのに、なぜ月は地球に似ているのだろう?
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How the Moon Was Formed
1つの説明としては、テイアと初期の地球自体がそっくりだった可能性が考えられる。
だが、太陽系に存在する惑星のどれもが、それぞれ非常にユニークな構成であることを考えると、これはあまり信憑性が高くない。
あるいは、2つの天体が想像以上に徹底的に混ざり合ったとも考えられる。そのために、月にはっきりと観察できるようなテイアの痕跡はほとんど残っていない。
しかし、こちらもありえなさそうだ。なぜなら、そうなるためには、実際に起きたものよりも、ずっと大きな衝突が起きていなければならないからだ。
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【月と地球、実は考えられていたよりも似てないという新説】
そして今回、この問題を解決してくれるまた別の説が提唱された。それによれば、なんと地球と月はこれまで考えられていたほど似ていないというのだ。
ニューメキシコ大学(アメリカ)の研究グループは、アポロ計画のときに月から持ち帰られた岩石に含まれる酸素同位体の分布をかなり厳密に行ってみた。
どのような元素であっても、その原子核は陽子と中性子で構成されている。同位体は陽子の数は同じだが、中性子の数が違う元素のバリエーションで、たとえば今回調査された酸素同位体O-18の場合、陽子8個と中性子10個を持っており、一般的なO-16(陽子8個、中性子8個)よりもわずかに重い。
分析の結果明らかになったのは、地球と月とでは酸素同位体の構成にちょっとした差異があり、まったく同じではないということだ。
しかも、こうした違いは、月のマントル(地殻の下にある層)から得られた岩石ほど大きかった。地下の奥深くにあった岩石ほど、軽い酸素同位体が地球よりも多かったのだ。
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【ほんの少しだけ判明したテイアの姿】
混ざり合った衝突の破片が地表に降り積もっただろう一方で、内部にはより多くのテイアの残骸が残されているだろうことを考えれば、これは重要なことだ。
つまり、テイアと地球はそっくりではなく、月と地球もまたそっくりではなかった。
そして、このことはテイア自体についてのヒントでもある。
重力の作用によって、重い同位体ほど、より太陽の近くにあったはずだと予測される。地球と比較した場合、どうもテイアは軽い酸素同位体を多く持っていたようだ。ならば、テイアは地球よりも太陽から離れたところで形成されたということになる。
今回の発見のおかげで、ジャイアント・インパクト説はまたも1つハードルを越えることができた。テイアについてもほんの少しだけ知ることができたのは、そのご褒美だろうか。
References:How the moon formed – new research/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:月はいかにして形成されたのか? ジャイアント・インパクト説に新しい知見(米研究) http://karapaia.com/archives/52288816.html











